エリート官僚・佐川氏が真面目に繰り広げた「証言拒否」の茶番劇

 

安倍首相の発言でもわかるように、安倍夫妻と森友学園の関わりは「総理をやめたときにまでさかのぼる。第一次安倍政権の終焉は2007年8月だ。同学園の籠池理事長は安倍氏のことを「偉人」とまで賞賛し、自分の幼稚園の園児たちに教育勅語の暗誦をさせている。

幼稚園だけではなく、同じ教育方針の私立小学校ができることを安倍夫妻が望んでいたのは間違いない。

その思いをいちばん知っていた今井尚哉秘書官が、同じ経産省出身の谷査恵子氏を夫人の秘書役に据え、財務省との間をとりもってきた。夫人と森友学園との付き合いは十分に把握していたはずだ。

安倍首相が「関係していない。関係があるのなら総理も国会議員も辞める」とまで言い切ってしまったこと。それは今井氏にとって意外ではなかったはずだ。

今井氏は経産省官僚としての長い経歴から、近畿財務局の職員がそこまで踏み込んで決裁文書に経緯を書き綴るとは思ってもみなかったにちがいない。だから答弁の打ち合わせで、「関係があるのなら総理も国会議員も辞める」と安倍首相が大見得を切る気だと分かっても止めなかったのだろう。

一方、佐川氏はあの決裁文書をそのままにしておけないと、この安倍発言で強く思ったのではないか。ひょっとしたら、今井氏に決裁文書の中身を知らせ、対応を協議したかもしれない。

3月26日の参院予算委員会で財務省の矢野康治官房長は公文書改ざんに関し総理大臣や財務大臣の指示はなかったと明言したものの、「官邸の指示はなかったのか」という問いには「あったという事実には突き当たっておりません」とぼかして答えた。

佐川氏は官邸の指示を否定しているが、矢野官房長の言い方からみると、秘書官や補佐官あたりからの働きかけがあった疑いは残る。

今井秘書官と最後に会ったのはいつかと聞かれた佐川氏は「理財局長になったばかりの頃、総理にご説明にあがったとき、そばにおられました」と答えたが、会うことがなくとも、電話やメールで要求や指示はできる。

一部の自民党議員のように、今回の佐川証言で、安倍夫妻の関与はないことが証明されたと喜ぶのはまだ早い。政府が公文書を改ざんするのが民主主義にとっていかに深刻なことなのか。真相解明はもちろん、国民の関心を持続するためにも、昭恵夫人や迫田英典元理財局長の証人喚問がどうしても必要である。

image by: 宮本たけし - Home | Facebook

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