最近になってようやく「働き方改革」が叫ばれるようになってきましたが、会社独自に設けた「特別休暇」にもユニークなものが数多く存在します。今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』では、そんな従業員をちょっぴり幸せにしてくれる「特別休暇」の決まりや設定する際の注意点について、わかりやすく紹介しています。
特別休暇
最近は、所長や深田グループリーダーのお供で就業規則の打合せに同行させていただくことが多くなってきた。今回は、就業規則の打合せをしていて、気になった特別休暇についてお届けしま~す。
K社社長 「最近は、結婚休暇とか忌引休暇以外にも、アニバーサリー休暇とか誕生日休暇とかいろんな休暇があるらしいね」
深田GL 「そうですね、どんどん個性的な、その企業ならではの休暇が誕生していますね」
K社社長 「特別休暇って、有給でないといけないんですよね?」
深田GL 「いえ、そんなことないですよ。制度を入れれば、無給でも休暇の権利が発生しますし、取得しやすくなります。無給の場合、年次有給休暇として処理することも多いです」
K社社長 「あ~、そういうことね。取得する権利があるんだよって言っておくと、皆が取りやすいってことなんだね」
深田GL 「任意の特別休暇とは違いますが、法定の生理休暇は、無給で良いんですよ」
K社社長 「あ、そうか。そういえば、労基法上にも無給で良い休暇があったね」
深田GL 「労基法ではありませんが、育児休業や介護休業、子の看護休暇や介護休暇なども無給でかまいません」
K社社長 「そういえば、そうだね。結構あるね」
深田GL 「うちの事務所だったら、結婚休暇は御祝いとして有給ですが、忌引休暇は、有給と無給と両方ありますよ」
K社社長 「え? 有給と無給が混ざってるの?」
深田GL 「いえ、亡くなったのが身近な人か、離れた人かの違いですね」
K社社長 「ふーん、そう言うことなんだね。特別休暇を決めるときのアドバイスってある?」
深田GL 「そうですね。特別休暇や慶弔休暇と言われるものは、法律で定められている休暇ではなく、会社の独自の制度ですから、どんな休暇があって、誰がいつどのように取得できるのかということを明確にして、就業規則に定めておく必要があります」
K社社長 「そうか、まずは、就業規則に載せないと始まらないようだね。うちも整備しようかな」
深田GL 「はい、まずは、どんなときに何日特別休暇を与えるかです。忌引休暇は、喪主か喪主でないかによって日数を区別するなら、そのように書く。同居の親族と別居の親族で日数を変えるなら、それも記載しましょう。解釈が様々にならないように、有給か無給かはもちろん、対象者を明確にしたり、休暇の起算日を記載したり、労使間でトラブルにならないようにするのが良いですね」
K社社長 「うーん、有給か無給かはしっかり書くよ。対象者は、そうか、社員だけに与えるのか、他の人まで与えるのかってことだね」
深田GL 「そうです。誰のための就業規則かの確認はもちろん、主語が書いていないと、パートさんには与えないつもりでも、与える規定になってしまっていることがあります」
K社社長 「あ、そういうことか。主語には注意しなきゃ。起算日って言うのは、どういうこと?」
深田GL 「たとえば、結婚休暇だと『3年前に結婚したときの休暇をください』とか、忌引休暇だと1周忌や3周忌に請求する人が出て来ることがあります。休暇期間の所定休日を算入するのかしないのかも重要です」
K社社長 「常識の違いって言うか、最近の人たちは考えられないことを言い出すんだね。昔は、そんなこと言う人なんてなかったように思うなぁ…」
深田GL 「確かにそうかもしれません。従業員さんの主張が激しくなって来ているからこそ、就業規則でしっかりルールを記載しておかないと思いもしないところでトラブルが発生するんですよ」
K社社長 「トラブルが発生しそうなことは他にもないかい? この際、しっかり聞いておきたいな」
深田GL 「そうですね。結婚休暇は、複数回目でも認めるのか、再婚はカウントするのかも考えておいた方が良いですね。在籍中に1回限りとするなら、そのように書くべきですし、初婚のみを想定しているなら、再婚はノーカウントということを明確にしておくのが良いでしょう」
K社社長 「結構細かなことまで決めるんだね。でも、そこまで書いておかないと、トラブルになるってことなんだ」
深田GL 「取得回数に制限はあるのかってことですね。申請はいつまでにするのか、結婚休暇のように長期の場合は、早くに知って業務の段取りを組まないといけないこともあるでしょうし、1ヵ月前には知りたいところですよね。忌引休暇は突然でしょうし、休暇別にその事由や予定日数を届出してもらうための書式もあった方が良いですね」
K社社長 「書式か~。うちは規模が小さいから口頭で済ませているよ」
深田GL 「曖昧にならないなら、口頭でも構いませんよ。取得履歴を残しておきたいならなんらかの記録は必要ですね。書式は規模が大きくなってからでよいでしょう」
K社社長 「今はそのままにしておくよ」
深田GL 「わかりました。繁忙期に申請して来られると困る場合は、業務の都合により休暇目的を妨げない限度で、期日を変更できることがあることも書いておくのが良いかもしれません」
K社社長 「そこは、年休と似ているね」
深田GL 「年次有給休暇の時季変更権のようなものですね。それから、性善説を信じたいところですが、まれに虚偽の申告をする人もあり得ます。公的に証明できる書類の提出を求めることもある旨も記載しておきましょうか」
K社社長 「はー、うちの従業員に限ってはそんなことはないと思うけど、これからどういう人が入ってくるかわからないから、そういうことも想定しておかないといけないんだね。ちょっと寂しいけど、仕方ないか」
深田GL 「確かに寂しいかもしれませんね。でも、就業規則は、権利と義務を表す規定です。しっかり書けていないと、主張を退けることができないこともあります。従業員のために福利厚生を充実させたつもりの就業規則変更が、こんなはずじゃなかったという結果になるのは避けたいですものね」
K社社長 「それはそうだね」
深田GL 「また、法律で決められた休暇でないからこそ、手続きは厳格にしておくのが望ましいですね。条文の最後に、記載の『手続きを怠ったときは、無届欠勤として賃金を控除する』としておけば、なお良いでしょう」
K社社長 「今日は、法律以外のことだそうだけど、勉強になったよ。僕らは、どこからどこまでが法律で決まっているのかさえ曖昧だからね」
深田GL 「法定休暇である、生理休暇や産前産後の休暇などは、就業規則に書かれていなくても法律どおりに運用することができますが、法定でない休暇は、どんな休暇にするのかは会社次第ですからね」
K社社長 「そうかー、よくわかったよ」
深田GL 「最後に、そういう特別な休暇だからこそ、周知されていないと、宝の持ち腐れです。取得しやすい雰囲気づくりをお願いしますね」
image by: Shutterstock.com