3.在庫を海外で販売できないか?
さて、帳簿に載らない在庫があったり、隠れ在庫があると、企業資産を正確に把握することは難しい。実態を解明したいのは、税務署も同じだ。アパレル企業は、税務署にわからないように、在庫の操作を行っているのだから、一見して分からないのが当然なのだ。
しかし、不良在庫か優良在庫かという判断は、日本市場を基準に評価したものだ。日本市場では売れない商品も、海外市場では売れるかもしれない。
もし、M&Aを仕掛けるのが中国企業であれば、中国市場で在庫商品を販売することも可能だ。日本アパレル企業のブランドに魅力があれば、ゼロ評価だった在庫商品で利益を出せるかもしれない。
4.ゼロ評価の企業資産
更に、帳簿に計上されていない資産もある。それは、ブランドの歴史、ストーリー、ロゴ、シンボル、雑誌の掲載記事、デザイン、パターン、ショップデザイン等の資料である。
中国アパレルが日本アパレルをM&Aしたい理由の一つは、これらの資産なのだ。しかし、日本の経理処理では、これらの資産価値はゼロ評価である。全ては、経費で制作され、商品や副資材の在庫としては計上されるが、目に見えないブランド価値などは計上されていない。
おそらく、日本国内のM&Aであれば、通常の弁護士、会計士、コンサルタントによる評価で良いのだろう。しかし、その場合でも、本当の負債が分からないので、買収は難しいとされているのだ。
海外企業が買収する場合には、更に、在庫評価を行い、海外市場で販売できるものかを判断した上で、様々なブランド資産を資産に計上して考えるならば、悪い買物ではないはずだ。
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