身の危険は?ロシア大統領選でプーチンに反旗を翻す2人のクセ者

 

実績ある社会主義経営者グルディニン

私は、ロシアの大統領選挙について、「どうせプーチン一強で全然面白くない」と思っていました。しかし、案外面白いです。大統領候補は、平気でプーチンを批判していて、「こんなこと言っても大丈夫なんだな」と驚きました。

ロシアの大統領候補は、「右から左まで」「保守からリベラル」まで、いろいろいます。しかし、「この人たちのおかげで大統領選が面白くなった」と思う候補は、2人です。一人は、FOMの調査で3位につけているグルディニンさん。この方は、「共産党系候補」です(私は、「面白い」といっているだけで、まったく共産主義者ではありません。念のため)。

グルディニンは、60年モスクワ生まれ。95年から、「ソフホーズ・レーニンの代表を務めています。「ソフホーズ」というのは、国営の「ソ連農場」のことで、共産主義が崩壊したロシアでは、すでに「死語」になっています。この用語を聞いて、年配の方は、「なつかしいの~」と思われたことでしょう。

グルディニンが経営する「ソフホーズ・レーニン」は、国営企業ではなく、農業を営む民間株式会社。ロシアでは優良企業として、一種の伝説になっています。従業員の給料はロシア平均の2倍で、社員とその家族の教育費、医療費は全額会社負担。さらに社員は、マンションや家を購入する際、会社から「無利子融資」を受けられるなど、至れり尽くせり。「共産主義の理想を実現している」ということで、その名声はロシア全土に伝わっているのです。

グルディニンは、外交分野について、プーチンを批判していません。「クリミアはロシア領」と断言し、「大統領になったら、ラブロフ外相、ショイグ国防相を留任させる」としています。

問題は「経済政策」。グルディニンは、ロシア経済の苦境について、「新説」を提示している。ロシア国民は、現在の経済的困難について、「米欧日による制裁が原因」と考えています。その通りでしょう。

同時に国民は、制裁の原因となった「クリミア併合」については、「絶対善」と確信している。つまり、「何も悪いことをしていないのに、制裁を主導するアメリカがロシア苦難の原因であり、すべてアメリカが悪い」というロジック。

しかし、グルディニンは、「国民が貧しいのは別の理由もある」と言います。「石油会社が利益をロシアではなくオフショアにため込んでいるのが原因だ」と。そうなのでしょうか? わかりませんが、こういう「わかりやすい説は庶民に受けますね

そんなグルディニンは、どんな政策を主張しているのでしょうか?

  • オフショア利用の禁止
  • 石油会社の国営化(ロスネフチ、ガスプロムは既に「国営企業」。しかし彼によると、これらの企業は事実上、「私物化」されており、「真の国営化」を実現する必要がある)
  • 規制撤廃、減税などによる中小企業支援
  • 公務員給与、年金の大幅増(財源は、オフショア使用を禁止すれば、すぐ捻出できるとか)

そして、最優先課題は貧困層をなくすこと」「国民を豊かにすることと宣言している。これらの主張は、年金生活者、公務員、中小企業、貧困層に受け入れられそうです。実際、ネット投票では、グルディニン、しばしばプーチンを負かして1位になっています。

しかし、日本でもそうですが、「ネットの民」と「一般人」はかなり違うのですね。たとえば、2014年の都知事選。ネットでは田母神先生、とても強かった。しかし、実際の結果は4位でした。

グルディニンさん、ネット世論調査ではしばしば1位になっていますが、街の人に話を聞くと、「誰それ?」という反応が多いです。個人的には、プーチンもグルディニンも1回目投票で過半数をとれず、決選投票になれば、「面白い」と思いますが。同時に、「そんなことはないかな」とも思います。ちなみにグルディニンさんは、こんな顔。

политическая реклама Павел Грудинин. Россия. 2018 г. Моя команда.(YouTube)

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