宮沢賢治の作品にはしばしば科学用語が登場することで知られていますが、中でも鉱石の「和名」が使われることが多いのはご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『1日1粒!「幸せのタネ」』では著者の須田將昭さんが、カタカナ表記よりも個々の鉱石・宝石の特徴をよく表すと言っても過言ではない「和名」の魅力を紹介しています。
和名のもたらす想像力
宮沢賢治の童話の特徴の一つには、科学の用語がさりげなく混じることです。それが片仮名の時もありますが、鉱物の名前などは和名を使うことも非常に多いという印象があります。
たとえば「金剛石」。これは「ダイヤモンド」の和名ですが、「ダイヤモンド」の「硬い」という特徴は和名の方がよく感じる気がしますが、みなさんはいかがでしょうか?
あらためて「宝石の和名」を見てみると、それぞれの宝石の特徴をよく表しています。例えば
- ガーネット=石榴石(ざくろいし)
- アメジスト=紫水晶(むらさきすいしょう)
- ルビー=紅玉(こうぎょく)
その石の色が思い浮かびやすい気がします。他にも色でいえば
- アクアマリン=藍玉(あいぎょく)
- トパーズ=黄玉(おうぎょく)
などもあります。これらは、片仮名の名前の方が圧倒的に知名度が高いと思いますが、色は和名の方がよくわかります。また、
- マラカイト=孔雀石(くじゃくいし)
というのも、模様の派手さがある程度予想がつきます。
片仮名よりも和名の方が浸透してるかもしれないのが、
- 黒曜石(こくようせき)=オブシディアン
- 翡翠(ひすい)=ジェード
などですね。「瑠璃も玻璃も照らせば光る」と伊呂波歌留多に出てくる「瑠璃」と「玻璃」ですが、
- 瑠璃(るり)=ラピスラズリ
- 玻璃(はり)=クリスタル
です。前者は「瑠璃」の方が、後者は「クリスタル」の方が知名度が高そうですね。
日本語は外来語を漢語に直して取り込むこともありますし、最近(ここ100年以内)なら片仮名表記で取り込むこともあります。個人的には宝石の和名の創造性豊かなところがいいなあと思いますが、みなさまはいかがですか?
「漢字」が「音」と「意味」の両方を伝える働きを持った文字だというのが最大の特徴ですね。日本語は、「音だけ」の役割を持つ「平仮名・片仮名」と「音と意味」の両方を表せる「漢字」を組み合わすことができる。文字体系が複雑で、習得に時間がかかる分、表現力は非常に豊かです。
豊かに表現し、豊かにその表現を味わう。日々、その感性を磨きたいものだと感じるところです。
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