季節が変ると新しい何かを学びたくなったりするものですが、この秋から英語を勉強したいと考える方も多いのではないでしょうか。英語のスペシャリストで、無料メルマガ「カリスマ英語ナレーターユッキーがお届けする!週間ラジオ英会話♪」である著者ユッキーさんが、学習者の素朴な質問をもとに、「些細な違い」に焦点をあてた英語のフレーズについて解説しています。
英語フレーズの裏世界
今日のテーマは、秋にぴったり!?「フレーズの裏世界」です。
見ようとして、初めてわかる。想像しないと絶対に見えない、なかなかわからない。英単語やフレーズの、“些細すぎる” 違いに焦点をあててお話をしていきたいと思います。温かい飲み物でも飲みながら、ぜひゆっくり、リラックスして読んでくださいね。
今日も、学習者さんからいただいたご質問と、私のアンサーをそのままご紹介します。
1)Couldは一体なぜ、“丁寧”なの?
Q: 例文「Could you take a picture of me?」の「Could」を「Can」にすれば普通の丁寧な言い方になるのでしょうが、もっとくだけた、友達同士の言い方だとどうなるのでしょうか?
A: はい!もちろん、canにするとより率直でカジュアルなイメージに変わります。
★Could you take a picture of me?
「写真を撮っていただけますか?」「写真を撮ってもらえるかしら?」
★Can you take a picture of me?
「写真を撮ってもらえますか?」「写真撮ってくれる?」
ですが実際のところ、敬語になるかどうか、その最終的なところを決めるのは会話の場合、言葉というよりは口調や表情の印象も大きいです。
では一体なぜ、“could”を使うと丁寧な印象を生むと言われているのか? 具体的にいうと距離を感じさせるか、感じさせないか、が違うんですね!
ポイント:過去形になると【距離】が発生します
これはcan-couldだけでなく、will-wouldの場合も同じなのですが、英語では過去形にすると「距離」が生まれる、と考えるとすごくわかりやすくなります。
一歩引いて、相手と距離をとって述べる
→丁寧になる
現在から遠のいて、遠い先、架空の世界を思い浮かべる→仮定法
丁寧形も仮定法も、なぜ過去形になるのか?
それは、言葉を現在から過去形に変えることで心の距離や現実との距離が発生するから、なんです。
このように考えると、「仮定法は過去形、仮定法は過去形・・・」と、力んで暗記する必要もなくなります。
また、オマケとして「if」のお話もしておきます。
~だったら(仮定)
~であれば(条件)
と言いたい時。
おさらいですが、現実的に考えている場合は動詞はそのまま、現在形で使ってOK!です。(現在形のifは中学英語で「条件を表す接続詞」と呼ばれています)
ifと聞くと”If I were a bird, I could fly to you.” このような仮定法のイメージが強すぎて「if=過去形、if=過去形…」と覚えてしまっていたりもするのですが”if”が過去形になるのはあくまでも心から離れた、現実から離れた「~だったらなぁ。(でもそんなのないよね)」という「距離を感じさせる仮定法の時」だけです。
距離があるから過去形、距離がない時は現在形。
話す相手とも、距離や隔たりを感じる必要が一切ない時はそのまま、’can’。ちょっと距離を確保したい、という時には’could’。willとwouldも同じです。
Could you~やWould you~が、言い方によってはお高くとまっているような偉そうな印象を生むのも、しっかりと距離を確保して妙に離れたところから話しているから。
と考えると、すごくスッキリしますね!
2)discussにaboutがNGな理由。
Q: 「いつも楽しく拝読させていただいております!前置詞がどうもイメージつかめずに苦戦しているのですが、例えば以下の文で、”The solution to the problem was obvious to eveyone.”私が作文したら、きっとabout problem と、すると思うのですが、ニュアンスの違いがあるのでしょうか? また、場合によりabout でもOKなのでしょうか? ご教示よろしくお願いいたします」
A. 解決は「向かう」ために存在するものなので「to」を使います!
まずは「to」と「about」のイメージを知ってみましょう
【toのイメージ】
★toを理解するためのキーワード
・向かう
・右方向の矢印(→)
・対象物、到達点まで届く、接触
【aboutのイメージ】
★aboutを理解するためのキーワード
・周辺、まわり
・ぐるぐる、取り巻き
これを知った上で
The solution to the problem was obvious to everyone.(その問題の解決策は皆にとって明らかだった。)
の文をもう一度見つめてみましょう!
Q.「the problem(その問題)」の「The solution(解決策)」としたい時、つなぎとなる前置詞はなぜaboutではなく「to」でなければいけないのか。
A. それは、the solution(解決、解決策)が周りを取り巻く、ぼんやり、ザックリしたものではなく、確実に【向かっていく】ために存在しているためです。
solution to the problemにすると、solution→ the problem。
真っ直ぐ向かって行きますが、solution about the problemとしてしまうと、solutuionがthe problemの周りをぐるぐる周って取り巻いているだけでズバリ!な感じで解決させることはできないんですね。
余談ではありますが、discussにaboutがつかないのも、discuss(=議論、討論)という、テーマが明確に決まって行われるものに対してaboutがもつ“ぼんやりさ”が似合わないから。と覚えると、とても納得ができます。
でも、
I want to talk about this.(私、これについて話したいの。)
「talk」の時はaboutが使われますし、aboutが似合います。
これは「talk(話す)」という単語にaboutのぼんやりさがぴったり合っているから、なんですね。丸暗記というよりは、「あれ、これはなんでこうなってるんだろう・・・?」という視点で前後の単語の役割を見つめてあげるとかなりスッキリ解決してきますよ。
3)video games? a video game?
Q: 「今日もシンプルな質問です。『私は今日テレビゲームはしません』を英訳するとI won’t play video games today. ですが、I won’t play a video game today. では間違いですか。単数と複数で混乱しています。あと、sport と sportsを使うときにも迷っています。よろしくお願いします」
A. ニンテンドースイッチ、プレステ、ニンテンドーWii… 複数の機種を持っている場合はvideo gamesの方がいいですね!
I won’t play video games today.
I won’t play a video game today.
英語としては、どちらも正しい文です。ですが、このような違いがございます。
★I won’t play video games today.
【複数形】=テレビゲームを複数イメージして喋っている
以下2つの想像が考えられます。
1)ハード(機種)を複数イメージしている
うちの家はテレビゲーム大好き一家で、プレステもあるしWiiもあるし、最近はスイッチも手に入れて、やっぱりスイッチは楽しいけど、ゲームの締めにはWiiで家族全員で遊んだりもするんだよね~
64とかファミコンも持ってるよ。クラシックミニ スーパーファミコンは並んだけど買えなかった…!
2)ソフトを複数イメージしている
最近はもっぱら「スプラトゥーン」かな。対戦に夢中になると悔しくて1時間以上やってしまうんだよね…。その後少しだけ「ゼルダ」をして、息抜きには「チョキっとスニッパーズ」かなぁ♪
1と2のどちらの場合でも使えます。
とにかく“ゲームを複数”イメージして
I won’t play video games today.(=今日はやらないわよ!)
と言っているイメージです。
★I won’t play a video game today.
【aと単数形の組み合わせ】=どんなテレビゲームかわかっていない
対して、a video gameは具体的なイメージを持っていない時に使います。
ニンテンドースイッチなのか、プレステなのか、Wiiなのか。頭では何もイメージしておらず、とにかく「テレビゲーム」とテレビゲームを一般的に言っているだけのイメージです。
ここに具体性が入ると、
◎I won’t play Nintendo Switch today.(=今日はスイッチしない!)
◎I won’t play Splatoon today.(=今日はスプラトウーンしない!)
と変化してきます。
sportとsportsのお話も一緒です。
・ただ「スポーツ」と口にしているだけなのか
・いろんなスポーツを複数、頭に思い浮かべて喋っているのか
・特定のスポーツを強く思い浮かべて、そのことを言っているのか
で、英語が変わってきます。
…いかがでしたか?
こういった違いは、「え、なんでこっちには冠詞がついてないの?」「どうしてこの時は前置詞がこれなの?」「え~・・・(ToT)」と、一瞬、イヤになってしまいそうになるんですがなぜそんな使い方をしているのか? 使い方の暗記をするのではなく理由さがしを意識するとちょっとおもしろく読み解けてきます。
そしてやはり言えるのは、フレーズというのは、非常に主観的だということです。結局は話し手や書き手が見ている・見えている景色をそのまま言葉にしていることが多いので、video gamesの話なんかはわかりやすいですが、複数思い浮かべていたらvideo games。これといって頭に浮かんでいなかったらa video game。と、かなり気分屋(!)な部分があるんです。
何が正解、不正解。正しい英語、間違っている英語。というのは実際のところあまりなく、話し手や書き手が正しければ正しい。結局は、そんなルールなんじゃないかな?と英語を使えば使うほど感じています。
image by: Shutterstock