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政府が主導する、定額働かせ放題プラン「残業ゼロ法案」の危険性

政府が掲げる「働き方改革」は、社会問題となっている過労死、過労自殺、ブラック企業の撲滅に繋がると期待されていますが、今のところ大きな成果はみられません。メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』の著者で、元ANA国際線CAという経歴を持つ健康社会学者の河合薫さんは、政府が新たに実現させようとしている「高度プロフェッショナル制度」について、これは名を変えた「残業ゼロ法案」だと強く批判しています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年1月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

働かせ放題プラン「残業ゼロ法案」って?

共同通信社が13、14両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍晋三首相の下での憲法改正に反対は54.8%で、2017年12月の前回調査から6.2ポイント増加し、賛成は33%であることがわかりました。

また、内閣支持率は49.7%で、前回調査から2.5ポイント増加し、不支持率は36.6%でした。

メディアでは「憲法」のことばかりが取り上げられていますが、実はこの調査では「働き方改革」についても聞いていて、「高度プロフェッショナル制度導入には賛成が25.4%反対が54.9%と、ダブルスコアで反対が上回っていることがわかっています。

高度プロフェッショナル制度ーー。

いわゆる残業ゼロ法案で、法律が定める労働時間規制から完全にはずす、という制度です。

内容を簡単におさらいしておきますと……、

といったものです。

つまり、

「一応年間104日は休日にするけどあとはキミの好きな感じでヨロシク!うち(会社)としては、オーダーした業務をきちんとやってくれればオッケー!え? 健康は誰が管理するのかって? そりゃあ、キミ自身だよ。一応、インターバル制度か労働時間の上限選べるし、臨時の健康診断ってのもアリだからさ」

ってこと。

働く人は雇用者側が投げかける「自由という不自由囚われることになってしまうのです。

といった書き方をすると「賛成派」の人たちから総スカンを食らうのですが、高プロ推進の根底にあるのは“ペイ・フォー・パフォーマンス”です。

ペイ・フォー・パフォーマンスというのであれば、そのパフォーマンスに見合ったペイを算出する方法の議論も欠かせないはずなのに、すべては企業任せです。国は「職務内容・達成度・報酬などを明確にした労使双方の契約」としていますが、それが達成できなかったときのペナルティーは、いったい誰が払うことになるのでしょうか?

働く人。そうです。立場が弱い働く人です。

をすり減らして働き続けることでペナルティーを払うという選択を余儀なくされるのです。

2015年5月、証券や国債などの市場情報を提供する会社でアナリストとして裁量労働制で働き、2013年7月に倒れ心疾患で亡くなった男性(当時47歳)が、過労死に労災認定されました。

男性の業務量は、企業が行った人員削減の影響で契約時よりも大幅に増加

上司からは「他のチームはもっと残っているぞ」「他の従業員より早く帰るな」「熱があっても出てこい」と出勤を命じられました。

亡くなる前の1カ月の残業は133時間

半年前から残業は増加し、平均で108時間もの残業が続いていたことが遺族や同僚などの証言からわかっています。

このときも会社は、「居残りは本人が望んだこと」とし、「自分たちの責任ではない」との姿勢を貫きました。人が亡くなっても、ペナルティーを絶対に認めなかった

これが裁量制なんです。

……なんだか書いていて悲しくなってきてしまったのですが、実は今回の法案では「高プロ」以外にもうひとつ心配なことがあります。

「高度プロフェッショナル制度の創設」と共に、「裁量労働制の拡大」が組み込まれているのです。

裁量労働制の拡大には、年収の制限はありません

したがって、年収300万円であろうと、200万円であろうと、100万円であろうと、適用の可能性があります。

対象となるのは、「事業の運営に関する事項の実施管理評価業務」と「法人提案型営業」という実にわかりづらい表現になっていて、前者は「管理職っぽい仕事」、後者は「オーダーメイドの商品などを企画する営業っぽい仕事」とおおまかに考えていいと思います。

いずれにせよ“定額働かせ放題・残業代0プラン”とも呼ばれるほど、かなりひどい法案になりそうですので、この件についてはまた改めて取り上げます。

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image by: shutterstock

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年1月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』(2018年1月17日号)より一部抜粋

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
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