恐ろしい事態。在米作家が語る「自律型ロボット兵器」の危険性

 

自律型の反対は「人間による遠隔操作」ですが、例えば今アメリカなどが実戦使用を始めている無人機の場合は、現在は基本的には「人間が遠隔操作して」います。具体的には、アフガンやシリアなどを飛行させている無人機を、アメリカ本土のコントロールルームで遠隔操作しているのです。

コントロールルームは、冷暖房完備で多くのモニターに囲まれ、基本的にはキーボードとマウス、そしてジョイスティックのようなUIで操作がされます。例えば、パキスタン北部のMという村に、指名手配中のテロ容疑者Kが現れて、M村の若者をテロ集団にリクルートするらしいという「諜報」があったとします。

それが、信頼に足る筋のものであるか、そうではなくても人間を通じた諜報に加えて、周辺の人物による通話やSNSなどの内容(チャター)を解析すると「どうもそのようだ」と断定がされたとします。その上で、別の諜報によりK容疑者が自動車でMに向かったということが判明したとします。その時点で、無人機を飛ばしてKの車両を追跡し、M村で複数の人物が出迎えたところを別の無人機で襲撃し、Kとその同調者と思われる人物を殺害する、そのような運用がされています。

問題は、その全てのプロセスが米国本土のオフィスの一角で完結するということです。ですから、「オペレーター」は普通に郊外の家に住んでいて、朝定時に出勤して宿直要員と引き継ぎを行い、8時間なら8時間の任務を終えると、オフィスを退庁するわけです。そうして自分の車で子どもをサッカーの試合に連れて行ったり、食料品の買い物をして家に帰ったりするわけです。また朝が来れば、同じ車で出勤し、厳重なセキュリティ・チェックを越えてオフィスに入る、その繰り返しです。

そのような一見平和な生活の中で、彼または彼女が何をやっているのかというと、殺人をやっているわけです。厳密に言えば、戦時国際法に基づく宣戦布告もないし、当該の村の属する主権国家の警察権とのすり合わせもない超法規的な、そして多くの場合は厳重に管理された秘密の作戦として「人殺し」をしなくてはならないのです。

これは常識的な人間にとっては大変な負荷のかかる仕事です。重いPTSDに苦しんでいる人も出ているそうです。ですから、近年では、このような「オペレーター」についても、大きな戦功を上げた場合は軍人としての勲章授与などを行って、国家的栄誉を称えることが必要だということになっています。

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