「米中貿易戦争は回避される」国際交渉人がそう判断した根拠

 

トランプ大統領による鉄鋼製品を始めとする関税措置により、火蓋が切って落とされたかのように報道される米中貿易戦争。世界一・二の大国は、このまま本格的な「戦闘状態」に突入してしまうのでしょうか。元国連紛争調停官で国際交渉人などの顔を持つ島田久仁彦さんは、自身のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』の中で、米中両国の要人たちの発言等を分析し、「交渉人の目線」で米中貿易戦争の今後を予見します。

時事問題ギリギリ解説:米中貿易戦争の行方とその影響

アメリカ・トランプ大統領が予てよりアメリカが抱える累積貿易赤字を、中国、日本、欧州諸国などの対米貿易政策と待遇の不均衡の責任と批判してきましたが、ついに本格的な措置に乗り出す気配を見せました。

日本も対象になってしまった鉄鋼製品を始めとする関税措置は、その一例ですが、やはり規模でもその威力でも、無視でないのは、米中間の貿易戦争ともいえる対抗措置の応酬でしょう。

トランプ政権が、4月初旬に中国からの輸入に対しての制裁措置の“可能性”に言及したことに端を発し、そして通商法第301条をベースに、中国に対して知的財産権の侵害を訴える動きに出ました。中国もすぐさま米国製品の輸入に対しての制裁を発表し、対抗する姿勢を示しました。

そして、その後、トランプ大統領は、500億米ドル規模と言われた当初の制裁規模に加えて、1,000億ドル規模の制裁を追加する可能性に言及し、中国もすぐに追加の対抗措置の可能性をほのめかしています。もし、このまま、世界第一位と二位の経済国間で、貿易制裁の応酬が続き、制裁が実際に発動されたら、世界経済に与える影響は決して小さくはないでしょう。

日本の河野外務大臣も「両国に自制を求め、常識的な行動をとることを望む」と発言していますし、世耕経済産業大臣も「パートナーとして両国に引き続き働きかけをする」と、問題を深刻にとらえているようです。

米中両国経済への負の影響は否めませんが、それ以上に悪影響を被るのは、タイやフィリピン、インドネシアといった米中両国と貿易関係がありそれぞれの国家経済の基幹となっているような東南アジア諸国でしょう。そして、日本の経済も例外ではないかもしれません。

もし、恐れているシナリオが事実になってしまったら、好調を保っている東アジア、東南アジア経済の成長をはじめ、世界経済の復調にも水を差すことになりえません。各国の政府・メディアはこぞってその恐怖の可能性について発言しています。

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