具体的に何が問題かということについて、平成28年11月に、一般社団法人マンションリフォーム技術協会という改修技術者の団体が、個人会員一同ということで、「不適切コンサルタント問題への提言~マンション修繕業界の健全な発展のために~」を機関誌の中で発表しました。
設計コンサルタントを仕事とする方々の中から、自分たちの業界に対する問題提起があったということで、関係者の中では話題になりました。
その中で述べられていることを要約すると…
設計管理方式では、コンサルタントと呼ばれる設計事務所が修繕工事の設計(仕様書の作成等)を行い、それに基づく施工会社からの競争見積による適切な工事費で、管理組合が施工者の選定を行うのを支援する。
さらに工事中は適切な品質を確保できるよう、現場で検査等を通じて施工者を指導し、増減実数清算や竣工図書類の確認を行う。
このように、公明正大に適切な大規模修繕工事を実施することを支援するのがコンサルタントの使命である。ところが、管理組合から業務を受託するコンサルタントの中には、修繕に詳しくない設計事務所や技術的には専門家とは言えないマンション管理士もいる。
また、コンサルタントを単なる金儲け商売と考え、管理組合の支援者としての使命を忘れ、施工業者よりバックマージンをとる不適切コンサルタントも存在する。これを放置したら、管理組合に割高な工事費という実害を与え、業界全体が信頼を失うことになる。
具体的には下記の問題点がある。
- 割高な工事費
- 過剰な工事内容
- 不明朗な工事発注
- 甘い工事管理
- 不適切コンサルの拡大再生産
- 真面目なコンサルタントの減少
- 業界全体の信用が失われる
ユーザーである管理組合の正当な利益のため、マンション改修業界の健全な発展のために広く問題提起、啓発を行う。
としています。
そして、今年1月27日、国交省が「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」を関係団体に通知しました。関係団体だけでなく、管理組合や区分所有者に向けた文章がついていますが、このことを知っている管理組合の方は本当に少数だと思います。
この中では、大規模修繕工事における「設計・管理方式」は、適正な情報を基に透明な形で施工会社の選定を進めていくために有効な方式である。しかし、管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在が指摘さている。
とし、不適切な例として、
ケース1
コンサルタントに依頼したが、そこには実際には技術者はおらず、調査診断、設計等を行ったのは施工業者で、その施工業者に発注することが内定した。
ケース2
設計会社は、施工業者の候補5社のうち1社のみに少ない数量を伝え、見積もり金額を低くし、その業者に決まりそうになったが、この事実が発覚、設計会社に説明を求めたら業務を辞退した。その後、別の設計事務所で工事項目や仕様書を見直したら多数の問題点が発覚、作り直しとなった。
ケース3
一部コンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるよう不適切な工作を行うことを前提に、格安のコンサル料で受託し、結果的に管理組合に損害を及ぼした。
をあげ、コンサルタントが利益相反行為を起こさない中立的な立場で施工業者選定が公正に行われるよう管理組合が注意する必要がある。
としています。