MAG2 NEWS MENU

アメリカ政界の怪物・キッシンジャーが語った「日本観」と「中国観」

中国、韓国、北朝鮮…日本の近隣諸国とは緊張状態が続いています。こうした状況において「自国で防衛力を持つべき」という意見を唱える人も少なくありません。しかし、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは、日本が軍拡に進む方向性に強く反対。その理由として、トランプ大統領の顧問を務める米国のキッシンジャー氏と中国の周恩来が1971年に交わした会話で語った、中米の「日本観」を紹介しています。

トランプの顧問キッシンジャー、卒倒物の「日本観」とは?

史上もっとも基盤の弱いアメリカ大統領といえば、トランプさん。しかし、彼を支持する勢力もあります。イスラエル、サウジアラビア、軍産複合体。そして、アメリカ政界の超大物ヘンリー・キッシンジャー元国務長官が、顧問的役割を果たしている。

93歳で大統領顧問を務めるキッシンジャーさんについて、以前記事を書きました。

トランプの顧問で超反日。キッシンジャー氏が掲げる新世界秩序

これを読んで、読者のYHさんから、超興味深い情報をいただきました。YHさんのメールから。

北野様いつも「RPEジャーナル」を読ませていただいています。ありがとうございます。

北野様は予言をしておられるわけではないのですが読みはよく当たります。北野様の読みではChinaは1920年ころから衰退に向かう。それまでは発展すると予言? しておられました。楽しみです。

着実な読みができる人がもう一人おられます。宮崎正弘さんです。私はこのお二人を世界を読む指針としております。

本日のキッシンジャーの記事も面白かったです。キッシンジャーと言えば公開された周恩来との極秘会談ですね。(以下略)

そして、YHさんは、「1971年にキッシンジャーと周恩来が交わした卒倒物の会話」に関する情報を教えてくださいました。

中国の狙いは、「日米同盟解体」

YHさんから教えていただいた出所は、産経新聞2002年8月6日付です。まず出所出だしを見てみましょう。

「日本の経済発展を後悔」われわれに日米同盟必要ない

ニクソン大統領の訪中準備のため一九七一年に行われたキッシンジャー米大統領特別補佐官(当時)と中国の周恩来首相(同)の極秘会談録が公開され、米中国交正常化交渉における中国の関心が日米同盟解体とともに台湾独立の可能性にあったことが明らかになった。

「中国の関心=日米同盟解体」(!)だそうです。

こうした思惑に対し米側は冷徹な駆け引きで応じているが、「日本の経済発展を許したことを後悔」などと同調、将来の日米安保解体にも言及するなど、日米から米中へと東アジアの枠組みが変身する可能性のあったことを示唆している。

日米から米中へと東アジアの枠組みが変身する可能性>があったそうです。次に、「実際の会話」を見てみましょう。キッシンジャーと周の会話は、1971年10月22日です。

キッシンジャー、驚愕の「日本観」「中国観」

キッシンジャーと周恩来、対話の「ベース」となる「日本観」「中国観」はどのようなものなのでしょうか? キッシンジャーはいいます。

キッシンジャー 率直な日本観を示す。これは米政府全体の見方ではないが、ホワイトハウスの代表的な見解だ。中国と日本を比較した場合、中国は伝統的に世界的な視野を持ち、日本は部族的な視野しか持っていない。 

いきなり「衝撃発言」が飛び出しました。中国は伝統的に「世界的視野」を持っているそうです。一方、日本は、「部族的視野」しかもっていない。私たちは日本人は、「確かに中国は、『世界的視野』をもっている。『中国が世界の中心だ!』(中華思想)という…」などと突っ込みたくなります。

しかしここでは、トランプの顧問キッシンジャーがどんな「日本観」「中国観」をもっているか知ることに徹しましょう。「中国は世界的視野」「日本は部族的視野」。これは、「ホワイトハウスの代表的見解」だそうです。

残念ながら、キッシンジャーの話は本当です。アメリカには、「民主国家日本は、信頼できる同盟国。共産党の一党独裁中国は、世界最大の問題」と考える政治家もいる。しかし、キッシンジャーのような見方も多いのです。キッシンジャーは共和党ですが、こういう見方は民主党に多い

さて、この発言を聞いた周恩来は、日本について何を語ったのでしょうか?

 日本はものの見方が偏狭で、全く奇妙だ。島国の国民だ。英国も島国だが。

「日本はものの見方が偏狭」だそうです。周は、「そういえばイギリスも島国だよね」といいます。これを聞いたキッシンジャー。日本とイギリスが全然違うことを解説します。

キッシンジャー 日本と英国は違う。日本は自国の社会があまりに異質なので、社会を適合させ、国の本質を守ろうとする。日本は突然の大変化も可能で、三カ月で天皇崇拝から民主主義へと移行した。

面白い見解ですね。日本は、明治維新の時、第2次大戦後、「突然大変化」しました。それが可能なのは、「国の本質を守るため」だというのです。おそらく「守るべき国の本質」とは、「天皇」のことでしょう。「さすが」というか、キッシンジャーは日本の本質を見抜いています。

しかし、問題は、キッシンジャーがこの日本の本質を「肯定的」にみているか、「否定的」にみているかです。つづいてキッシンジャーはいいます。

日本人は自己中心で他国に対する感受性に欠ける。

明らかに、日本に対して否定的

キッシンジャーが語る「日米同盟」の「本質」

キッシンジャー、周恩来は、「日本は、偏狭、自己中心で危険な国」ということで意見が一致しました。そうなると、当然「危険な日本をどう抑えるか?」という問題がでてきます。キッシンジャーは、「日米同盟の本質」を周に解説します。

日本が独力で国防を行えば、軍備拡張で周辺諸国にとって脅威となるだろう。現状の日米関係は実際には日本を束縛しており、もし米国が(日本を解き放す)皮肉な政策をとれば日中の緊張を引き起こす。

日米関係(=日米安保)は、日本を束縛している」そうです。そう、ここに「日米安保の本質」がある。日米安保は、「共産ソ連から日本を守るために存在した」というのは、もちろん事実です。しかし、一方で「アメリカが日本を支配する道具」でもある。キッシンジャーは、そのことを認めています。彼は、さらに「日米同盟の本質」を深く解説します。

日本が太平洋にある米国の従順な身内だと考えるような米国人はお人よしだ。日本は独自の目的を持ち、ワシントンではなく東京でそれを実行している。日本びいきの向きがある人たちは日本を利用しようとするが、それは危険だ。米国は対日基本政策として、核武装に反対し、自国防衛のための限定的な再武装を支持し、台湾や朝鮮半島への軍事的拡張に反対している。

日本が再び強力にならないようアメリカは、

核武装に反対する
最低限の武装しかさせない

そうです。

では、日本がアメリカから離れたらどうする?

なんといっても戦争が終わってから26年しか経っていなかった時代。中国は、日本の復活を恐れていた。それで、周は「日本の防衛力拡張を抑えることができるのか?」とキッシンジャーに問います。キッシンジャーはいいます。

もし、日本に強力な再軍備拡張計画があるならば、伝統的な米中関係が再びものをいうだろう。日本を自国防衛に限定するよう最善を尽くさなくてはならず、日本の拡張阻止のため他国と共闘するだろう。

決定的な言葉が飛び出しました。日本がアメリカから自立して軍備を拡張すれば?

伝統的な米中関係が再びものをいうだろう。>

これは、なんでしょうか? 第2次大戦中、アメリカと中国は、同盟関係にありました(もちろん、中国は、共産党ではなく、国民党でしたが…)。

日本が再び強力になれば、「伝統的な米中関係」つまり「米中同盟」が復活し、「米中は、協力して日本を叩きつぶす」といっているのです。このことを、日本は決して忘れてはいけません。

日本には、「核武装すれば、すべて解決する」と安易に考える人がいます。しかし、日本がアメリカの許可なしで核武装すれば、

1 日米同盟は解消され、
2 米中同盟ができあがり、
3 日本は叩きつぶされる

ことでしょう。ちなみに日本を叩きつぶすのに、武器はいりません。米中が一緒になって、「日本が原油、ガス、ウランを輸入できないように」すればいい。米中が一体化すれば、簡単なことです。

日本の行くべき道

というわけで、キッシンジャーの「日本観」を見てきました。彼の発言には一貫性があります。彼は、「大平洋共同体」「G2」「新型大国関係」を提唱し、「米中による世界支配実現」にむけて、活動をつづけています。そんな男が、トランプの顧問である。現状、安倍総理とトランプさんは良好な関係にあります。

しかし、決して油断することなく、日米関係がより強固であるよう、働きかけをつづけなければならない。中国が2012年11月に出した「反日統一共同戦線戦略」にも、はっきりと「反日統一戦線」に「アメリカを引き入れる」とある(絶対証拠「反日統一共同戦線を呼びかける中国」)。

中国の対日戦略の柱は、46年前も今も、「日米分断」にある。そうであるなら、日本は、「日米関係をますます強固にしていくこと」を最優先課題にすべきです。

これは、「属国根性」とか、「なさけないアメリカ追随主義」とは根本的に違います。「何が起こっているか」知った上で、「自分」で道を選んでいるのですから

image by: Shutterstock

北野幸伯この著者の記事一覧

日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝のメルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。まぐまぐ殿堂入り!まぐまぐ大賞2015年・総合大賞一位の実力!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ロシア政治経済ジャーナル 』

【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け