前回の無料メルマガ『アリエナイ科学メルマ』では、廃業するたこ焼き屋さんから著者で科学者のくられさんがこっそり聞いたという「秘伝のたこ焼きソース」のレシピを太っ腹に紹介してくれましたが、今回は家庭でも「カリッフワ〜」な極上のたこ焼きを焼く方法について紹介しています。
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たこやきの科学
前回の「閉めるから教えたる。大阪のおばちゃん直伝たこ焼きソースレシピ」ではたこ焼きのソースの話をしましたが、今回はたこ焼きの作り方本体の話になります。
たこ焼きなんか、たこ焼き粉を買ってきてたこ焼き器に入れればいいんじゃないの…と思う人もいるかと思いますが、さにあらず、美味しいたこ焼きを家で作るのはそれなりに論理武装が必要なのです。
【材料】
- 市販のたこ焼き粉:自分で調整してもいいのですが、市販の粉で十分
- 紅ショウガ:細い安いもので十分
- 水
- タコ
- 卵
となり、別に何らノーマルのものと差はありません。では何を工夫するのか? まずは焼き器の選定です。一般的に家電量販店に置かれているたこ焼き器は電熱式です。電熱式は、手軽で良いのですが、赤外線の波長が短く中心から火が通ってしまいます。
たこ焼きは表面をカリっと焼いて、中心部は蒸し焼きにした茶碗蒸しのような状態がベストです。カリフワってやつです。
熱というのは温度差があることによって伝わります。「当たり前な」と言うなかれ。仮に鉄板にステーキを置いて焼くというものに、家の薄いフライパンとステーキハウスの分厚い鉄板ではどう違うのでしょう?
それは薄い鉄板の抱え込める熱と分厚い鉄板の熱量で圧倒的な差があるからです。フライパンだとステーキの冷温でフライパンの熱が奪われてしまい、高い温度がすぐに冷めてしまいます。そして下がった状態から電熱で熱を入れていくと、肉全体に火が通っていきます。これでは表面をカリっと…中に水分を閉じ込め…というのが難しくなるわけです。業務用の鉄板は有無を言わさない圧倒的熱量によって表面を鉄板と同じ温度にしてしまうため、肉の内部に熱が入りにくい状態になります。これで両面をカリっと焼いてしまうことで、水分を閉じ込め、あとは少し火の弱い場所に移して最低限の火通しをするから、レアステーキを焼いても中までジューシーで美味しいわけです。
この原理は肉よりも更に水分の多いたこ焼きでは顕著に表れます。故に、熱源はカロリーの高く、分厚い鉄の型が好ましいわけです。そして手っ取り早いのがガス火式のもので、カセットコンロ式のたこ焼き器が家庭用ではオススメです。
そして温度勾配をガッツリ効かせるために、たこ焼きの焼き方にも工夫が必要…。
まず、生地はかなり水気を多くしておいたほうが美味しいです。家で作る場合は卵をケチらず、たこ焼き粉に書いてある粉の分量の半分~7割程度にして、卵を倍以上入れましょう。卵不要のたこ焼き粉でも1回分に2個くらい入れます。
水気が多いかな? くらいのシャバシャバのたこ焼き液を作って、そこに紅ショウガも刻んで入れるときに紅ショウガの汁も入れてしまうと風味が出ます。また小ネギも細かく刻んで生地に入れてしまいましょう。またそこに出汁醤油や鰹出汁粉末でもなんでもいいので、生地自体を舐めて「あ、おいしい」というくらいに味付けをしてしまうのも大事デス。
表面はカリカリの中は茶碗蒸し。
これが美味しいたこ焼きの黄金比なので、その状態にするには、生地を入れて焼いて180度ひっくりかえして…というのはやってはいけないのです。かならず90度ずつ、ザツにひっくり返すのがコツです、火力は常に最大にして、表面はガンガンやいて、中は回転させるたびにこぼれるくらいでOKで、3回目くらいの回転のときに周りのバリを中におしこんで、あとはクルクルと廻していけば綺麗なたこ焼きになっていきます。
このときにアイスピックのような道具を使うといいのですが、家庭用たこ焼き機の鉄の部分はせっかくテフロン加工がされていることがあるので、油を減らすこともできるし、表面を傷めない方がいいです。
そこで便利なのが、割り箸をエンピツ削りにつっこんだ専用治具。割り箸を割って、それをエンピツ削りで尖らせて(別にカッターでもいいけど)ピック状にすれば、鉄板を傷つけずにたこ焼きをひっくりかえせるというものです。
そして、表面がカリっとなって何回かクルクルすれば、中が茶碗蒸し状態になって表面はカリカリのたこ焼きになります。ここまでちゃんと作ったたこ焼きは塩で食べても美味しいので、ソースだけでなくいろいろな食べ方で楽しんでみてはいかがでしょう?
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