法律が変わり、年間180日の営業日数上限が設けられた「民泊」。思ったより儲からないことに気付いた一部の富裕層は、別の貸し方を選び始めているようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、まだあまり広く知られていない「サービスアパートメント」について、そして変わりつつある「マンション投資」について詳しく解説しています。
「民泊」の次は「サービスアパートメント」
こんにちは! 廣田信子です。
「ホテル」「民泊」以外の訪日外国人の第三の受け皿として、「サービスアパートメント」の存在がクローズアップされています。楽天が出資する不動産関連会社が、長期滞在の訪日外国人向けに、ホテル機能を持つ高級賃貸住宅である「サービスアパートメント」の仲介を始めるため、近く利用申し込みサイトを稼働させるといいます(8月9日 日経朝刊)。
「サービスアパートメント」とは、ホテルのようなサービスが付いた居住空間で長期間滞在できる形態です。家具や家電、食器、インターネット環境などが整えられ、さらに長期滞在に対応できるようにキッチンやユーティリティの機能もついています。そこに、ホテルのような、シーツやタオル交換、清掃サービスがついています。
民泊のAirbnbが、コマーシャルで「暮らすように旅しよう」と宣伝していますが、その長期滞在型ということでしょうか。住宅としての機能を持つものにホテルのサービスを付加した「賃貸住宅」という位置づけです。「賃貸住宅」というからには、賃貸借契約を結ぶわけで、そこが「民泊」とは大きく異なります。
ただし、「普通借家契約」ではなく契約期間を自由に設定できる「定期借家契約」という契約形態でしょう。ですから、1年未満の契約が可能で、敷金や礼金はとりません。
こういった形態には、「ウィークリーマンション」とか「マンスリーマンション」というものがもともとありますよね。「サービスアパートメント」は、サービス付きの「マンスリーマンション」とも言えます。
すでに、都内だけで数千室あり、外国人のビジネス客や富裕層の利用が多いといいます。ネットで検索すると、個々の物件が出ていますが、まだ、国内物件を横断的に検索できるサイトはありません。そこに、楽天出資会社メトロレジデンスが日本語、英語両方で対応可能な総合サイト開設で乗り組むことで、ここから一気に広がりそうです。専用サイトができるとあっという間に広がるのが、今という時代です。
立地は、千代田区や渋谷区、港区、中央区、新宿区といった都心部の主要駅から0分以内のタワーマンション等が中心で、サイト側で審査した後、滞在期間が1か月以上のものから受け付ける予定だといいます。
間取りはワンルームからで、中には100平米を越えるものもあるといいます。投資目的で購入されているタワーマンション等がこういった市場に出て来るのでしょうね。家賃は、25平米で月25万円前後と言います。
ここには、家具や電気製品等の使用料、ベットメイキング、清掃等のサービス料だけでなく、成約手数料や光熱費等を含んでいます。シティホテルで1カ月滞在するのと、サービスがつかないマンスリーマンションで暮らすのとの、ちょうど中間くらいの料金といった感じで、決して高くはなく、これでラグジュアリーな気分が味わえるなら、需要があるのはうなずけます。
サービスアパートメント用に建設されたものもあるようですが、普通に居住用に分譲されたマンションの一部がサービスアパートメントして使われているものも多いです。
住まいの選択肢として、堅実に広がっていきそうで、外国人に比べると利用は少ないですが、日本人が利用するケースもあるようです。1カ月以上の長期出張の場合や自宅をリフォームする間の仮の住まい、海外から帰国して新居を探すまでの住まいなどの実績があるといいます。
民泊新法が成立して、いよいよ民泊解禁となる訳ですが、年間180日の営業日数上限ができたことで、かなり収益性が落ちることになります。で、むしろ、オーナーにとっては、「サービスアパートメント」の方が利回りがいいということで注目されていると言います。
都心のタワーマンション等では、すでにこういった利用がされていて、賃貸借契約である以上、管理組合としても制限できないでしょう。いよいよ、マンションは、住まいなのか、収益を上げる場なのか、分からなくなっていきます。
今は、「外国人長期滞在者」が対象の「高級賃貸」という位置づけで対象物件も限られますが、この仕組みの活用は、ごく普通のワンルームマンションだってファミリーマンションだってできます。「定期賃貸借契約」と言う「民泊」とは別の形で、一時滞在の外国人の方々がマンションに住むケースも、拡大しそうな気がします。対象になりやすいマンションでは、セキュリティに関しては防犯カメラの増設等が必要になると思います。
一方、マンションの空室の利用範囲が広がることは、不動産価格の維持や改修にお金をかけることへのモチベーションに繋がることも考えられます。
とにかく、たくさんの外国からのお客を受け入れなければならない2020年の東京オリンピックを契機に、いろいろなことが劇的に変わる気がします。管理組合は、自分のマンションの置かれている位置づけを知った上で、社会、市場の変化に常に目配りする必要があると、ひしと感じています。
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