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共働きの夫婦が「共働き」しすぎると、貰える年金が減ってしまう話

今のご時世、「共働き」が当たり前となりつつありますが、夫婦ともに20年以上厚生年金に加入していると、思わぬ損をしてしまう可能性があることをご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では、著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、意外と知られていない「配偶者加給年金」の落とし穴について解説しています。

自分はまだ65歳じゃないのに年金貰い始めたら配偶者の年金が月額32,000円程減ってしまった!?

今までよく年金額計算で登場してきた配偶者加給年金という、65歳未満の生計維持している配偶者が居るとオマケで年金額が38万9,800円(平成29年度価額)アップする有難い制度があります。月額に直すと3万2,483円。

以前のメルマガでも厚生年金期間は20年以上を目指しておくと配偶者加給年金が貰えるようになるから、できれば20年を目指しましょうという話をしました。

ただし、そんな配偶者加給年金は配偶者自身が厚生年金期間や共済組合期間が20年以上ある年金を受給できるようになると停止されてしまいます(平成27年10月からの改正で厚年と共済合わせて20年以上の年金を貰うようになると停止になる)。つまり、夫婦共に厚生年金期間が20年以上の期間分の年金を貰えると配偶者加給年金が貰えなくなってしまうわけです。

でも一方が1ヶ月少ない19年11ヶ月分の年金を貰うなら配偶者加給年金は全く停止されません。たった1ヶ月の年金記録の違いで夫婦の年金総額がガラッと変わる場合があるのでその辺を今回は見ていきましょう^_^

というわけで事例。65歳前から支給される厚生年金は特別支給の老齢厚生年金と呼びますが、この記事では老齢厚生年金で統一しています。

1.昭和27年6月7日生まれの夫(今月65歳)

この夫は支給開始年齢である60歳から老齢厚生年金年額120万円支給されてるものとし、その老齢厚生年金には65歳から更に配偶者加給年金38万9,800円が加算されるものとします(65歳誕生月の翌月分から配偶者加給年金が加算)。

65歳になったから、老齢基礎年金も貰える(金額はとりあえず75万円とします)。

よって65歳以後の年金総額は老齢厚生年金120万円+配偶者加給年金38万9,800円+老齢基礎年金75万円=233万9,800円月額194,983円)。

一方、妻の年金。

2.昭和37年10月22日生まれの妻(今54歳)

ちなみに、60歳の前月は平成34年9月(ここまでは国民年金に強制加入になる)。年金記録は20歳になる昭和57(1982)年10月から平成2(1990)年5月までの92ヶ月未納。

平成2(1990)年6月に結婚してから平成17(2005)年1月までの176ヶ月間は夫の扶養に入り、第3号被保険者として国民年金保険料を支払わなくても国民年金保険料納付済扱いだったとします。

平成17年2月から平成37年1月までの240ヶ月(20年)厚生年金。この240ヶ月間の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)を合算した金額の平均値(平均標準報酬額)を25万円とします。

この妻の生年月日から見ると、厚生年金の支給開始年齢は63歳(2025年である平成37年10月に受給権発生)。

厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)

63歳から貰える老齢厚生年金(報酬に比例する部分の年金)は25万円÷1,000×5.481×240ヶ月=32万8,860円

そして、夫に付いてる配偶者加給年金38万9,800円は妻が63歳の翌月分(平成37年11月分)から停止されます。

すると夫婦の年金総額は妻が老齢厚生年金が貰える63歳を迎えた後は、妻が65歳になるまで夫の年金(233万9,800円-389,800円)+妻の老齢厚生年金32万8,860円=227万8,860円月額189,905円)となりました。

なんと、夫1人分だけの年金が支給されていた時よりも年金収入が減ってしまいました(^^; 配偶者に厚生年金期間が20年以上の厚生年金が受給できるようになった場合は配偶者加給年金が停止になってしまうんですね。

じゃあ、「妻の年金は請求しないでおけばいいんじゃない?」って思われそうですが、支給開始年齢である63歳で既に年金の受給権が発生している為その手は通用しません。下手に請求遅らせると加給年金の払い過ぎが生じて、払い過ぎた年金を返してもらわないといけない等の問題が生じたりするので危険です。

ちなみに、この妻が65歳になるまでは夫の配偶者加給年金は消滅したわけではなく「停止の状態

仮に、何らかの原因でこの妻の老齢厚生年金が全額停止した(妻が在職して給与が高くて老齢厚生年金が全額停止したり、妻が失業手当を貰う等して老齢厚生年金が全額停止した等)場合は、夫の配偶者加給年金38万9,800円の停止が解除されて支給され始める

また、この妻は生年月日が昭和41年4月1日以前生まれだから、夫に配偶者加給年金が支給されている場合は妻が65歳になると妻自身の生年月日に応じて夫の配偶者加給年金から振替加算(この妻の場合は平成29年度価額1万5,028円)というものが妻の老齢基礎年金に加算されますが、妻自身に20年以上の厚生年金期間があるから振替加算は付きません。この辺も気をつけておく必要があります。

ところで、逆にこの妻の厚生年金期間が19年11ヶ月(239ヶ月)でギリギリ240ヶ月に満たない場合はどうなるのか。239ヶ月なら、63歳から貰う老齢厚生年金(報酬に比例する部分)→25万円÷1,000×5.481×239ヶ月=32万7,490円

この場合は夫の配偶者加給年金は妻が63歳になった後も、妻が65歳になるまで夫に配偶者加給年金38万9,800円が加算されます。なぜなら妻の厚生年金期間が20年に満たないから。

だから、妻が63歳から65歳になるまでの夫婦の年金総額は、夫は老齢厚生年金120万円+配偶者加給年金38万9,800円+老齢基礎年金75万円+妻の老齢厚生年金(報酬に比例する部分の年金)32万7,490円=266万7,290円となります。

厚生年金期間が1ヶ月違うだけで配偶者加給年金が全額停止になったり、ならなかったりで年金額が大きく変わってきたりする事もあるわけですね。だからあえて、自分の厚生年金期間を20年未満にしたほうが得な場合もあるんです。

その後、妻が65歳を迎えた時は妻自身に老齢基礎年金と振替加算が加算されます。妻自身の年金総額を算出。

老齢厚生年金(報酬比例部分)→32万7,290円。

経過的加算→1,625円(平成29年度定額単価)¥)×239ヶ月-77万9,300円÷480ヶ月×(20歳から60歳までの厚生年金期間212ヶ月)=38万8,375円-34万4,191円=4万4,184円

※注意

20歳から60歳前月までに存在する厚生年金期間は平成17(2005)年2月から平成34(2022)年9月の212ヶ月。

あの人と全く同じ条件で働いてきたのに年金額が異なる!?(経過的加算のメルマガ参考記事)

老齢基礎年金→77万9,300円÷480ヶ月×(212ヶ月+176ヶ月)=62万9,934円

この妻の生年月日による振替加算→1万5,028円

振替加算額(日本年金機構)

妻の年金総額は、老齢厚生年金(報酬比例部分32万7,290円+経過的加算4万4,184円)+老齢基礎年金62万9,934円+振替加算1万5,028円=101万6,436円

妻が65歳になった事により、夫の年金から配偶者加給年金は消滅して夫の年金総額は、老齢厚生年金120万円+老齢基礎年金75万円=195万円

妻が65歳になるのは平成39(2027)年10月だから、平成39年11月以降は夫の年金は195万円+妻の年金は101万6,436円=296万6,436円夫婦合計年金月額24万7,203円)。

配偶者加給年金は配偶者が65歳になると消滅しますが…こうして見ると、年の差婚の人は配偶者加給年金貰う期間が長くていいかもしれませんね(^^;;

遺族年金の権利が消滅する事由(日本年金機構)
遺族年金請求時の添付書類一式(日本年金機構)

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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