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韓国紙が報じた、北が気持ち悪いほど融和ムードを演出しだした訳

平昌五輪に始まった北朝鮮の「平和攻勢」とも言える動き。4月2日には金正恩氏が平壌で行われた韓国芸術団の公演を鑑賞、その後、韓国人アーティストたちと交流するなど、ほんの数ヶ月前には考えられなかったような状況となっています。何が北をここまで劇的に変化させたのでしょうか。無料メルマガ『キムチパワー』で韓国在住の日本人著者が、地元紙に掲載された「一つの答え」を紹介しています。

春がやってくるのか

チョ・ヨンピルやレッドベルベット(Red Velvet)など、韓国の有名歌手ら200人近くが訪朝し4月2日・3日に公演を行った。

2日の公演には金正恩夫妻も観覧し、公演の最後に歌手らと写真も撮った。金正恩が2列目に並んで写真を撮るのは異例のことという。彼は常に1列目のど真ん中を占める。歌手らと親しげに握手をかわし、「ありがとうございます(カmサハmニダ)」と言ったという。

文在寅政府発足から三か月後の2017年8月、北朝鮮はソウルを火の海にすると脅迫した。秋には核実験とミサイル発射を続けざまに行ない、いつ戦争が起こっても常にスタンバイの状態だった。

一体何が北朝鮮をこのように劇的に変えたのだろうか。朝鮮日報に一つの答えが出ていた。

北朝鮮サッカー代表チームのアンデルセン監督が最近、「経済的状況」を理由に辞任するという意向を明らかにしたというのだ。2016年5月から北朝鮮のサッカーチームを率いてきたアンデルセン監督は、インタビューで「北朝鮮の経済的状況が良くないのでこれ以上とどまることは困難」と語った。

ロイター通信は、アンデルセン監督が北朝鮮を離れる理由として、国際社会の対北朝鮮制裁が北朝鮮スポーツにまで影響を及ぼしたためと分析した。

金正恩は、サッカーマニアとされているが、外国人監督を正当に待遇できないくらい大変な状況だということだ。昨年東アジアサッカー大会に参加した北朝鮮チームは、制裁ゆえに賞金をもらえなかったのはもちろん、帰国プレゼント一つ買うこともできなかった。

韓国鉱物資源公社によると、昨年、北朝鮮の対中鉱産物輸出額は6億4,000万ドルで2016年に比べて56%減少した。中国からの石油輸入も多くの制限を受けている。今の南北融和ムードの中でも国連安保理は北朝鮮船舶27隻を含む、計49個のリストを対北朝鮮制裁リストに追加した。

ソウルを火の海にするとか、核1発で南を叩き潰すなどという暴力団のような表現ばかりしていた北朝鮮が、そういった荒っぽいことばをしまいこみ、微笑攻勢を見せるようにさせたのがまさに、このような徹底した圧力ゆえだ。

北朝鮮が自ら口に出した非核化を実際の行動に移すようにするパワーも、こういう一連の制裁以外にない。これから南と北との間でどんなことがあるか誰にも分からない。しかし制裁さえぶれることなくやっていけば、北朝鮮の核は無くすことができる。

朝鮮日報の記事はだいたい上のようなものだ。経済制裁がこれだけのパワーを発揮するものなのだろうか。たぶんそうなんだろう。

しかし筆者は、これだけではないようにも考えている。ルーマニアのニコラエ・チャウシェスクが、1989年の12月にルーマニア革命の中で革命軍の手によって妻とともに公開処刑された事件があった。現代における衝撃的な事件として記憶にとどめている方は多いと思う。独裁者として思うがままの生活をしてきた人間だ。1971年には、北朝鮮に来て金日成とも会っている。北朝鮮とはあながち縁のない人間ではなかった。北で暴動が起こったら、まちがいなく第二のチャウシェスクになることは必定だ。民衆たちもだんだんいろんなことをわかるようになってきている。金もないから、民衆たちにええかっこもできない。一旦どっかでほころびが見えたら、その時が最期のときだ。

金正恩は、非常にクールな部分もあるもののようだ。英語、ドイツ語など外国語もネイティブレベルで数か国語操るほどの頭脳を持っているらしい。そのクールさが、このままいったらやばいと思わせたのかもしれない。アメリカの攻撃でイラクのように潰されるか、民衆の蜂起により第二のチャウシェスクになるか。南や米国に向けて核をぶっぱなしたとしても、自滅することはわかりきっている。死をかけて最後の瞬間までやってやるべとは考えていないということなのだろう。幸いなるかな。

4月末の南北首脳会談、そして5月の米朝首脳会談と朝鮮半島だけに限らず地球の運命をも左右するような重要な流れが待っている。

奇しくも今回の歌手たちの平壌公演のテーマは、「春がくる」(ポミオンダ)である。半島に春が来るのだろうか。

 

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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