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単なる増税に「こども保険」という名を付けるセコい日本の政治家

現役税理士である今村仁さんが、「税金で損しない人」になるためのコツを伝授する無料メルマガ『税金を払う人・もらう人』。今回は、最近よく耳にするものの、ほとんどの人がきちんと理解していないとも言われる「こども保険」という名の増税について取り上げています。

こども保険

こども保険」といっても、民間の生命保険会社が取り扱っている類のものではありません。2017年3月29日に、自民党の若手議員による「2020年以降の経済財政構想小委員会」が、保育や幼児教育を無償にするために創設を提言した「こども保険」の事です。

その仕組みは、「厚生年金加入者から厚生年金保険料率0.2%(本人負担0.1%、事業主負担0.1%)、国民年金加入者から160円/月を上乗せ徴収」して、それらを財源に幼児教育・保育の実質無償化につなげるというものです。

老人優遇と天引き制度

耳触りの良い話ですが、問題は2つあります。

まずは、こども保険料の負担者は、厚生年金加入者や国民年金加入者ですから、いわゆる現役世代(主に60歳以下)だということです。つまりは、選挙投票を積極的に行い(そういう意味で)政治家が最も恐れる老人には負担を求めないということです。政治家の考えそうな手口です。

また、もう1つの問題は、その徴収の仕方です。「税金でも良かったのになぜか社会保険料負担という形式」で、更には、「実際支払うようにしても良いのになぜか給料天引きという形式」。現在受け取っている年金を削減するような老人に負担を求める施策を提案すると、選挙で負けてしまいます。選挙に投票に行く割合が高い老人が、ノーを意志表示するからです。

また、「消費税」が良い例ですが、「増税」というと、国民全般において総じて印象が悪くなります。それほど変わらない内容でも「社会保険料が増えるというほうがなぜか印象が良く見えます。現に、厚生年金保険料が毎年10月に上昇していますが、今のところ目立った国民の反発はありません。更には、天引き制度にすると、国民の反発は相当やわらぐことでしょう。

こども保険に騙されるな!

日本の租税負担率は、1990年度で約28%だったのが、消費税8%を含んでもなお約25%と低下しています。いかに「増税」が、日本国民にとって難しい政策であるかがわかります。

しかし、一方で、社会保障負担率は、1990年度で約11%だったのが、現在では17%と増加しています。ちなみに国民負担率(租税負担率+社会保障負担率)は、1990年度で39%、現在では42%となっていますが、イギリスやフランス、ドイツなどと比べて日本は低い水準になっています。

「こども保険」のような周りくどい言い方をせずに、必要なものはきちんと説明をした上で、「増税」という形で、それが例え「消費税増税」であっても、実行するべきでないかと思うわけです。

子どもや子育て世代への支援のために財政支出を行うということなら、税金を財源とする一般財源(使途を定めずに取る)でまかなうのが王道ではないでしょうか。

税金に対してビビり過ぎているのが、現在の政治家。「老人優遇」であり、「天引き」で見えにくくもあり、「こども保険というネーミングも小賢しいなぁと思うわけです。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 マネーコンシェルジュ税理士法人 【発行周期】 週刊

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