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習近平が主導する「トイレ革命」に世界が絶望するこれだけの理由

かつて中国のトイレと言えば「不衛生」なことで知られていましたが、習近平国家主席の号令の下2015年に始まった「トイレ革命」により、都市部の公衆トイレに関しては状況は改善されているようです。しかし、台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガで、かつて毛沢東初代国家主席が行った「除四害運動」の失敗を例に上げつつ、今回のトイレ革命が世界を破壊する可能性について言及しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2017年11月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】習近平の「トイレ革命」が世界を破壊する

習近平氏「トイレ革命」指示 国民生活重視を演出

習近平は、11月27日までに、公衆トイレをきれいに整備する「トイレ革命」の成果をアピールし、さらなる推進の必要性を訴えました。国営中央テレビはトイレ革命を習近平の「重要指示」としてトップで伝えたそうです。記事によれば、習近平は「トイレは決して小さな問題ではない。観光地や都市だけでなく、農村部でもこうした大衆生活の品質の足りない部分を補っていかなければならない」と強調したそうです。

中国式の公衆トイレといえば、扉も囲いもなく、隣でしゃがむ人と顔を合わせるため、「ニーハオ・トイレ」と呼ばれてきました。また、水洗ではなく、いわゆる「ボットン式」が多いことから、不衛生だということで、外国人観光客に非常に不評でした。

そこで習近平は2015年から国家観光局に指示し、観光都市にきれいなトイレを整備する「トイレ革命」を行ってきました。すでに今年10月末までに、6万8,000カ所のトイレを改修新設したといいます。

たしかに中国、とくに地方都市の公衆トイレは露天にレンガを積み上げて壁をつくり地面に穴を掘って板を渡しただけのようなものも多く、不潔で、外国人からすると絶対に入りたくない場所の一つとなっています。私の友人にも、中国に派遣されたものの中国のトイレの臭いに耐えられなくなって、会社をやめて日本に帰った人がいます。日常生活のなかで、それも文明衝突文化摩擦の一つだと考えられます。中国でトイレを探す場合には、その臭いで辿っていくのがいちばんの要訣だということも、耳にしたこともあります。

衛生観念がまだまだ低い中国では、こうした不衛生な状況が、伝染病の発生源となる一因だとも言われています。

上海では1988年に約30万人がA型肝炎にかかったということがありました。これもウイルスが排泄物とともに垂れ流され、それを食べた魚介類をさらに人間が食べたことで被害が拡大したと言われています。

また近年では、日常業務で人民元札を数えている銀行員が、トイレに行く際に手を洗わなかったことで、性病に感染するという事件もありました。露天の公衆トイレなどでは、手を洗う場所もないところも多く、紙幣を媒介にしてさまざまな菌が全国に運ばれていると考えられます。

人民元で性病に感染? 浙江の女子銀行員に複数例、札数えた後に手洗いの習慣なし=中国メディア

それだけに、習近平が「トイレ革命」をぶち上げたというのも、理解できます。「新時代の特色ある社会主義強国」を掲げる習近平ですが、あまりにも非文明的な中国のトイレ事情では、とても「新時代の強国とは言えないからです。

ただし、なんでも後先考えずに行動し、その結果、表面的な改革革命で終わってしまうのが中国です。これまでも緑化が叫ばれれば、禿山を緑のペンキで染めるといった、「短絡的」と呼ぶのもおこがましい間違った方法がさかんに行われてきました。それでも現地政府担当者が「もっとも先進的な緑化方法」だと胸をはる始末です。

最先端トンデモ緑化技術再び=ペンキ一塗りではげ山があっという間に緑の山に―中国

習近平の「トイレ革命」にしても、施設だけは豪華で清潔なものを設置するかもしれません。実際、豪華な内装の「5つ星級」のトイレや、テレビ、ATMまで完備しているトイレが登場しているようです。

先進的すぎる中国の公衆トイレ『第5空間』がトイレ界の常識に革命を起こしそう

さすがに中国の市民からも「金の使い方が間違っていないかという疑問が呈されているようですが、しかし問題は、その先の下水処理まできちんとやっているのか、ということです。どう考えても、それらがなされているとは思えません。ただでさえ、中国の河川の汚染は深刻で、汚水にまみれています。

中国環境保護部の2016年の報告では、国全体の3分の2の地下水、3分の1の地上水が肥料や重金属による汚染で「人が触れない状況にあるといいます。また、寧夏回族自治区では、毎日6,400トンの生活排水が処理されないまま川に流されているといいます。

中国で河川、湖、地下水の汚染が深刻、「人が触れられない」状況も―英メディア

淮河、黄河、北京や天津、河北省を流れる川の下流域では70%以上が汚染されているとされ、また、2015年に中国水利部が調査したところでは、中国各地の地下水の80%以上が飲用に適さないと報告されています。しかも、中国の淡水資源は世界の7%を占めるものの、水資源の分布が偏っているため、国内の都市の3分の2が水不足に陥っているとされています。

中国の水質汚染が深刻化、背景に「2つの重圧」―シンガポール華字紙

「トイレ革命」は結構ですが、表面的な成果ばかりを追求した結果、ただでさえ少ない水資源がトイレの水洗に使われ、それが浄化されずに河川さらには海に垂れ流しになる可能性が高いのです。

冒頭の記事にもあるように、かつて毛沢東は大躍進政策において、ハエ、蚊、ネズミ、スズメを「四害」として、徹底的な駆除を進める大衆運動「除四害運動」を展開しました。とくにスズメは農作物を食い荒らす害獣として目の敵にされ、徹底的な撲滅対象にされたのです。

しかしその結果、かえってハエや蚊、さらにはイナゴなどの害虫の大発生を招いてしまい、農業は大打撃を受けました。中国全土からスズメがいなくなってしまったため、ソ連から大量輸入したともいわれています。

よく考えればわかりそうなものですが、独裁者の鶴の一声で妄信的に突き進んだことで、かえって悪い結果を招いてしまったという一例です。

私が初めて社会主義国家のトイレを体験したのは、モスクワでしたが、東欧では警察にトイレまで尾行された経験もあります。

トイレは伝統文化の代表として、故宮博物館にも皇帝や皇后用の黄金の馬桶(マートン、おまる)が展示されています。道教の神々はカマドの神、カワヤの神などがおり、人間の日常生活の隅々まで目を光らせて監視するスパイであり、いちいち天帝に告げ口するのが仕事となっています。

中国は、あるべき仁義道徳は語りますが、衛生についてはほとんど一言も触れません。トイレの神まで人々の一挙手一投足に目を光らせる社会なのです。日本の神々が天照大神まで自ら織物をつくり、民とともに働き、恵みを与えるのとは対照的です。

習近平の「トイレ革命」も、かえって中国の水質や衛生環境を悪化させる可能性があります。習近平は政治から文化に至るまでを牛耳ろうとしていますが、「トイレ革命」が難しいのは、中国の文化・伝統とまったく逆だからです。それだけに「革命」なのかもしれませんが、かつて「四害退治」を目指したものの、それどころか世界一ひどい環境汚染の国になってしまった実績」があるだけに、ほとんど不可能でしょう。

そもそも、中国は中世ヨーロッパの黒死病をはじめ、世界のさまざまな伝染病の発生源となってきました。近年のSARS、鳥インフルエンザなども同様です。

習近平の「トイレ革命」が中国の環境にどのような影響を与えるのか、世界的な大問題でもあります。

すでに中国は環境汚染によって「人の住めない国」になろうとしています。「外華内貧」が中華世界の特質であり、メンツや外面ばかりを大事にするため、本質は置き去りにされてしまうのです。

大気汚染が深刻な中国では、空気がきれいな海外に出かけることを「洗肺遊」「換肺遊」(肺を洗う、肺を取り替えるツアー)と言われていますが、水も土壌も汚染されつづけることで、いずれ「洗胃遊」「換腸遊」も出現してくるかもしれません。

今回のまとめ

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image by: Shutterstock.com

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2017年11月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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2017年11月分

・習近平の「トイレ革命」が世界を破壊する/中国の主張を繰り返す日本メディアに対して声を上げ始めた台湾(2017/11/28)

・アメリカの北朝鮮「テロ支援国家」再指定で最も追い詰められるのは韓国/日本文化の再発見と発信が大ブームとなっている台湾(2017/11/21)

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黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実』(2017年11月29日号)より一部抜粋

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