自主映画制作の経験を元に、ゼロから映画を作る実践ノウハウを伝えるメルマガ『映画が作れるようになるメールマガジン』。今回のテーマは、映画作りの初期段階で欠かすことのできない“企画書”の作り方! これって、普段の仕事とかでも結構応用できそうですよ。
人を口説ける企画書の作り方
映画で人を口説くために作る企画書。これは興味ある方は多いんじゃないでしょうか。
僕も数々の企画書を作ってきましたし、いろんな人から企画書を見せられてきました。
見せられた企画書、つまり他人がつくった企画書に関して先に言うと、あまり魅力的な企画書に会ったことがありません……。
決して、内容がいい・悪いではありません。企画した人の熱意がある・無いでもありません。
魅力的でなかった理由を挙げます。
★え、今からこれを読ませるの? という厚さの企画書だった
★相手のやりたいことを押し付けてくる企画書だった
★で、俺は何すんの? がハッキリしない内容だった
★それ、俺じゃないとダメ? という内容の企画書だった
今挙げたこの4項目、熟読しましょう! ここに、企画書のヒントが全部詰まっています。
* * * *
僕はサラリーマン経験もあるんですが、サラリーマンの悩みの一つは、上司の許可を得ることだったりします。
新規事業の立ち上げなどを任されることが多く、企画書を多く作ってました。
ある時、それをチェックする上の人が、2人いました。
上司A「この企画書、読むの面倒臭い」
そこで、イラストや図でいっぱい修正。次にそれを持って上司Bのところに行きます。すると、
上司B「この数値、正確なんだろうな」「これ読んで誰も勘違いしないように正確に直せ」と。
なんなんだーー!! と心の中で叫ぶ、そんな日々でした。
やがて僕は、この正反対の上司2人のOKをスムーズに得る方法を思いつきます。
なんだと思いますか?
それぞれの上司向けに2種類の企画書を作ったんです。
◎視覚的でドーン!バーン!という企画書
◎綿密で正確で、間違いのない企画書
作る手間は増えましたが、相手とのコミュニケーションが円滑になり、全体として、物事がスムーズに進むようになりました。
* * * *
ちょっと思い出話が長くなりました。映画の企画書の話です。
多くの人が、いろんな人のために企画書をつくります。だから、「あれも入れなきゃ、これも入れなきゃ」と自然と分厚くなっていきます。
そして多くの人が、
◎企画の面白さ(と思ってること)
◎自分の熱意
にばかりフォーカスします。
だから、企画書は自然と、装飾にあふれていきます。
僕は、これら2つについて、むしろ要らないんじゃないかとすら思ってます。
みなさん、自分が役者とかスタッフに誘われるのを想像してみてください。目の前に企画書が差し出された状況を考えてみてください。
そして、その企画に乗るかどうか、自分がどこで判断するのかをじっくり考えてみてください。
それらの判断基準が満たされていることがわかれば、すぐにOKじゃあありませんか?
それらの判断基準っておそらく、作品の面白さの割合は意外と低く、メリット部分を考えるのではないでしょうか。
「手伝えば、自分の作品も手伝ってもらえるかも」
「自分の人脈が増えるかも」
「役者さん紹介してもらえるかも」
「この作品に関わった、と自慢できるかも」
「facebookに載せるいい写真が撮れそう」などなど。
それに、デメリットも判断するでしょう。
「信用できる人かな?」
「この人と一緒にやってメリットあるかな?」
「この人から学べるものあるかな?」
「途中で逃げ出したりしないかな?」
「もめないかな?」
「口説かれたりしないかな?」
みたいなことを瞬間的に考えるのではないでしょうか。
相手の気持ちをしっかり考えると、それが企画書になり、言動になります。
例えば僕は、若い女優さんを口説くときは、妻と子供の話をさりげなく入れます(笑)。
これらの言動が正しいかどうかは置いといて、企画書というのは、相手が欲しい情報を入れ、気になる部分を払拭できれば、なんでもいい、ということになります。
それらがシンプルであればあるほどいい、とも思います。
僕の企画書は、フォーマットがありません。そして、口説く相手によって作り分けます。
何種類も作るのが面倒、と思われるかもしれませんが、一つ一つはものすごくシンプルです。
役者さんには、応募する予定の映画祭リストと作品のイメージイラスト一つだけ。
※出演後、見てもらえる範囲を示します
タレント事務所には、過去の作品リストと上映実績と今回の作品の香盤表と絵コンテ。
※ひたすら信頼感を示す
カメラマンほかスタッフには、撮影にかかわるワクワクを想像させる内容だけ。
作品のテーマが云々、というのは、場合によっては、さらっと流します。
「相手のことを考える」これが、遠回りに見えて結局は一番確実な企画書の作り方なんです。
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