エリート官僚・佐川氏が真面目に繰り広げた「証言拒否」の茶番劇

 

今年3月15日の参院財政金融委員会で、太田充理財局長は森友決裁文書の改ざん前の原本が、本省の電子決裁システムに保存されていたことを明らかにしている。「本省には残っていない」というのは真っ赤なウソであった。

佐川氏は平成27(2015)年4月30日付の「特例承認の決裁文書」を読んで、どう感じただろうか。

平成26年(2014年)4月28日 (森友学園との)打ち合わせの際、「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください。』とのお言葉をいただいた。」との発言あり。(籠池理事長と夫人が現地の前で並んで写っている写真を提示)

朝日の報道で、小学校の名誉校長に昭恵夫人が就くことも知れ渡った。国会で野党の集中砲火を浴びるのは避けられない。そのさい、この決裁文のままでは大問題になるのではないか。佐川氏に不安がよぎったであろう。

今回の証人喚問において、公明党の竹内譲議員は「(決裁文書を見て)部下に“責任を誰がとるんだ”と怒りを激しくぶつけたのではないか」と佐川氏に問いただしている。佐川氏はこれについても答えなかったが、「なぜこんなことまで書くんだと部下を怒鳴りつけた可能性はある。

朝日のスクープの後、佐川氏の日常は大きく変わった。理財局長はもともと国会答弁が多いポストではない。なのに、森友疑惑が発覚して以降4か月ほどで、62日も国会に呼ばれた。

予算委員会はもちろん、財政金融委員会、決算委員会、国土交通委員会…と、国会開会日は毎日といっていいほどだ。

疑惑発覚後初めて佐川氏が国会で答弁した場は17年2月15日の衆院財務金融委員会だった。

宮本岳志議員(共産党)の「国は土壌汚染の除去費用として1億3,176万円を支払い済みで、その上さらに埋蔵物の撤去費用として8億1,900万円を控除したとすれば、土地をタダで手放したということにならないか」という問いに対し、こう答えた。

佐川氏 「不動産鑑定評価に基づいて時価で売却している。更地の価格からさまざまな撤去費用を控除したものが時価であり、御指摘は当たらない」

佐川氏はこの理屈で押し通すつもりだった。前日までの官邸とのすり合わせでも、OKが出ている。

ところがこの後、福島伸享議員とのやりとりで、安倍首相のあの発言が飛び出した。佐川氏の脳裏に昭恵夫人についての記述がある決裁文書の内容が浮かんだのではないだろうか。

福島議員 「森友学園が安倍晋三記念小学校の寄付名目でお金を集めているということを総理は御存じでしたでしょうか」

 

安倍首相 「私が総理をやめたときに、うちの妻が知っておりまして、私の考え方に非常に共鳴している方で、その方から小学校をつくりたいので安倍晋三小学校にしたいという話がございましたが、私はそこでお断りをしているんですね。…いずれにいたしましても、繰り返して申し上げますが、私も妻も一切、この認可にもあるいは国有地の払い下げにも関係ないわけでありまして…」

注意すべきは、福島議員の質問に対して、安倍首相は二度にわたり「私も妻も一切関係していない」と繰り返していることだ。

それは、感情的になってとっさに出た言葉ではなく、あらかじめ秘書官と十分に打ち合わせて、「強気を押し通そうと決めていたからこその発言ではないか。

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