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【書評】マスコミが垂れ流す「子宮頸癌ワクチン危険説」という嘘

以前掲載の「日本人医師の国際的な賞の受賞を、国内メディアがボツにした裏事情」でもお伝えした、子宮頸癌ワクチンと国内大手マスコミとの「不都合な関係」。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長・柴田忠男さんが取り上げる書籍にも、そのワクチンを巡るマスコミや役人の呆れた行状が記されています。

日本の聖域 クライシス
「選択」編集部 新潮社

「選択」編集部編『日本の聖域 クライシス』を読んだ。「選択」は会員制月刊情報誌であり、書店では売られていない。この雑誌の内容は、大メディアが真実を曲げて伝えたり、報じるべきなのに口をつぐむ諸問題について、その実態や真相をえぐるもので、責められるべき人物は肩書きとフルネームが出るのだからこわい。著者名はないが精鋭ぞろいである。

今も昔も深刻なのは、新聞や放送など信頼をおけるはずのメディアが、偽ニュースの流布の主体になっていることだ。23件の記事の中で、まえがきでも触れる「子宮頸癌ワクチンは、悪意のある報道が生んだ悲劇の最たるものである。世界中で癌予防の効果と安全性が認められているワクチンの接種が、日本ではほぼ止まったままになっているという。根拠なきワクチン危険説」のせいだ。

厚労省、政治家、弁護士らとグルになった新聞、テレビはワクチンの副反応ばかりを誇大に煽りたて世論をミスリードしている。日本では、毎年約1万2,000人が発症し、約3,500人が落命する。世界中で使われている、HPVワクチンによる定期予防接種が「再開」されれば、事態は好転するはずである。しかし……。

2013年6月、厚労省はワクチン摂取後に失神や痛みを訴える例が30以上あると発表し、ワクチンは危険であるというイメージが一気に拡散した。それを受けてWHOは、世界中で使用が増加しており、他から同様な兆候は認められていない、HPVワクチンが疑わしいとする理由はほとんどないと声明を出した。

米国疾病予防管理センターや米国臨床腫瘍学会なども同様の見解で、摂取を推奨している。世界の専門家が一致して安全性を保証しているにもかかわらず、日本だけが接種を停止している。こんな事態に陥った元凶は、厚労省、政治家、反ワクチン派とその弁護団、製薬会社、無知なウソを垂れ流すマスコミである。

ワクチンにつきものの副反応の一部だけを切り取って、悪印象を増幅させる。特に悪意のある報道と名指しされるのは、やっぱり朝日新聞だった。「選択」では、叩く相手の所属や姓名を容赦なく明らかにするから、愚かな反ワクチン派の連中も次々と槍玉にあがる。捏造された情報の影響で、ワクチンを接種できなかった少女たちが、数年後には大人になり始める。そしてHPVに殺される

信州大教授による、HPVワクチンが副作用をもたらすことを示したマウスの研究が不適切であったことが明らかになった。アメリカでは「日本のマスコミが作り上げた冤罪」と批判する人もいる。画期的なワクチンに難癖をつけ、受け入れようとしない日本を、世界中が奇異の目で見ている。なんということだ。

いま厚労省のサイトには「現在、子宮頸がん予防ワクチンの接種を積極的にはお勧めしていません。接種にあたっては、有効性とリスクを理解した上で受けて下さい」とでかでかと脅しが書かれている。だが、そのすぐ下に「子宮頸がん予防ワクチンは世界保健機構(WHO)が接種を推奨し、多くの先進国では公的接種とされています」とある。責任のがれは役人の本性である。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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