セクハラ、パワハラ、マタハラなど、職場での差別や不条理な待遇に関する用語が定着しつつありますが、これらに加え新たに「SOGIハラ」という言葉が登場しています。今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』では、まだ多くの人が耳にしたことのない「SOGIハラ」について、わかりやすく解説しています。
SOGIハラ
LGBTという言葉を知ってますか? 昨年3月23日の198号でも話題にしましたが、この言葉、やっと覚えたと思っていたら、なにやらまた新しい言葉が出てきて、混乱気味の俺である・・・。
新米 「最近は、性的マイノリティーについて認知度も高まり、LGBTって言葉も広がりましたね」
大塚 「そう?」
所長 「少し前に子供の学校の教科書みて、驚いたよ。LGBTという言葉はもちろん、性のことや結婚の様々な形態まで赤裸々に描かれているんだ」
新米 「大学でもないのに、もう学校でLGBTまで習っているんですか?」
大塚 「今はそんな時代なのね」
E子 「たしかにそうね。でも、社内ではそこまで行ってないわよ。就業規則にも入れるのもまだ珍しいわ」
所長 「うーーん、大企業にはダイバーシティは広まったけど、中小企業は、まだまだだね。当然、LGBTだってまだまだだ…」
E子 「性的マイノリティーが周知され、学生のうちは自分らしく生活できたという人たちは増えたそうですが、会社に入ると、これまでの環境とギャップが大きく、退職したり、うつ病になったりする人もいるという統計も出てますね」
新米 「そっかー、社会に出るとやっぱり違うんですね」
深田GL「就職活動のときに、面接で性同一性障害であることを告げると、『帰ってください』と言われた例もあるそうですよ」
新米 「『帰ってください』!? それはひどすぎる…!」
深田GL「『身体はどうなっているのか』、『子どもは産める身体なのか』なんて聞かれたこともあるそうです。とんでもない質問ですね」
大塚 「仕事に全く関係ない質問ですよね。まるで、興味本位のような言い方…!」
E子 「性的指向によって差別をしないことを企業理念に明記したり、研修を行ったりする会社もあるそうだけど、一般的には、セクハラ、パワハラ、マタハラどまりがほとんどね」
所長 「最近は、SOGIハラという言葉も出てきているのは、知ってるかい?」
新米 「SOGIハラ? それなんですか?」
大塚 「LGBTもまだ新しい言葉なのに、もう別の言葉が出てきているのよね」
深田GL「LGBTの認知度は、ここ数年で非常に高まったわね。でも、LGBTという言葉には問題があるという意見が出てきたんですよね」
新米 「え? そうなんですか?」
所長 「LGBTはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字を取った言葉で、性的少数者の総称として使われているだろ。LGBTの人たちとLGBTでない人たち、という2項対立であるLGBTという言葉でなくSOGI(ソジ・ソギ)という言葉を使いたいという考え方は、性的マイノリティーの当事者や支援者で作る団体もこの言葉を広めようとしているんだ」
新米 「へ~、そうなんですか? で、SOGIって?」
E子 「SOGIという言葉はもともと国連での国際人権法についての議論で使用されたのが始まりだそうよ」
所長 「SOはセクシュアルオリエンテーション(性的指向)の略。GIはジェンダーアイデンティティー(性自認)の略。Sexual Orientation and Gender Identityの頭文字をとっていて、直訳すると、『性指向と性自認』という意味だよ。日本では『ソギ』ではなく『ソジ』と読まれることが多いそうだ」
大塚 「へぇ~、そのまま『ソギ』とは読まないんですね」
所長 「LGBTは性的少数者を指す言葉だけど、SOGIは性的指向と性自認についてを指す言葉なので、性的少数者だけを指しているわけではないんだ。SOGI─性的指向と性自認の多様性のなかのどこかに自分もあるのだ、という視点のほうが、より正確ではないかといった見方をしているんだ」
E子 「SOGIハラっていうのは、好きになる人の性別、Sexual・Orientationと、自分の性別についての認識Gender・Identityの頭文字S・O・G・Iをハラスメントと組み合わせた造語で、性的マイノリティーの人たちへの差別的な発言や嫌がらせを示しているわけ」
新米 「具体的には、どんな言葉や行為がSOGIハラになるんですか?」
所長 「差別的な発言をしたり、からかったりするのは、当事者に向けてでなくても、発言自体に差別的な意味があることを知っておかないといけないな」
E子 「性的マイノリティーだという理由で、職場で不当な異動を強要するのも当然ダメですよね…」
所長 「『アウティング』と呼ばれるSOGIハラもある。言葉は覚えておいた方がいいな」
新米 「『アウティング』? なんですか?それ」
E子 「たとえば、心が女性であることを隠して男性として入社した人がいたとして、同じ部署の親しい人にだけカミングアウトしたつもりが、関係のない人にまで話が広まり嫌な思いをした、なんてことは聞いたことがあると思うけど、こういうのを『アウティング』っていうそうよ」
深田GL「性的マイノリティーであることを、『あなたに知ってほしい』っていうのと『みんなに知ってほしい』というのは違うからね」
大塚 「偏見がなければ良いけど、実際にはありますよね。そういう中、本人の意思に反して多くの人に知られてしまうことはつらいですね」
所長 「職場で『結婚しないのか』と聞かれ、同性のパートナーがいることを伝えたら、『アウティング』で社内に広められ退職した例もある」
大塚 「現状では、十分に考えられますね」
E子 「心の性が男性の場合、女性の洋服は苦痛なのに、仕事上のパーティーに『もっと女性らしい服で出席するように』と求めることもダメ」
新米 「SOGIハラは、加害者が無意識にやっていることが圧倒的に多いんじゃないですか? 『セクハラ』のように、してはいけないことを、定義して広く知られるようにしてもらわないと職場での対応も難しいですね」
全員 「そうだね」
SOGIとは(Wikipedia・NHK News Up から)
SOGI(ソギ、ソジ)は、英: Sexual Orientation & Gender Identityの頭文字を取ったもの。日本語では「性的指向と性同一性」と訳されます。
GIはジェンダーアイデンティティー(性自認)の略。自分の雌雄の身体的性差(セックス)に対応する社会的性差(ジェンダー)に適応しているというか、違和感のないことをシスジェンダーといい、違和感を感じ、それとは違うジェンダーに適応したい、振る舞いたいというのがトランスジェンダーです。身体の性とこころの性が一致する・しないといった言い方もされます。
また、SOはセクシュアルオリエンテーション(性的指向)の略。自認するジェンダーを基準に、それとは異なるジェンダーに性愛を感じることをヘテロセクシュアル、同じジェンダーに性愛を感じることをホモセクシュアル、両方に対して性愛を感じることをバイセクシュアル、いずれにも性愛を感じない場合をアセクシュアルと呼んでいます。
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