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結局、平凡な会社員が受け取れる年金の「平均額」は幾らなのか?

年金については長年議論されていますが、誰もが一番気にしているのは「結局、いくら貰えるの?」ということではないでしょうか。もちろん、人によってその金額は異なりますが、無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者・hirokiさんが、民間企業に勤めるサラリーマンの例をあげ解説しています。

結局、私たちの年金はいくら貰えるのか?

結局、私たちの年金はいくら貰えるのか?」という事の復習です。結局何だかんだ言っても行き着くところはそこなんですよ。お金の話だから。今回は割と安定した収入で民間企業に勤めていた場合です。

では事例。

1.昭和33年1月20日生まれの男性(今は59歳)

何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(参考記事)

この男性の年金記録。20歳に到達したら国民年金に強制加入になりますが、20歳になる昭和53年1月から大学卒業する昭和55年3月までの27ヶ月は国民年金に任意加入だった。平成3年3月までの昼間学生は国民年金には強制加入ではなかったが、国民年金保険料を納めなかった。

この27ヶ月は年金受給資格を得る為の全体の期間10年以上の中に組み込むカラ期間になるだけ。年金額には反映しないからカラ(空)期間と呼ばれる。

主なカラ期間(日本年金機構)

昭和55(1980)年4月から平成15(2003)年年3月までの276ヶ月は、平均的な給与(平均標準報酬月額)40万円で働く。平成15(2003)年4月からは賞与も年金額に反映するようになり、年金支給開始年齢である63歳の前月の平成32(2020)年12月までの213ヶ月は給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)を合計して213ヶ月で割った額(平均標準報酬額)は53万円とします。

年金額計算に用いる超重要な標準報酬月額や標準賞与額とは一体何?(参考記事)

まずこの男性は63歳から老齢厚生年金報酬比例部分のみの年金が請求により支給されます。

厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)

63歳からの老齢厚生年金(報酬比例部分のみ)→40万円÷1,000×7.125×276ヶ月+53万円÷1,000×5.481×213ヶ月=786,600円+618,750円=1,405,350円(月額117,112円)。

※参考

過去の低い給与(標準報酬月額)をそのまま使うと年金額が下がってしまうから、現在の貨幣価値に直すために「再評価率」というのを標準報酬月額に掛けていつも年金額は算出してます。例えば昭和50年代くらいの給与(標準報酬月額}が15万円くらいだったら、この年代の再評価率は約1.3~2.0前後くらいだから仮に標準報酬月額15万円×再評価率2.0=30万円くらいで年金額を算出して、年金額が極端に低下しないように配慮される。

厚生年金額を出す時は過去すべての標準報酬月額に再評価率を掛けないといけないから手計算は…したくないですね(笑)。

平成29年度再評価率(日本年金機構)

ちなみにこの男性は、63歳以降も65歳まで厚生年金に加入して働く事にした。賞与無しの給与(標準報酬月額)30万円で働くとする(直近1年の間にも賞与無し)。となると、老齢厚生年金を貰いながら厚生年金に加入すると年金が停止される場合がある。これを在職老齢年金という。

年金に停止がかかるかどうかを見る。まず、老齢厚生年金月額は117,112円で標準報酬月額は30万円だからザッと年金停止額を算出する。

(年金月額117,112円+標準報酬月額30万円-支給停止調整開始額28万円)÷2=68,556円の停止。この28万円というのは定数みたいなもんですが、毎年賃金や物価の変動で変わる。よって、月の年金支給額は117,112円-年金停止月額68,556円=48,556円となる。だから、65歳まで30万円で働くとすれば、老齢厚生年金月額は48,556円の支給となる。

※注意

60歳到達時賃金よりもその後の給与が75%未満に下がった場合は、雇用保険から最大下がった賃金の15%が65歳到達月まで支給される高年齢雇用継続給付金というのがありますが、今回は簡易にする為に除いています。厚生年金に加入しながら高年齢雇用継続給付金を貰っている人は更に年金額が停止される(最大で標準報酬月額の6%)。

65歳で引退するとする。65歳になるとまた年金の内訳が変わってくる。国民年金から老齢基礎年金が支給され始めるから。老齢基礎年金は20歳から60歳到達月の前月までの480ヶ月の間に年金に加入した分で計算される。つまり、昭和53年1月(20歳到達月)から平成29年12月(60歳到達月の前月)までの間。この間に保険料納められた国民年金は、厚生年金に加入した昭和55(1980)年4月から平成29(2017)年12月までの453ヶ月。

なんで厚生年金に加入してたのに、国民年金の計算するのかというと毎回くどいようですが、厚生年金や共済組合に加入してても20歳から60歳までは国民年金に同時に加入してるから。

更に、経過的加算という老齢厚生年金の部類に入る年金も計算しなければならない。

よって65歳からの年金総額は、老齢厚生年金(報酬比例部分1,444,813円+経過的加算44,536円)+老齢基礎年金735,464円=2,224,813円(月額185,401円)

なお、65歳誕生日到達時時点(65歳誕生日前日の1月19日時点)で65歳未満の生計維持している配偶者が居れば、配偶者加給年金389,800円(平成29年度価額)が配偶者が65歳になるまで加算される場合がある。

配偶者加給年金が加算されるなら、さっきの年金額2,224,813円+配偶者加給年金389,800円=2,614,613円(月額217,884円)となる。

加給年金と振替加算(日本年金機構)

※追記

これ以上年金を増やす事は出来ないのか。この男性の場合であれば、最大70歳までは厚生年金に加入する事で老齢厚生年金(報酬比例部分のみ増える)を増やす事が出来る。また、65歳から最大70歳まで年金を貰うのを遅らせる事で年金が最大42%増える「年金の繰り下げ」くらいですね(1ヶ月遅らせる毎に0.7%増える)。

もし、老齢厚生年金(報酬比例部分)1,444,813円を5年間遅らせたら、1,444,813円×42%=606,821円増加して2,051,634円になる。老齢厚生年金の経過的加算44,536円も44,536円×142%=63,241円になる。老齢基礎年金は735,464円×142%=1,044,359円となる。

70歳まで年金の繰り下げをしたら、70歳時点の年金総額は老齢厚生年金(報酬比例部分2,051,634円+経過的加算63,241円)+老齢基礎年金1,044,359円=3,159,234円(月額263,269円)になる。なお、繰り下げた年金を貰う時に65歳未満の配偶者がいれば配偶者加給年金389,800円も支給される。ちなみに配偶者加給年金は年金の繰り下げで増えたりはしない

また、年金貰うのを遅らせてる間に遺族年金や障害年金の受給権を得たらそれ以後の繰り下げは不可。まあ大体、障害年金とかは65歳までに受給権持ってる人が大半なんですけどね…そうなると繰り下げ自体が不可。ただし、障害基礎年金のみの人は老齢厚生年金のみだったら繰り下げできる。年金の繰り下げについてはいろいろ注意点ありますが、今回はその話がしたかったわけではないので下の日本年金機構のHPを参照ください。

年金の繰り下げ(日本年金機構)

まあ…結局年金額は人それぞれ十人十色なんですが、今回は割と高めの給与でそれなりに長く厚生年金に加入してきた場合で見てみました。実際、ここまでの金額ってそんなに見かけないんですけどね…とりあえずその人その人で見てみないとわからない部分ではあります。みんなバラバラなので^^;。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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