注目度は高い「地震保険」ですが、集合住宅にお住まいの方の中には、「管理会社からそういう話が出たことがない」「月々いくら位かかるのかわからない」など、疑問をそのままにしている住民も意外と多いようです。そんな疑問に答えるべく、無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では、著者の廣田信子さんが、「地震保険の勉強会に参加した際に学んだこと」を記してくださっています。
お金のないマンションほど地震保険は必要?
こんにちは! 廣田信子です。
地震保険の保険料は決して安くはありません。しかも、大地震がこなければ無駄だと思われがちです。
勉強会では「あえて、こういうマンションはぜひ加入した方がいいと思うのはどんなマンションですか?」というストレートな質問がありました。とても答えにくい質問ですが、竹井氏は、「修繕積立金が不足しているマンション」と答えてくれました。
勉強会参加者の自己紹介では、「前は地震保険に加入していたが、保険金がもらえないケースが多いといわれ、管理費節減のためやめてしまった。そもそも地震保険を管理会社が提案したことがない(管理費会計に余裕がないと提案しにくいので)」というような声がありました。
危機管理の視点ではなく、お金に余裕があるかどうかで、加入するかどうかが決められている現状があると言うことです。
耐震性に自信がありお金に余裕がある管理組合は、いざという時は自分たちの修繕積立金で再建できると考え、地震保険に入らないという選択をすることは、十分あり得ます。
しかし、実際は、資金に余裕がないから、地震保険の保険料を出せない、もったいないという理由で加入していないというケースが多く、危機管理上で考えると逆だということになのです。
こういったマンションは、いざというときに再建がたいへん難しくなります。高経年のマンションで、必要な改修工事をしていれば、修繕積立金に余裕があるところはほとんどないでしょう。しかも、旧耐震基準で、耐震改修をしていないマンションは割引きもないので、地震保険の保険料も一番高いのですが、だからこそ、必要度が高いと言えます。
以前の記事、「大地震が来たら公費解体と腹をくくる?」で書いたように、大震災で大きく破損したら、公費解体して管理組合を解散すると覚悟しているというのであれば、それも選択だと思いますが…。
そうはいっても、お金がなければ保険も掛けられない…というのも現実でしょう。
では、地震保険の保険料はどのくらいか…戸当たり月額でみれば、それは、決して負担できない額ではないのです。
保険料は様々な条件によって変わってきますので、一律に示せるものではないのは承知で、勉強会では、ある具体的な事例を示して頂きました。
東京都(もっとも保険料が高い地域)、鉄筋コンクリート造50戸。地震保険の保険金額は1億円(戸当たり200万円)。保険料は10%割引があるとして、年間保険料は20万3,000円(戸当たり4,060円)。月にすると戸当たり340円ほどです。
どうでしょうか。万が一のときの安心料として払うのに、決して大き過ぎる額ではない…と思いませんか。そのへんのことを、丁寧に組合員に示した上で、どの選択をするかを決める必要があるのではないかと思うのです。
で、もし、被害が少なくて、保険金の支払い額が少なかったとしても、それは、被害が小さかったことを喜ぶべきことなのです。十分再建ができますから。
地震保険は、万が一の時に、資金的に自力再建が難しそうなマンションほど、必要な保険と言えるのではないでしょうか。
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