育休関連の記事は過去にも複数紹介しご好評いただいていますが、よく知られている産前産後休業や育児休業以外にも法で定められている4つの制度があることをご存知でしょうか。就業規則に記載する必要もあるというこれらの制度について、無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者で社労士の飯田弘和さんが詳しく解説しています。
御社の就業規則には、子の看護休暇などの定めがありますか?
産前産後休業や育児休業は、皆さんによく知られている制度だと思います。少なくとも、名前くらいは聞いたことがあったのではないでしょうか?
しかし、育児等を行う従業員に対する制度は、これだけではありません。会社は、他にも様々な制度を設けなければなりません。そして、就業規則に記載しておかなければなりません。
今日お話しするのは、次の4つの制度。
- 子の看護休暇
- 育児のための時間外労働・深夜業の制限
- 育児のための所定外労働の制限
- 育児のための所定労働時間短縮措置等
これらの制度は、法で定められた制度ですので、要件を満たした従業員が申し出れば、必ず与えなければならないものです。そして、就業規則にも記載する必要があります。
記載内容は、
- 制度の対象となる従業員の範囲
- 必要な手続き
- 期間
- 制度利用中の賃金について
上記1.~4.の内容が、法が定める条件を「下回る」ことは許されません。その部分(法律を下回った部分)は無効となり、法律の定め通りの条件とされます。
それぞれの制度を簡単に説明します。
a.子の看護休暇
これは、小学校入学前の子供がいる従業員が、子どもの病気の看護や予防接種等の場合に、1年度中に5日間、休暇を取れる制度です。従業員が希望した場合、会社は拒むことはできません。ただし、看護休暇取得日は、賃金を支払わなくてもOKです(ノーワーク・ノーペイ)。
b. 育児のための時間外労働・深夜業の制限
これも、小学校入学前の子供がいる従業員が対象の制度です。従業員が希望した場合、時間外労働時間を1ヶ月24時間・1年150時間以内にしなければなりません。また、小学校入学前の子供がいる従業員が希望した場合、PM10:00~AM5:00の間、働かせてはいけません。ただ、深夜に子供の面倒をみてくれるような同居の家族がいる従業員については、深夜業を制限する制度は利用できません。
c.育児のための所定外労働の制限
これは、3歳未満の子供のいる従業員が対象です。従業員が希望すれば、所定労働時間を超える労働をさせられません。
d.育児のための所定労働時間短縮措置等
これも、3歳未満の子供がいる従業員が対象です。これらの従業員のために、会社は、「短時間勤務制度」や「フレックスタイム制」「始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ制度」などの制度を整備しなければなりません。基本は、「短時間勤務制度」を設けてください。ただ、業務の性質などで、所定労働時間を短縮することが難しい業務に就いている従業員については、「フレックスタイム制」「始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ制度」などの制度を設けます。
以上4つの制度は、大企業だろうが中小企業だろうが関係なし。すべての企業が実施しなければなりません。
さらには、これらの制度を利用できるのは、女性だけではありません。男性従業員も利用できます。子供を「養育」していればOKです。ただし、勤続年数や週の所定労働日数などによって、制度適用の対象外となる場合もあります。ご利用前にご確認をお願いします。
※「養育」とは、同居して面倒をみていればよく、実子・養子は関係ありません。
以上を踏まえて、あらためてお聞きします。
「御社の就業規則には、子の看護休暇などの定めがありますか?」
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