誰しも自分が犯した失敗は隠しておきたいもの。よしんば口にしたとしても、「愚痴」という形で消化されていくことがほとんどではないでしょうか。しかしそれでは成長は望めない、とするのは無料メルマガ『ビジネス真実践』の著者で戦略コンサルタントの中久保浩平さん。中久保さんは、「失敗こそ職場全体で共有すべきであって、それが社としての財産になる」と言います。その理由とは?
1人の失敗をみんなで学ぶ
ラグビー好きな方にはよくご存知の言葉、「ワンフォアオール・オールフォアワン」というのがあります。「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という意味です。この言葉、まさに会社組織にも当てはまるのではないでしょうか。特に、誰かがミスをしたり、失敗をしたときにこそ。
「何度言ってもあそこの会社は門前払いだよ~」
「俺も今日は、担当者に会えたけど、全く話すら聴いてくれなかったよ~」
「俺もだよ。電話をかけてアポを取ろうとしても全く聴く耳持たず。あ~どこに行ったらお客さんに会えるんだ~」
とある会社の営業マン達の愚痴です。彼らは営業活動が上手くいかないことに対して悲観的になっています。これでは彼らは次のステップへ進むことは出来ません。それどころか同じ失敗を何度も繰り返すことになります。
一方、同じ内容でも次のステップへ進める営業マン達の会話。
A「今日もまた門前払いだよ。挨拶も訪問の趣旨もちゃんと説明したのに会ってもらえないんだよな」
B「だったら、挨拶の仕方や訪問趣旨の説明内容って、相手に伝わっているのか? もう1度確認してみようよ」
A「うん、そうだな。客観的に見てもらった方がいいかも知れない」
B「あっ、それから、俺も今日は担当者に会えて話は出来たんだけど商談にまで行かなくて…。良かったら、何がいけなかったかちょっと再現してみるからチェックしてみてくれない?」
A「分かったよ。お互いにチェックし合おう」
C「ちょっと、待って。俺の話も聴いてくれよ。実は、今日、テレアポをしていたんだけど全然相手にしてもらえなかったんだ。だからちょっとスクリプトの見直しをしたいんだけど、付き合ってくれない?」
こうして3人は、互いの今日の失敗を忠実に再現しチェックし合い、互いの良い所、改善すべき所をアドバイスしあうことに…。
明らかに後者の3人の方が前向きであることが分かると思います。
失敗したことを愚痴としてだけで終れば、それは1日の成果、遣り甲斐なんてものにはなりません。次の日も、また次の日も同じことを繰り返すだけで、成長にも繋がらないのは目に見えています。そして、言い訳だけがドンドンと上手くなっていきます。
失敗から得るものがあるというのは、その日に失敗したことをアウトプットし、その日の内に見直し、改善策、対応策を練り、次の日に備えることなのです。そして、それを1人の失敗例だけでなく、複数の失敗例を共有すれば、それだけ多くのパターンを知ることができ、それぞれに備える武器を手に入れることが出来るのです。
たとえば、先ほどの例から門前払いのくだり…でいくと、「挨拶の仕方については、相手に対して好感を持たすまでとはいかなくても、最低限嫌われない挨拶が出来ているかどうか? 出来ていないのであれば、練習をする必要がある」ということが分かるので、他の2人も一緒になって練習すればいいのです。それが学びです。
訪問趣旨の説明については、
- 自分(自社)の都合だけで訪問しているというような説明になっていないか?
- 相手への配慮、メリットなど全てが明確且つ簡潔に分かり易く伝えられているか?
- そうなっていないのなら、文言を作り直すし、それを簡潔に述べられるように練習する必要がある
ということが分かるので、他の2人も一緒になって練習すればいいのです。それが学びです。
さらに、断り文句が、「今、忙しいからいいや。帰って」と言われたとすれば、その反応に対して、どのように返していけば次に繋がる可能性が少しでも上がるのか? を考える必要があるので、その応対についての三者三様に考え互いに発表しあい、そのような場面でも応対できるように練習する必要がある、ということが分かるので練習すればいいのです。それが学びです。
つまり、失敗したことというのは、隠さずに互いに共有しあうことで、自分にその場面が訪れた時に備えることが出来る、ということです。
1つの失敗に対して複数の策を講じることが出来る、ということです。1人の失敗はみんなの為になるというのはそういうことです。3人いれば、最低でも1日に3つもの事例を共有し、次に備えることが出来るのです。
では、反対に成功事例の共有はどうなの? ってこともあると思うのですが、成功事例というのは、共有したところで、猿真似してしまう確率が高く、上手くいかなかった場合、「言っていたことと違うじゃないか!」ってことになる可能性があります。
ですので、共有するならどうしてそのような成功事例になっていったのか? その過程・背景をみんなで考え「僕なら、私なら」と100%納得していくことが必要であり、納得したなら自然と自分なりの方法を探し構築していくことは可能でしょう。
いずれにしても、何事も実践していくと、失敗することの方が多いはずなので、そうした失敗事例というのは、使い捨てるのではなく、みんなで共有し合うことです。
1人の失敗で他の人の学びになる。そんな意識を持っておくといいでしょうね。
それに、そんな意識を持っておくと、失敗に対する恐れであったり、1歩前へ踏む込むことに対して臆病になったりすることもなくなってくるはずです。
失敗したら…「おっ、こんなパターンで失敗したか。よし、今日はこれをみんなに聞かせてやろう」なんて風に1つのテーマを持ち帰ることになります。それが自分にとってもみんなにとっても財産となるのです。
そして、そのテーマに沿ってみんなで対応策を考え、その対応策を翌日からみんなで実践していけばいいのです。それが財産を活かすということです。
そんなことを日々繰り返し出来ている会社やチームというのは当然のように結果が付いてきます。ぜひ御社でも「失敗」をその日のうちに共有してみてください。また経営者、管理職のみなさんは、そのような環境を作り出しましょう。
失敗やミスをしたときこそ、ワンフォアオール、オールフォアワンの精神です。
■今日のまとめ
『1人の失敗はみんなの学びになる。』
- ここ数日の失敗例を互いに持ち合い、改善や対応策を話し合う。
- 「失敗ノート」を1冊作り、見開きで左ページに失敗事例(描写を描けるくらい具体的に)を書き込み、右ページにそれに対する改善や対応策を書き込んでいく。それを今日から始める。
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