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中国から脅された。ドゥテルテ大統領は習近平の言いなりか?

怒りのフィリピン大統領、中国に「落とし前をつける!」宣言」で、南シナ海を巡る仲裁裁判所の判決に従わない中国への怒りをあらわにしていたフィリピンのドゥテルテ大統領。しかし無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』によると、中国から「フィリピンが対決姿勢を見せるなら戦争の準備ができている」という事実上の脅しを受けて弱腰になっているといいます。南シナ海問題はこのまま中国の言いなりになるしかないのでしょうか。著者の北野さんが詳しく分析しています。

習近平、ドゥテルテに「戦争になる!」と警告

26、27日、イタリア・タオルミナで、G7サミットが行われていました。メインの議題は、「北朝鮮」。これ、日本とアメリカは、「深刻な問題」であることを理解しています。

しかし、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダは、正直、北朝鮮問題の深刻さを感じていない。なぜかというと、「北朝鮮は遠い」から。日本人も、シリア問題、イラン問題、ウクライナ問題などに、ほとんど興味がありません。なぜなら、シリア、イラン、ウクライナは、遠いから。同じですね。

欧州の国々は、近いロシアとか、イランの脅威を感じている。それで、安倍総理はイランと北朝鮮をリンクして説明されました。

「敏感な議題」の一つとなった北朝鮮問題で、最も発言したのは安倍首相だ。日本が配布した資料にあったのは北朝鮮とイランのミサイル開発に関する情報。欧州諸国の関心が高いイランと比較することで、北朝鮮の技術力が短期間で向上している実態に危機感を持ってもらう狙いがあった。北朝鮮が実戦配備を目指す大陸間弾道ミサイル(ICBM)など長射程のミサイルが方角を変えれば欧州の安全を脅かすことも示した。
(産経新聞5月28日)

もちろん欧州やカナダの首脳が、「北朝鮮から攻撃される」とは思わないでしょう。それでも、知識としてだけでも、「北は悪いことをしていると理解してもらうことは大事ですね。

欧州は軍事的にはアメリカの支配下にあります(NATOを通じて)。しかし、(イギリスを含めた)EUのGDPはアメリカに匹敵する。そして、「人権にうるさい」ということで、国際世論をつくっていく力があります。それで、あらゆる問題で欧州を味方につけていく必要がある。北朝鮮問題では、日本、北米、欧州が「北=悪」ということで意見が一致しました。

その結果、初参加の4人を含む全G7首脳が「新たな段階の脅威」との認識を共有。首脳宣言に北朝鮮問題が国際社会の「最優先課題」と初めて明記された。
(同上)

安倍総理、中国も批判

安倍総理は北朝鮮だけでなく中国も批判しました。

中国をめぐっても、G7首脳は東・南シナ海での強引な海洋進出にとどまらず、世界各地での活動について懸念を共有。首脳同士で踏み込んだ議論が行われたが、「ここでも議論を主導したのは安倍首相だった」(同行筋)という。
(同上)

中国についても北朝鮮と同じですね。欧州やカナダは「遠い」ので、南シナ海、東シナ海問題に興味がない。トランプさんは、北朝鮮問題で習近平の協力が必要で、批判できない。それで、どうしても距離が近く、モロに脅威を感じている日本が中国を批判することになります。

ここでも(遠いので)反応は鈍いですが、中国がやっていることの事実」を伝えておくことは大事です。

中国は、「強烈な不満!」を表明

この安倍総理のふるまい中国は気に入らなかったようです。

中国、サミット首脳宣言に「強烈な不満」と非難

読売新聞 5/28(日)21:46配信

 

【北京=東慶一郎】中国外務省の陸慷(ルーカン)報道局長は28日、イタリアで開かれた主要国首脳会議(サミット)の首脳宣言について談話を発表し、中国の海洋進出を念頭に「東・南シナ海情勢への懸念」が明記されたことに「強烈な不満」を表明した。

 

談話は、宣言が「国際法の名を借りて東・南シナ海問題のあら探しをしている」として非難した。中国は問題解決のため当事国と直接協議をしていると強調した上で、先進7か国(G7)などが「無責任な言論」を発表しないよう求めた。

中国は問題解決のため当事国と直接協議をしている

そうです。そうなんです。中国は、「問題解決のため当事国と直接協議をしている」のです。たとえば、フィリピン

比大統領、 南シナ海問題で「中国から戦争になると警告された」

AFP=時事 5/20(土)15:31配信

 

【AFP=時事】フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領は19日、南シナ海(South China Sea)の領有権争いをめぐり、中国政府の首脳陣から戦争する準備はできていると警告されたと明かした。

中国政府の首脳陣から戦争する準備はできていると警告されたそうです。どういうことでしょうか?

今週、中国の北京(Beijing)で習近平(Xi Jinping)国家主席や李克強(Li Keqiang)首相と会談したドゥテルテ大統領は、警告されたことを公にするのは、中国に対して弱腰だとフィリピン国内で批判されているからだと述べた。

 

ドゥテルテ大統領は、これまでは伝えられなかった南シナ海での天然資源開発の計画を明かしながら、会談の内容について「彼らに面と向かって言った。そこ(南シナ海)はわが国のもので、われわれはそこで石油採掘を行うつもりだ」と表明したと述べた。

 

これに対し習国家主席と李首相はドゥテルテ大統領に「私たちは友人だ。あなたと争いたくはない。今の温かい関係を維持したい。しかし、あなたが対決を迫るというのなら、われわれは戦争に突入するだろう」と述べたという。
(同上)

これが、中国流問題解決のため当事国と直接協議をしている」です。ちなみに、2016年7月、常設仲裁裁判所(PCA)は、南シナ海をめぐる中国の主張には「法的根拠がない」と判断しています。習近平は即座に、「裁判所の判決には従わない!」と宣言しました。

仲裁判断、中国外交に大打撃 習主席「一切受け入れない」

AFP=時事 2016年7月13日(水)10時7分配信

 

【AFP=時事】オランダ・ハーグ(Hague)にある常設仲裁裁判所(PCA)が南シナ海(South China Sea)をめぐる中国の主張には法的根拠がないとの判断を示したことについて、中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は、一帯の島々は古来より中国の領土だとして、政府は今回の判断に基づくいかなる行動も受け入れないと述べた。国営の新華社(Xinhua)通信が伝えた。

というわけで、中国の当事国で協議している、「相手国を脅迫していると同じ意味。挑発する必要はまったくありませんが、欧米の指導者たちに、「中国はこんなことをしていますよ」と事実を伝えておくことは大事です。

繰り返しますが、欧州の指導者たちは、東シナ海、南シナ海問題に興味がない。「中国」という言葉を聞くと、まず「金儲け」という単語が浮かんでくる。それでも、欧州が「金儲け」を「犠牲にする」こともあります。たとえば、「ロシア制裁」は、欧州もロシアも損をしている。それでも「継続中」ですね。

「東シナ海、南シナ海問題で、中国は間違っている

こういう認識を、日欧米が共有しておくことは、とても大事です。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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