【書評】近年まれに見る良書。認知症患者本人が書く本当の認知症

 

認知症の人にとって、記憶障害があることが一番の不便である。昨日のことを覚えていないのは難儀だ。そこでパソコンで日記をつけることにした。パソコンが彼の外付けの記憶装置の働きをしてくれる。ICレコーダーも愛用している。携帯電話やタブレット端末の操作は、認知症になってから教わって覚えた

認知症に関する本や講座がずいぶんあるらしい。しかし、本人の立場からの理解や支援を訴えるものはほとんどないらしい。逆に、それらを通して「認知症はこわい」「認知症になりたくない」といった恐怖心が煽られてしまうらしい。認知症を知らない人による講演や啓発活動は、本当の理解を得られない。本人に聞き、本人の体験世界を知ることが、認知症の理解に一番の近道である。

認知症になった本人が、その体験を書く。認知症を恐れず、前向きに生きていく希望を伝えるには、本人が話すのが一番である。なんという説得力だ。認知症の理解や支援にはなにが必要なのかが見えてくる。この本を読むと、認知症になってもこういう生き方ができるんだ、堂々と暮らしていけるのだと思う。

佐藤さんは言う。

私は、「認知症になったらなにもできなくなる」という偏見をなくしたい。病状は人それぞれで、認知症になってもやれることはたくさんあるのだということを多くの人に知ってもらいたいのです。

家族へ、医師へ、看護・介護者へ、地域の方へ、行政へ、すべての人へ、そして本人へ、宛てたメッセージがすばらしい。認知症を知りたい人、読むべし! 読むべし!

いいぞ、大月書店。いままでガチガチ左翼出版社だと毛嫌いしてきたが、この本に限りw 絶賛するぞ。認知症に対する誤解や偏見をなくし、世の中を変えることが出来る。本当に理解をともなった変革を生み出せる本である。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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