世の中にはさまざまな有名な歴史的書物が存在していますが、その内にはいわゆる「偽書」と呼ばれるものも多数あると言われています。今回、無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが紹介しているのは、そんな「偽書」を列挙した一冊。歴史の教科書にも掲載されている有名な書物も「偽物」とされている等、衝撃的な内容となっています。
『世界を動かした「偽書」の歴史』
中川右介・著 KKベストセラーズ
中川右介『世界を動かした「偽書」の歴史』を読んだ。「偽書」には「フェイク」との読み仮名がふってある。この本では29もの古今東西の偽書を挙げ、コンパクトに紹介されている。半分は知らなかった。半分は書名だけを知っていたのと、少しは読んだことのある物件だった。
例えば、シオン賢者の議定書、マリー・アントワネットの手紙、東方見聞録、東日流外三郡史、死海文書、竹内文献、先代旧時本紀大成経、空飛ぶ円盤実見記、秘密の教義、コンスタンティヌスの寄進状、シェイクスピア文書、ウラ・リンダ年代記、未来記、台湾誌、武功夜話………偽書カタログとして楽しめた。
それでも、よく知っているほうだと思う。大陸書房のUFO、ムー大陸、四次元の世界などを愛読し、かつては裕福だったので手当たり次第に本を買い漁った。今思い返すとけっこう稀少で濃厚な文献まで入手していたのだから、そっちへ行っていたら今のわたしはない。結局全部を手放したが、少し惜しかった。
大和朝廷より遥か前、日本には現在よりすごい科学文明が発達しており、世界を支配していた。といった超古代の日本史が記録された文書は日本各地にたくさんあり、「古史古伝」というジャンルを築いている。「古事記」でさえ偽書説がある。なぜなら、「古事記」が完成してから数世紀にわたり、この史書について書かれた文献が存在しないからである。「日本書紀」でも触れていない。
「日本書紀」は797年に完成した「続日本紀」に記録があるから間違いはない。もっとも「日本書紀」の存在も謎で、なぜ天武天皇の命令で同時期に二つの歴史書が作られたのか分からない。大きく異なるのは出雲神話の扱いで、紀には描かれないが、記では全体の1/4を占めている。記紀でキャラクターが大きく違うのがヤマトタケルである。紀は公的、記は私的という説もあるようだ。
参考文献一覧が巻末にある。50件超で、なかなか怪しげなのもあって楽しい。29の偽書の説明はコンパクトで、ちょっと物足りないがタイトルを知っただけでも収穫があった。筆者は音楽の専門家らしく、ショスタコーヴィチの証言、ショパンのラブレター、クライスラーの名曲という3編はとくに面白く読めた。偽書には何ともいえない魔力がある。しかし直球でアホな偽書もあるのだ。
朝日新聞といえば、従軍慰安婦をめぐる報道や、福島第一原発事故での吉田調書など、記者が大ウソを検証しなかったり、記者の解釈が恣意的だったりで大いに問題であったが、でっちあげや捏造とまではいえない。しかし、半世紀前には完璧な捏造記事を掲載していた。有名な「伊藤律架空会見事件」である。
日本共産党の指導者の一人、伊藤律が当局の目を逃れて潜伏していた時期に、朝日新聞神戸支局の記者が山中で接触し、単独インタビューに成功したというふれこみで、センセーショナルな記事が掲載された。伊藤の表情が臨場感を持って描かれ、記者との一問一答まで紹介されていた。朝日新聞は3日後に謝罪社告を出し、記者は退社、支局長は依願退社、大阪本社編集局長は解任された。
これが昭和(戦後)の三大誤報の一つになり、「サンゴ汚したK・Yってだれだ」の珊瑚礁記事捏造事件で、朝日新聞は平成の三大誤報の一つという栄冠も得た。昨年からはモリカケで偽書まがいな報道をし、いまは対話で朝鮮半島の非核化が生まれるとか無責任なことを書く。生き残りたいなら、真実の報道をすることだ。都合が悪いと言論で立ち向かわずに即裁判、ヘタレな朝日だ。
編集長 柴田忠男
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