「未来の話をする販売員は売れる」、そう話すのは無料メルマガ『販売力向上講座メールマガジン』の著者で接客販売コンサルタント&トレーナーの坂本りゅういちさん。さらに坂本さんは、その反対である「思い出」を聞くことも重要だと語ります。なぜ、買って欲しい商品の話ではなく、いま持っている商品の話を聞くほうが良いというのでしょうか?
“思い出”を聞く
お客様に商品を買ってもらうとする時、売れる販売員は、未来の話をします。「この商品を使うことでどうなれる」とか、「この商品を使ってどんなことをしたいか」などのような将来の話で、お客様の気持ちを盛り上げるわけです。
しかし、本当にお客様の気持ちを掴むためには、“思い出”についての話も忘れてはいけません。この“未来の話”と“思い出の話”を活用できる販売員は、お客様との信頼関係がガッチリ固まります。
ここで言う“思い出”とは、お客様と商品との思い出のことです。
例えばですが、長年使っていた靴が古くなってしまったので、そろそろ買い換えようというお客様がいたとします。こういうお客様がいらっしゃった場合、先の話しかしない販売員は、新しい靴を手にしながら、「この靴は歩きやすいんですよ」「このブランドは今人気なんですよ」的なお話をたくさんしてくれます。
これはこれで良いことなのですが、お客様に信頼してもらえる販売員は、まず、お客様が使ってきた商品の話をするわけです。
「今まで履かれていたお靴は、どこで買われたんですか?」
「お気に入りだったんですか?」
「どのくらい履かれていたんですか?」
など、その靴との付き合いについて聞いてくれます。すると、お客様によっては、本当にその商品との思い出を持っている人もいます。
「そうなんです。お気に入りだったんですけど、さすがにもう限界かなと思って…」
「主人にプレゼントしてもらった靴で…」
みたいな思い出が実際にあったりするんですね。そんな話を聞いてくれて、共感してくれる販売員には、お客様は心を開いてくれますし、「この人の言うことなら信用できる」と思ってくれる可能性も高まります。
実はこの話、実際にあった話です。
あるお客様が、お店にいらっしゃって、自分が履いている靴と全く同じ靴を見ていました。販売員は買い替えだろうとは思ったものの、詳しく話を聞いてみると、今履いている靴は、奥さんと旅行に行った時に買った思い出の靴だったのです。古くなってしまってもう履けなくなってきたものの、どうしてもその靴が好きで、同じものを探して、見にきたということでした。
その話を聞いた販売員は、とても共感してくれて、決して安くはない、まったく同じ靴を買おうとする背中を押してくれたんですね。以来、そのお客様は、靴が古くなる度に、何度もその靴を買いに、同じ店に通っているのです。
お客様が使ってきた商品には、そのお客様しか知らない思い出があったりします。特に思い入れのないものももちろんあるでしょうが、中には、特別な思い出のあるものも存在するのです。そんな話を聞いてくれて、共感してくれる販売員に出会うことは、お客様にとって、とても貴重なことでもあります。
販売員は、未来の話ばかりをしがちですが、それだけでは、お客様が本当に抱えている気持ちを知ることはできないかもしれません。お客様が使ってきた商品に関する話を聞くためには、どんな質問をすべきでしょうか? そこにお客様の心を掴むポイントがあるかもしれません。
今日のおさらいです。
- お客様が使ってきた商品(モノ)に関する思い出を聞いてみる。
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