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マツキヨ首位陥落後にも波乱。ドラッグストア業界は5社戦国時代へ

積極的なM&Aが功を奏し、22年にわたりドラッグストア業界の首位に君臨していた「マツモトキヨシ」を打ち破った「ウエルシアHD」。しかし、その「天下」も長くは続かず、あっという間に首位の座を奪ったのが「ツルハドラッグ」でした。今回の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では、著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、ドラッグストア戦国時代とも言われる現状を、ツルハHDの軌跡を辿りつつ詳しく分析しています。

ツルハが1位に。ウエルシアが2位、マツキヨが3位

ドラッグストア大手のツルハホールディングス(HD)は、同業の杏林堂薬局の親会社である杏林堂グループ・ホールディングスの株式を9月下旬に51%取得すると発表しました。業界の勢力争いが激しさを増しています。

ツルハHDの2016年度の売上高は5,770億円です。杏林堂薬局は894億円のため、子会社化が実現すると合計売上高は6,665億円になります。そうなると、イオン系のウエルシアホールディングス(HD)の6,231億円を抜いて売上高で業界首位に躍り出ます。

首位争いが激しさを増しています。マツモトキヨシホールディングス(HD)がドラッグストア業界で22年間にわたり1位を誇っていました。16年度の売上高は5,351億円です。マツキヨHDの地位は安泰かと思われていましたが、ウエルシアHDがM&A(企業の合併・買収)などで一気に規模を拡大し首位の座を陥落させたのです。

こうしてウエルシアHDが首位の座を奪取しました。しかし、その座は長く続かないことになりました。ツルハHDが間も無くして陥落させる形です。

業界首位の座を巡り、ツルハHDとウエルシアHDマツキヨHDが三つ巴の争いを繰り広げています。さらに、4位と5位も僅差でつけている状況で、虎視眈々と首位の座を狙っています。関東地方に地盤を持つサンドラッグが5,283億円で4位につけ、わずか70億円弱の差でマツキヨHDを追っています。5位は九州地方に地盤を持つコスモス薬品で5,027億円となっています。

1位に躍り出るツルハHDと5位のコスモス薬品の差は1,600億円程度です。追い抜くことが難しいというほどの差ではありません。1位から5位までがひしめきあい、首位争いは混沌としている状況なのです。

さて、首位に躍り出るツルハHDとはどのような企業なのでしょうか。ツルハHDの創業の地は北海道旭川市です。北海道を中心に出店を推し進め、南下する形で東北地方や関東地方などにも進出していきました。5月15日時点では国内に1,755店の直営店を展開しています。

こうした経緯から、ツルハHDは東日本において盤石な地盤を固めることに成功しています。店舗数は、北海道・東北・関東甲信越地方だけで約7割を占めています。一方、中部・関西地方はわずか61店で、静岡県には店舗はありません。西日本における店舗網は手薄な状況です。

ツルハHDはドミナント戦略地域を絞って集中的に出店する戦略)で成長してきました。北海道から南下する形で店舗網を広げ、関東甲信越地方では403店(5月15日時点)を展開しています。そういった状況から考えると、地盤のある関東地方と隣接する静岡県に出店してもおかしくはないはずです。しかし、静岡には現在店舗は存在しません

そういった状況のなか、杏林堂薬局は静岡に77店(4月15日時点)を展開し、存在感を放っていました。ドミナント戦略の考えでは、ツルハHDは静岡に出店してもよかったはずですが、杏林堂薬局の子会社化を狙っていたので、あえて静岡には出店しないようにしていたと考えられます。静岡に出店してしまうと杏林堂薬局と競合してしまい、子会社化するメリットが低下してしまうからです。

ツルハHDは四国地方に地盤を持つ「レデイ薬局」や関東地方に地盤を持つ「くすりの福太郎」を子会社化するなど積極的にM&Aを仕掛けてきた経緯があります。そのため、自社だけで店舗網を拡大するよりも、M&Aで拡大する方が効率的と判断したのではないでしょうか。そして、杏林堂薬局を傘下に収めることで静岡での地盤を固め、西日本で出店網を広げるための足がかりにしたいのではないでしょうか。

ツルハHDは中国地方と四国地方ではある程度の地盤があります。一方、中部・関西地方と九州地方は弱く出店の余地が大きくある状況です。

関東地方はどうでしょうか。ウエルシアHDは関東地方が地盤でグループ店舗数の過半となる800店以上が同地域に集中しています。また、マツキヨHDも過半となる800店以上が関東地方にあります。ちなみに、ウエルシアHDは郊外での出店が多く、マツキヨHDは都市部の方が多いという違いがあります。いずれにしても、他のドラッグストアも交えて、関東地方では激しい競争を繰り広げている状況です。

西日本では、コスモス薬品が勢力を誇っています。宮崎県延岡市が創業の地ということもあり、九州地方に強い地盤を持っています。同地域には過半となる500店以上を展開しています。九州地方から東進を進め、中国地方や四国地方、関西地方にもそれなりの店舗数を構えている状況です。

コスモス薬品は特徴的な出店を行なってきました。自社競合も厭わず小商圏に集中して出店しています。品揃えは食品が強く食品売上高の構成比は過半を超えます。価格政策ではエブリデイ・ロー・プライス政策を行い、低価格を売りにしています。こうした戦略により、同社が出店している地域では圧倒的な存在感があります。そして、他に付け入る隙を与えないようにしているのです。

コスモス薬品は西日本には店舗数を多く構えていますが、関東や東北、北海道には店舗がなく、東日本は未開の地となっています。ただ、今後において進出していくことが十分考えられます。その場合、東日本においてツルハHDと競合することになります。また、ツルハHDが西日本への出店を強めていく際に、両社の競争が激化していくことが考えられます。

ツルハHDは杏林堂薬局を子会社化することで首位に立ちます。しかし、その地位は安泰ではありません。他の企業が奪取する可能性は十分あります。ドラッグストア業界は戦国時代にあると言えるでしょう。はたして、どの企業が覇者となるのでしょうか。目が離せません。

image by: Wikimedia Commons

女子大生のハンバーガー店経営物語
(クリエイションコンサルティング)

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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