そもそも「労働時間が伸びるのではないか?」という懸念事項に、「平均値」を使うこと自体、全く意味がありません。
例えば10人の一般労働者と10人の裁量労働制の人を比較する場合、
- ひとりでも超長時間労働者がいれば平均値は上がる
- ひとりでも超短時間労働者がいれば平均値は下がる
また、対象者をどういう職種の人にするか? 男か女か? 年代別にはどうか?
いつの労働時間か?(繁忙期か閑散期か)などによっても数値は変わるのです。
そういったことも加味した上で労働時間を比較したデータは、厚労省の手元にもある“はず”なのに、まったくもって意味がわかりません。
詳しくはYahoo!ニュースに、5日付で投稿した「“裁量なき裁量労働制”のホントの労働時間と“働かせ放題プラン”の真相」を読んでいただきたいのですが、要約すると以下のとおりです(今回拡大が検討されている企画業務型との比較)。
(データソース:2014年に厚労省と労働政策研究所が行なった「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査」より)
1ヶ月の実労働時間が「200時間以上の割合」は、
・一般の労働者が32%に対し、
・企画業務型裁量制は46%と長い。
ひと月の収入が「500万円以上」は、
・一般労働者が47.3%に対し、
・企画業務型裁量制は56.5%と多い。
しかしながら、企画業務型裁量制の人のうち「300万未満」が14.3%もいるのです。
300万といえば平均年収以下です。
その年収の人たちも、今後拡大されれば裁量労働制に組み込まれる可能性が高い。
おまけに「みなし残業の算定」を半数近くが「不明」と回答し、4人に1人が「みなし時間の設定が不適切」としています。
それに「裁量制」というからには、働く人に「裁量権がきちんと与えられる」ことが基本ですが、「配属されたチームが裁量労働制だったから」という理由で適用され、裁量など与えられていないケースもある。