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請求しないと損。意外と手厚い障害厚生年金の「配偶者加給年金」

以前掲載の「実は最強。民間の医療保険よりお得な『障害年金』って何?」では、障害年金の仕組みや受け取り金額について紹介しました。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では、著者のhirokiさんが障害厚生年金の配偶者に支給される「配偶者加給年金」と、65歳以降に選べる3通りの貰い方について、事例をもとにわかりやすく解説します。

障害厚生年金の支給からの配偶者加給年金と振替加算後の夫婦の年金のその後

今回は障害厚生年金の配偶者加給年金から振替加算への流れについて。あと、夫婦のそれぞれの65歳以降の貰い方。というわけで事例。

ア.昭和28年9月20日生まれの男性(今は64歳)

厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)

この男性の年金記録。

20歳になる昭和48年9月から昭和51年3月までの31ヶ月は夜間学生として国民年金保険料納付済み。昭和51年4月から民間企業に就職して平成15年2月までの323ヶ月は厚生年金加入。この間の平均給与(平均標準報酬月額)は500,000円とします。

この民間企業に勤めている間に腎疾患の診断(初診日は平成14年5月25日)。平成15年3月から平成19年3月までの49ヶ月は国民年金保険料納付済み。平成19年3月に腎疾患から慢性腎不全に悪化して、障害年金請求に踏み切り、平成19年5月に請求した。初診日が厚生年金期間中にあるから支給される障害年金は障害厚生年金になる。

その翌月分(6月分)から障害厚生年金2級が認定された。障害年金の決定初回振込みまでは約3~4ヶ月はかかる。支給に時間がかかっても請求月の翌月分から遡って支給される。

で、慢性腎不全以降は人工透析療法を継続している。ちなみに、人工透析は障害年金では等級としては2級以上になる。

平成19年4月から60歳前月である平成25年8月までの77ヶ月間の国民年金強制加入期間は障害年金が2級以上の人だから、法律上当然に国民年金保険料が全額免除になった(平成26年4月以降は申し出により納める事は可能になった)。この法律上当然に国民年金保険料免除になるのを法定免除という。ちなみに生活保護受給者等も法定免除扱いになる。この法定免除による全額免除は将来の老齢基礎年金の2分の1の額に反映する(平成21年3月以前は3分の1)。

法定免除(日本年金機構)

※参考

障害厚生年金請求が5月であり、また、2級に認定されたので障害厚生年金の受給権発生月は5月ですが、前月の4月から国民年金保険料の法定免除適用になる。

イ.昭和29年3月11日生まれの妻(今は63歳)

妻の年金記録。

18歳で高校卒業した翌月である昭和47年4月から昭和53年5月までの74ヶ月は厚生年金加入。しかし自営業の元夫と婚姻を機に退職し、その時、厚生年金加入中の保険料を脱退手当金として支給されて、この74ヶ月は厚生年金に加入しなかったものとみなされた。

※注意

この脱退手当金制度は昭和61年3月をもって廃止され、今は経過的にごく一部の人にしか適用されません。なお、昭和61年4月以降に何らかの年金保険料を納めたり保険料免除期間がある場合は脱退手当金として貰った期間は老齢の年金を貰う為の受給資格期間10年以上に含むカラ期間になる。脱退手当金として貰った記録は日本年金機構にある。

脱退手当金はもう昭和16年4月1日以前生まれの人のような昔の人にしか適用されていませんが、女子の場合は年齢に関係無く昭和29年5月から昭和53年5月までの間に2年以上の厚生年金期間があると脱退手当金を請求できた特例があるから、上記の妻も貰えている。ただし、脱退手当金をカラ期間に入れる場合は昭和36年4月1日以降昭和61年3月までの期間に限る(20歳以上か未満かは関係無い)。

カラ期間(日本年金機構)

昭和53年6月から平成18年4月までの335ヶ月は国民年金保険料未納だった(←すみませんちょっと極端で・笑)。

平成18年5月に元夫と離婚し、平成18年5月から60歳前月の平成26年2月までの94ヶ月は国民年金保険料納付済み。平成25年7月に現在の夫と再婚した。平成25年7月に再婚したことにより、今の夫の障害厚生年金に配偶者加給年金224,300円が付くようになった。配偶者加給年金は自動で付くのではなく、戸籍謄本世帯全員の住民票妻の所得証明書等の書類を提出して加算の手続きが必要

さて、夫に付いてる配偶者加給年金は妻が65歳になる平成31年3月分まで付きますが、その後は夫の障害厚生年金に付いていた配偶者加給年金は消滅して、妻の65歳から支給される老齢基礎年金に振替加算が加算される。平成31年4月分から。

ただ、妻の国民年金保険料を納めた期間は94ヶ月しかなく、最低でも10年以上(120ヶ月以上)納める、または免除期間よりも下回っている為これだと老齢基礎年金が支給されずに振替加算も付かない

しかし、この女性は74ヶ月分の脱退手当金を貰った過去がある為、この期間はカラ期間となって94ヶ月+74ヶ月=168ヶ月となり120ヶ月以上となるから老齢基礎年金が支給される。ちなみにカラ期間は受給資格期間に加えるだけなので年金額には反映しない。よって、妻が65歳以降の年金は老齢基礎年金と夫の配偶者加給年金から振り替えられた振替加算の支給になる。

妻の65歳からの老齢基礎年金額は、

そして、振替加算額は62,804円(平成29年度価額)となる。

加給年金と振替加算(日本年金機構)

よって妻の65歳以降の年金総額は

※追記

ザックリですが夫の年金額の経緯とベストな受給法を示すとまず、障害厚生年金額は500,000円÷1,000×7.125×323ヶ月=1,150,688円。2級だから国民年金から障害基礎年金779,300円(平成29年度定額)も支給。配偶者加給年金224,300円。障害年金総額は2,154,288円月額179,524円)。

また、夫は61歳から老齢厚生年金の受給権も発生しています。老齢厚生年金額は500,000円÷1,000×7.125×323ヶ月=1,150,688円となり障害厚生年金の方が多いからそのまま障害年金を選択した。

65歳までは老齢年金と障害年金みたいに複数の年金受給権があっても一種類しか支給されない。夫が65歳になるのは平成30年9月。で、65歳になると夫も老齢基礎年金が貰えるようになる(平成30年10月分から)。

65歳以降は「老齢厚生年金+老齢基礎年金」、または「障害厚生年金+障害基礎年金」、「老齢厚生年金+障害基礎年金」という3通りの貰い方が可能になりますが、やっぱり障害厚生年金+障害基礎年金を貰い続けたほうがいいですね。

老齢基礎年金より障害基礎年金が多いのも理由にありますが、妻が65歳になった翌月の平成31年4月以降は配偶者加給年金が無くなるとすれば、老齢厚生年金+障害基礎年金=障害厚生年金+障害基礎年金になって同額になりますけども、障害年金は非課税年金だから障害厚生年金+障害基礎年金の組み合わせが有利

余談ですが、障害年金は普通は1~5年間隔で専用の診断書を提出して、障害の程度を審査してその後も年金額の変更または支給するかどうかを決めますが、70歳以上で引き続き人工透析療法を行なっている場合は障害年金は一生支給する形になる(永久認定という)。

image by: Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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