「オスとメスの関係」を考察。12億年前からどのように変化していったのか
前々回で説明したように、12億年前にオスとメスができて両性生殖をはじめ、これが大成功を収めてほとんどの生物が両性生殖になりました。たしかに両性生殖は競争力が強く、絶滅する危険性が小さかったのですが、唯一、欠点がありました。それは、メスは子供を産むからどうしてもいなければならないのですが、オスは精子を供給するだけなので、どうも要らないのではないかとなってきたのです。
その状態をかつて小学校4年生の理科の副読本から説明をしたいと思います。
メスばかりの魚の群れ10匹がいます。メスだけですと、敵が来ると全滅しますし、子供も生まれません。そこでメスのうち、一番体が大きいメスがオスに性転換して群れを守り、精子を供給します。敵が来るとオスが立ち向かい、メスと子供は岩陰に隠れて群れを守るのです。
しかし、「戦う」ということは「いずれ死ぬ」ということでもありますから、オスは必ず死にます。そうすると、残った9匹のメスのうち、最も体の大きいメスがオスに性転換します。このようにして、常に「オス一匹、メス多数」で群れを維持しますが、これが両性生殖では一番能率のよい群れの作り方です。
私たちは哺乳動物でももっとも進化していますから、女が男に性転換することは難しいのですが、女と男と同数である必要はないのです。多くの哺乳動物が一夫多妻ですが、この制度は「オスにやさしい」のではなく、「メスは全員が生き残るが、オスは戦いに勝ったオス1匹が残り、あとは全部死ぬ」というシステムなのです。
そうなると、オスはメスを獲得するのに懸命になります。その典型的な例が昆虫のガガンボモドキにみることができます。この虫のオスは必死になって相手のメスを探し、交尾しようとしますが、メスはオスが「素敵なプレゼント」を持ってこないと絶対に交尾しません。そこでオスは必死にプレゼントを稼ぎ、メスにあげて、メスがそのプレゼントに気を取られている間に交尾するのです。
ところが、もっと優れたオスがいて、それこそメスが見たら目がくらむようなプレゼントを用意し、それをメスに渡してメスがあまりの素晴らしさにうっとりしている隙に交尾をし、さらにメスがまだそのプレゼントに手を付けていないので、奪い取り、次のメスと交尾したりするのです。
いずれにしても、オスがメスを獲得するにはプレゼントが必要であること、オスの存在価値は命をかけて群れを外敵から守ることです。このような動物の習性やシステムは「原理的、本質的な両性生殖の要求」なものですから、人間まで引き継がれました。
つまり、夫婦の基本は、
1)男性が稼いでくること
2)男性が戦争で死ぬこと
の2つなのです。平和になるということはよいことですし、男女が同じような生活をするのも悪くありません。でも、それは動物の進化の過程から見ると大きく離れていますので、どうしても女性に負担がかかり、不満のもとになります。(つづく)
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