次は、「どうやって見るか?」についてお話しします。
前にも書きましたが、皆既月食は数ある天文現象の中で、最も観察しやすい現象です。明るい街中であっても、見ることのできる可能性が非常に高い現象です。特別な機材がなくても観察できます。
今回は、まず「肉眼で見る」という、最も簡単な方法をご紹介します。いや、紹介というほどのこともないでしょう? と思われるかもしれません。見れば良いだけですから。しかし、ここはただ見るだけでなく、一歩進んで「観察」というレベルで楽しんでみましょう。
皆既月食は、「地球の影」に月が隠れることで、月の姿が欠けて見えて、果てはその姿が全て隠されるのですが、実際には「赤銅色(しゃくどういろ)」という色で、月が見えます。赤とオレンジの黒っぽい色といえばいいでしょうか。これは地球に大気があるからで、朝日や夕日が赤く見えるのと同じ理屈です(詳しく書くと長くなるので今回は省きます)。
この色がどんな色に見えるのか、という点に気をつけて見てみましょう。一口に赤銅色と言っても、実はその時の地球の大気の状況など、いろんな要因で、皆既中の月の色が明るく見えたり、暗く見えたり、あるいはかなり見にくいほどに暗いときもあるのです。
これまでに皆既月食は数回見ることができましたが、私の記憶では2014年の皆既月食はやや暗めでした。初めて本格的にスケッチ観測した1990年2月の皆既月食はもう少し明るかったのではと思います。ただ「あー、欠けてるなぁ」というだけでなく、「色がどんな風かな?」と思って見てみると、さらに楽しめますよ。
今回の皆既月食について、国立天文台が、「皆既月食を観察しよう2018」キャンペーンを実施しています。
「肉眼で見る」「色・明るさに注目する」という方法で、このキャンペーンに参加することができます。正しい観察の方法を知って、報告することで天文現象の観察に一役買える、ってこれはすごくワクワクできる話です。ぜひ一人でも多くの方に参加していただきたいキャンペーンです。
詳しくはリンク先を見ていただくのがいいのですが、それに少し付け加えておきましょう。
まず、準備は用意周到に。「まだまだ先のこと」と思っているとあっという間に当日。そして夜のことですから、慌てて出て行ってから困ることもあります。できればこの週末にでも準備をしてしまいましょう。
キャンペーン用記録用紙は人数分用意しておきます。そして、観察者や観察地などあらかじめわかっていることは先に書いておきます。だんだん気持ちが高まってきますよ。
使う時計は、本来の天体観測ならぴったり秒単位まで合わせておくべきですが、今回は多少のズレ(10秒程度)は大丈夫、と書かれてあります。できれば暗いところでも点灯させて時刻が確認できるタイプの時計がいいでしょう。私は自動で時刻調整してくれるタイプの時計を使います。
今回の観察はあくまで「肉眼」で見た色、明るさについての報告という点には注意してください(メガネ、コンタクトレンズなどの視力矯正は別です)。双眼鏡や望遠鏡などの機材を使うと、光を集める能力が高いので必然的に明るく見えてきます。それはデータとして違うものですので、あくまで肉眼での観察という点には注意しましょう。スマホで撮って見たり、デジカメで撮ったり、あるいはテレビやインターネットで見た画像も違います。自分が見た観察結果を記録するという点が一番のポイントですね。
そして観察が終わったら、忘れずに期限内に国立天文台に報告しましょう。あなたのデータが天文学の研究に役立つのです。ぜひ参加しましょう!
「初めてだからちゃんと観察できるか不安だ」というのはあると思います。でも、ご心配なく。多くの人が送れば送るほど、データの信頼性は上がってくるものです。
自分のデータが必ず何かの役に立つ、そういう思いが大事です。例えば、3回観察するうちの1回しかできなかった、というのでも、大事なデータです。最初は曇っていた、後から曇ったというコメントをつけて送れば十分立派な観察です。私もぜひ参加したいと思っています。
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