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【書評】DVDレンタルに図書館、家電販売…TSUTAYAは一体何がしたいのか?

今や日本人の3人に1人の財布に入っているTカード。提携店舗は約30万と圧倒的な数を誇るモンスターカードの総本山、TSUTAYA創業者の事業構想とはどのようなものなのでしょうか。無料メルマガ『毎日3分読書革命! 土井英司のビジネスブックマラソン』でその肉声が紹介されています。

TSUTAYAの謎』 川島蓉子・著 日経BP社

こんにちは、土井英司です。

以前、日本最大の美容室チェーン「EARTH」の國分社長のご自宅に伺った際、國分社長秘蔵のビジネス書を見せていただきました。

特徴的だったのは、多くの書籍が原理原則を書いたものではなく、成功した経営者のケーススタディだったこと。やはり、実行に重きを置いている成功者は、「具体的であること」にこだわるのです。

この「具体的」というのは、コンサルタントの本には期待できないことで、仮にケーススタディがあったとしても、表面的な分析にとどまっているものです(ごくまれに例外はありますが)。

だからこそ、「実行」面を学びたければ、経営者のケーススタディを読むのがいい。そこに本人の肉声があれば、なおのこと良しです。

そこで本日ご紹介したいのは、TSUTAYA創業者、増田宗昭さんの事業構想を、ジャーナリストの川島蓉子さんがインタビューした『TSUTAYAの謎』。

TSUTAYA創業にいたった経緯や当初のコンセプト、それが現在の繁栄にいたるまでを丁寧に追っており、起業家のケーススタディとして、貴重な1冊に仕上がっています。

対談形式の本は、往々にして中身が薄いものですが、ファッションやデザインに詳しい川島蓉子さんの質問力もあり、かなり突っ込んだ、具体的な内容になっています。

さっそく、気になったポイントをピックアップしてみましょう。

僕が目指しているのは、1985年に大阪の枚方市でCCCを創業した時から、まったく変わってないんだよ。それは、CCCが「世界一の企画会社」になること。本屋さんでも音楽屋さんでもない、レンタルショップでもない。企画を売ることがCCCの本業。本や音楽は、そのための方法論と言ってもいい(増田)

効率を求めることと、人が幸せになることとは違う(増田)

これだけモノがあふれている時代に、モノだけ並べられても、人は何の幸せも感じない(増田)

言われてみれば「コンビニエンス」という言葉にはこだわった。「いつでも、どこでも、誰でも」ということにね。その後、1985年に、自分で会社を興して社名を付ける時、僕は改めて、会社の存在意義=レーゾン・デートゥルについて考えた。そして、「カルチュア・インフラを創ること」に行き着いた(増田)

「カルチュア」と「コンビニエンス」という、いわば異質なものを組み合わせ、融合させようとした。一見、相反するものをぶつけることをやったのが、よくわかりました(川島)

ちゃんとブランディングするためには、「空間」と「時間」とを、お客さんと共有できるかどうかが重要なわけ(増田)

お店ってさ、やっぱり最大の「広告」なんだよね(増田)

売り物は「心地いい時間」(増田)

お客さんの暮らしの中で必要とされるものを、きちんと「レコメンデーション」できないと意味がない時代に入っている(増田)

「衣」と「食」があるレベルに達して、今は「住」の時代に入ったわけですね(川島)

When=好きな時に、Where=好きな場所で、Who=好きな人と、What=好きなことを、Why=好きな理由で、How=好きなようにやる──創業の理念と言っていいほど、僕が大事にしていることです(増田)

大事なのは、ビッグデータから、お客さんの気分を感じ取って、ワクワクしてもらえるような提案ができるかどうか、ということ(増田)

◆企画マンが成功しようと思ったら、絶対に忘れちゃならないこと
「増田さんが言っているのだから、いいんじゃない」ということ。つまり信用です(増田)

全国に1,400店、Tカード保有者5,300万人と、これまでに例のない企画会社として、異彩を放っているカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)。

本書には、その発展の基礎となった創業者・増田宗昭さんの事業構想と、その結果がまとめられています。

家電の成果が出るのは、まだこれからだと思いますが、デキる経営者がどう仮説を立て、どう実行するのかを知る、良いケーススタディだと思います。

ぜひチェックしてみてください。

image by: Wikipedia

 

毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン
著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行。
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