中国民主化運動の団体により東京で開催されるシンポジウムに参加するため来日中のスティーブン・バノン氏。トランプ大統領の右腕として知られていた同氏は都内で講演を行い、「アメリカは中国の属国だ」との衝撃発言をしました。この言葉が一体どんな意味を持つのか、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際政治に詳しい北野幸伯さんが、米中関係の歴史を紐解きながら解説しています。
バノン、「アメリカは、中国の属国」
バノンさんは17日、都内のシンポジウムで、衝撃発言をしました。なんと、アメリカは、中国の「属国」だというのです。
「米国は中国の属国に」バノン米元首席戦略官が講演
朝日新聞DIGITAL 12/17(日)18:42配信
トランプ米大統領の最側近だったスティーブン・バノン元首席戦略官(64)が17日、都内であったシンポジウムで講演した。バノン氏は北朝鮮問題などで中国を厳しく批判。「(中国は)我々を経済的に侵略しており、米国は中国の属国になってしまった」と述べた。
中国は、アメリカを経済侵略している。それで、アメリカは、中国の属国になってしまった。どういう意味でしょうか????
バノン氏は、英国が欧州連合(EU)からの離脱を決め、米大統領選でトランプ氏が勝利した背景にも、中国の存在があると指摘。「中国に工場が移ったことで雇用が奪われ、米国や英国では『忘れられた人々』が生まれた。それらの人々が強い意志を示したから二つの現象が生まれた」と述べた。
(同上)
ブレグジットも、トランプ勝利も、中国が原因だそうです。あまり聞かない話ですが、理屈はわかります。日本の苦境も、企業が、大挙して中国に出ていってしまったことが大きな原因でしょう。
しかし、仕方ない面もありますね。たとえば、1993年当時、中国の賃金水準は、アメリカの50分の1だった。会社は、「愛国団体」ではないので、50分の1の賃金にあこがれて出ていってしまった。
中国は、アメリカを操ることができる
今回新刊を書くにあたって、私は米中関係の過去をいろいろ調べてみました。そして、その関係の深さに驚きました。簡単に振り返ってみましょう。
1970年代初め、米中は接近を開始。理由は、「ソ連が米中共通の敵」と認識されたこと。キッシンジャーは、この時点で、米中は「事実上の同盟関係になった」と断言しています。1980年代、鄧小平は、アメリカから、経済発展に必要なノウハウ、技術を無制限で受け取ることに成功。しかし、1989年の天安門事件と、共通の敵ソ連崩壊で、米中関係は危機に陥ります。
中国が、アメリカの政治を思い通りに動かせるようになったのは、90年代からです。まず、1993年、いわゆる「クリントン・クーデター」が起こった。クリントンは就任時、見かけ非常に「反中」でした。そこで中国は、ルービンさん、サマーズさん(共に、後財務長官になった)を取り込んで、クリントンの政策を180度転換させることにしたのです。そして、それは大成功しました。
トランプも、今年1月に大統領になったとき、非常に反中でした。彼は去年の12月、台湾の蔡総統と電話会談し、世界を仰天させています。しかしその後、中国の工作で、すっかり懐柔されてしまった。今ではトランプさん、「私は習近平が大好きだ!」と公言してはばかりません。
バノンさんは、「アメリカは、中国の属国だ!」と主張している。私も、「中国は、(イスラエルを超えて)世界一アメリカの政治に影響を及ぼせる国である」という結論に達しました。