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中国当局が、香港の書店経営者を拘束。スウェーデン国籍かつ重病人

習近平氏に対して批判的な書籍を発売したとして、昨年まで2年もの間中国当局に拘束されていた香港の出版社の株主でスウェーデン国籍の男性が今月、再び不可解な理由で拘束されました。しかもその男性は重篤な病に冒されているとのことで、台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガで非難の声を上げています。さらに黄さんは記事中、習氏による言論統制の強化を批判するとともに、現在の中国は何が原因で当局に拘束されるかわからない状態となっており、訪中する人間に細心の注意を払うよう警告しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年1月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め1月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】外国籍の病人すら拘束する習近平政権の非道

2015年10月、習近平の批判本を販売したということで、香港の銅鑼湾書店の関係者が謎の失踪をし、後に中国当局に拘束されていたという事件が起きたことは記憶に新しいところだと思います。最後まで拘束されていた書店の株主でスウェーデン国籍の桂民海氏は、昨年10月に2年ぶりに釈放され、寧波で監視下に置かれていました。ところが今月20日に再び拘束されたと報じられています。

銅鑼灣書店老闆桂民海 傳再度遭中國強押逮捕

桂民海氏は、肌萎縮性側索硬化症(日本では「筋萎縮性側索硬化症」)の症状が現れているそうで、その検査を受けるために、スウェーデンの領事館員2人と北京行きの列車に乗ったのですが、北京に着く前の駅で、10名ほどの私服警官に連れ去られたそうです。

肌萎縮性側索硬化症というのは、Wikipediaによれば、重篤な筋肉の縮小と筋力低下をきたす神経変性疾患で、極めて進行が早く、半数ほどが発症後3年から5年で呼吸筋麻痺により死亡するそうです。そのような生命の危機にかかわる病気が疑われる人物を中国当局は拘束したわけです。

日本ではこのことはまったく報じられていませんが、朝日新聞と提携しているニューヨーク・タイムズは、大きく報じています。それによれば、2015年に中国当局に拘束される以前には、桂民海氏には肌萎縮性側索硬化症の兆候は出ていなかったとのこと。また、同紙は昨年に肝臓がんにより獄死した劉暁波のことを挙げ、拘束中に当局から何らかの身体的な抑圧や薬品投与などがあり、それが肌萎縮性側索硬化症につながった可能性を匂わせるような書き方をしています。

Chinese Police Seize Publisher From Train in Front of Diplomats

実際、かつて習近平の最大のライバルと目されていた薄煕来も監獄で肝臓がんを発症したといわれています。習近平にとって邪魔な存在の有名人がなぜか次々と死に至る病に冒されているのは、偶然の一致なのでしょうか。何らかの露見を恐れて、中国当局が桂民海氏を連れ去った可能性もあります。

しかも今回は、スウェーデン領事館員が2人も随行していました。ニューヨーク・タイムズによれば、桂民海氏の逮捕に際し、彼らが抵抗したかどうかは明らかではないとしています。また、中国当局はスウェーデンの外交当局に対して、桂民海氏が機密情報をスウェーデン当局に漏らした疑いで拘束したと話しているそうです。最近、中国で頻発している、スパイ容疑での外国人逮捕ということです。

しかし、つい最近まで2年間も中国で拘束されていた桂民海氏が、いったいどのような機密情報を握っていたというのでしょうか。機密を知りうる立場でもないのは明らかです。

これは、中国がどのような国籍であろうと、あるいはどのようなシチュエーションであろうが、習近平批判をした者は容赦なく拘束するということを意味しています。日本では習近平批判の書籍がたくさん出ていますが、そういう本を持って中国に入国することも危険な行為だといえます。ましてや、私のような人間が中国に行けば確実に逮捕されるでしょう。

以前のメルマガでも書きましたが、中国では政敵を逮捕、拘束した場合、絶対に治療行為はしません。毛沢東によって失脚させられた劉少奇も彭徳懐もそれで持病が悪化して死亡しましたし、劉暁波ももう手遅れという段階で中国は治療のポーズだけは見せましたが、基本的に放置されて病状が悪化しました。もちろん、前述したように、わざと肝臓がんになるように何らかの手が下された可能性も否定できません。桂民海氏は結局、劉暁波と同様に獄死させられてしまうのでしょうか。

中国ではつい先日まで重要会議の2中総会が開かれていましたが、そこで、憲法に習近平思想を明記することが決定されました。昨年の党大会では党規約に自らの思想を記載させた習近平ですが、さらに憲法にまで盛り込ませることに成功しました。現役の指導者の思想が憲法に明記されたのは、毛沢東以来2人目ということです。

大した実績もない習近平がここまで権力を掌握できたのは、やはり反腐敗運動による見せしめ効果が大きかったといえるでしょう。誰も習近平に逆らえなくなってしまったために、建国の父である毛沢東に並ぶほどの「評価」を手にすることができたわけです。しかし、誰がどう考えても、習近平の実績は毛沢東どころか、鄧小平にも及びません

習近平もそれがわかっているので、余計なことを言う人間は、どんどん逮捕、拘束しています。19日には、憲法改正を提言し、国家主席を選挙で選ぶべきだとインターネットで主張した人権派弁護士が拘束されました。これくらいの発言でも、拘束されてしまうのがいまの中国です。

中国 憲法改正提言の人権派弁護士を拘束

中国では企業内に共産党の支部組織をつくることが義務づけられており、その動きは外資にも強まっています。そのことは以前のメルマガにも書きました。さまざまな監視体制が強化されているのです。

また、アメリカ企業のAppleは今年の2月末から、中国拠点ユーザーのiCloudのデータセンターを中国に開設してこれまでのデータをそこへ移管し、その管理は中国の政府系企業が行うことを決めました。これにより、中国国内のユーザーからは、メールなどが中国当局に閲覧されてしまうのではないかという危惧の声が上がっています。

中国のiCloud暗雲 アップル、中国企業に運営移管

これまで政府に批判的な的なメールを送った過去がある中国人は非常に危険です。また、やり取りした相手も特定できますから、それが外国人だった場合、中国へ行けばやはり逮捕・拘束の危険性が高まります。

もともと、人間不信社会の中国ですから、才能があったり正直な人間はすぐに潰されます。「才能のある人間は早死する」「良心のある人は社会から孤立する」という俚諺があるほどです。

そして、ここまで言論統制が厳しくなってくると、社会における人間不信はさらに高まるでしょう。誰に密告されるかわからないからです。2006年にポータルサイト「網易」で「生まれ変わっても中国人になりたいか」というアンケートをとったところ、64%がなりたくない」と答えたという結果になりました。中国人のチャイナ・ドリームは中国からの逃亡なのです。ますますその傾向は強まっていくでしょう。

最近、日本のマスメディアでは、アメリカのトランプ大統領の暴言や、トランプ発言を理由とした内外の抗議デモを紹介する一方で、習近平体制によるトップダウンのスピーディーさを礼賛し、日本は一帯一路に参加すべきだと主張する文化人の発言を紹介するといった動きが強まっているように思います。

とにかく、中国では何が原因で当局に拘束されるかわからない状態になっています、中国を訪れる人は細心の注意が必要です。

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※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年1月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実』(2018年1月23日号)より一部抜粋

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