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実は損してない?「宿直」と「夜勤」は全く別物で賃金も全然違う

従業員に「宿直」勤務を課している企業も多く見受けられますが、その宿直、厳密には「夜勤」となり支払うべき賃金も違ってくる可能性があります。今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』では、「宿直と夜勤の違い」をテーマに、実は全く異なる勤務体系と賃金、企業側がしなければならない労働局への申請などについて詳しく解説しています。

宿直と夜勤の違い

最近は、所長や深田グループリーダーのお供で就業規則の打合せに同行させていただくことが多くなっている。今回は、深田リーダーが席をはずしている間に「宿直手当と夜勤手当の違いは何?」と質問された俺は、たじたじ…。上手く答えられな~い! 助けてくれ~。全く出番ナシ状態でした…(-_-)/~~~ピシー! ピシー!


深田GL 「賃金台帳を拝見していると、宿直手当とありますが、これはどんな手当なんですか」

K社社長 「宿直した場合の手当ですよ」

深田GL 「その宿直は何時~何時ですか?

K社社長 「夕方の17時~朝の9時までです」

深田GL 「休憩は何時間で、いつからいつですか?」

K社社長 「休憩は、夕食時間として、20時から1時間夜中の3時から1時間です」

深田GL 「拘束時間は、16時間、休憩が2時間で14時間は、お仕事されているんですね? 労働局に許可申請はしていますか? 宿直というより夜勤ではないでしょうか」

K社社長 「労働局に申請? そんなことはしていないよ。宿直と夜勤ってどう違うの? 多少は仮眠してもらってもいいんだけど、休憩はどういう風にとってもらうのが良いんだろう。教えてもらえませんか?」

深田GL 「宿直と夜勤の違いについてですが、この両者は、夜から翌朝までの勤務という点は共通しています。働く時間帯が同じなので、勤務内容も同様ととらえがちですが、実は、業務内容や賃金や休憩時間も全く違う考え方なんです」

K社社長 「へぇ、そんなに違いがあるんですか? 当直っていう言葉も聞くことがありますが、これもどう違うんでしょう?」

深田GL 「そうですね。当直という言葉も夜の勤務をイメージでき、職場によっては夜勤や宿直のことを慣習的に当直と呼んでいるところもあります。でも、当直というのは、『交代制で当番を決めて勤務すること』が本来の意味で、業務内容や働く時間帯を指すものではなく、日直、宿直、どちらも当直といえるんです」

K社社長 「ふーん、そう言われればそうだね」

深田GL 「宿直と夜勤の違いは、1日8時間で週40時間までという法定労働時間で区別するとわかりやすいかもしれません。夜勤は法定労働時間内の勤務で、宿直は法定労働時間外の業務なんです。宿直は待機業務普段の通常業務は入りません

K社社長 「え? そうなのですか?」

深田GL 「はい、法定労働時間内の勤務である夜勤は、業務内容は通常通りで良いのですが、昼間勤務と夜間勤務では、夜間の方が負担は大きいですよね。そのため、22時から翌日の5時までは深夜勤務とされ、夜勤には深夜の割増賃金を加えた賃金を支払わなくてはなりません。割増率は25%です」

K社社長 「割増賃金は出しているけどね」

深田GL 「そもそも、宿直とは、夜間に勤務先に泊まることを前提とした勤務を指します。夜間は人手が少なくなる時間帯ですが、緊急事態が発生したとき、対処するための要員が宿直です。職場によっては定期的に巡回をすることもあります。主な業務は待機しながら必要時に責任者へ電話連絡をすることです。ですので、一般的には睡眠時間が確保されていることが多いです」

K社社長 「うちの場合は、多少の仮眠は取ってもらっていいんだけど、待機しているわけではなくて、休憩時間以外は昼と同じように働いてもらっているね。ということは、宿直とは言わないんだね?」

深田GL 「そういうことなんです。だから、宿直でない勤務に宿直手当という名前をつけるのはいかがかなぁと思って、おたずねした次第です」

K社社長 「そういうことなんだ…。ちっとも知らなかったよ。さっき労働局への申請の話があったけれど、あれはどういう申請をするんだい?」

深田GL 「宿直の許可についてですね。労働基準法に定めのある『宿直勤務』というのは、当外事業場に宿泊して行う定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態の発生に対処するための準備などを目的とする勤務とされています。この内容を踏まえて、許可を受けるためには、要件があって、全てを満たしておく必要があります」

K社社長 「条件があるというわけですね」

深田GL 「はい、5つ言いますね。
     1.常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務であること
     2.通常の労働の継続でないこと
     3.相当の睡眠設備が設置されていること
     4.宿直手当が支払われていること
     5.宿直が1週間に1回以内であること」

K社社長「1週間に1回? それは、全く違うね。うちは、夜勤の人は毎日勤務だわ」

深田GL 「K社さんは、法定労働時間内の話だと思いますので、宿直ではなく、夜勤ですね。今お伝えした、これらの5つの要件を全て満たし所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合のみ宿直勤務を行わせることができるのです」

K社社長 「許可っていうのは、難しいのかい?」

深田GL 「どのような『宿直勤務』であれば許可を受けられるかですが、1.通常の勤務時間の拘束から完全に開放されたものであること。つまり、通常の勤務態様が継続している場合は、勤務から開放されたとは言えないので、その間は『宿直勤務』とはみなさず、通常の労働の延長と判断され、時間外労働にかかる割増賃金の支払対象となります」

K社社長 「へぇ~、気をつけなければいけないね」

深田GL 「2.夜間に従事する業務は、ほとんど労働のないことを要件としますが、このほとんど労働のないという中には定時巡回及び電話応対等軽度の又は短時間の業務に限っては含んでかまわないとされています。業務が頻繁に行われ、長時間に及ぶときは、『宿直勤務』とはみなされません」

K社社長 「電話が頻繁にかかるようではダメだということだね」

深田GL 「はい、そうですね。3.夜間に十分な睡眠がとりうること。これも大事な用件です。仮眠もソファなどではなく、しっかり眠れる場所があるかのチェックが入ります」

K社社長 「いろいろと厳しいんやね」

深田GL 「これらの内容を十分に熟知して『宿直勤務』を行わせないと許可が取り消しされることもあります」

K社社長 「そうなんだ、取り消しね~」

深田GL 「深夜割増賃金を含む宿直手当の最低額は、その事業場において宿直に就く予定の労働者に対して支払われている賃金の1人1日平均額の3分の1以上で設定する必要があります」

K社社長 「ん? 3分の1?」

深田GL 「はい、なので、『宿直勤務と夜勤では支払う賃金が全く異なります

K社社長 「ホントだね~、驚いたよ」

深田GL 「夜勤勤務の仮眠時間の扱いもチェックが必要です。完全に勤務を離れてしっかり仮眠がとれるのなら、休憩時間となり、賃金の発生はありません。ところが、仮眠中でも、何か問題があれば業務に戻らなくてはならないのなら、それは完全な仮眠時間とはいえず、労働時間としてカウントされることとなります」

K社社長 「宿直か夜勤か、きちんと理解して、整理しないといけないね」

深田GL 「はい、お願いします」

image by: Shutterstock.com

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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