アメフトの悪質な反則タックル問題を巡り呆れる他ない会見を開いた日大、責任逃ればかりを繰り返しているようにも見える我が国の行政府のトップ……。今問題となっているのが、「指導者」としての資質です。では、優れた指導者とはどのような人物なのでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者の梅本泰則さんが、松下幸之助氏が著した一冊の本からそのヒントを探っています。
優れた指導者になるには条件がある
国も企業もスポーツも、その組織の指導者によって良くも悪くもなります。政治家や官僚、企業経営者、スポーツの監督などによってもたらされる事柄をみれば、そのことがよく分かるというものです。ですから、優れた指導者によって立派になった国や企業やスポーツチーム・組織があります。
では、優れた指導者とは、どんな人物をいうのでしょう。結構むつかしい質問ですよね。
私の書棚に、一冊の本がありました。本のタイトルは『指導者の条件』。著者は、あの松下幸之助翁です。この中には、102の「指導者の条件」が書かれています。そこで、全部はご紹介できませんが十数個ピックアップすることにしました。これだけでも、優れた指導者になるヒントがありそうです。
まずは、指導者の基本的な心構えに関するものをいくつか紹介します。最初にあげる「条件」は、
指導者はつねに理想を描き、大きな志を持たなくてはならない
当然ですよね。ものごとは、ここから始まっていきます。理想も志もない指導者は、組織を立派にすることはできませんし周りもついていきません。
次の条件は、
指導者には、一つの指導理念がなくてはならない
これは、憲法や企業理念ということではなく、組織を引っ張っていくときの考え方を指しています。生きた国家経営、企業経営をするには指導者の目指す姿を明確に持つということです。そして、時々の情勢に合わせて具体的な方針を打ち出すことが指導者には求められると、松下翁は言っています。
指導者の態度
3つ目は、
指導者はたえず自問自答していくことが大切である
例えば、指導者は自分の指導理念や方策に間違いはないか、自分の力を正しく把握しているか、といったことをいつも問いかけなければいけません。このことは、出来そうでなかなか出来ないことです。ですから、
指導者はつねに人の意見に耳を傾けなくてはならない
人の意見を聞かない指導者は、独断になるからです。そうした指導者からは、人は離れていきます。
さらに、
指導者はいいことよりも悪いことを喜んで聞くようにしたい
とあります。喜んで、という姿勢が大切ですね。
次に、「謙虚な態度」をテーマとした指導者の条件を3つ。
指導者は地位が高くなればなるほど謙虚でありたい
高い地位に慣れると、ついついごう慢になり、横柄になってしまうことがあります。最近の政治の世界では、よく見かけますね。
失敗の原因はすべてわれにありと考えるべきである
ものごとがうまく行かなかったとき、人は自分以外に原因を求めがちです。ほとんどの場合、失敗は自分のうちにあります。心したいことです。
指導者は世間のこわさを知り身を正していかなくてはならない
指導者になると、直接叱ってくれたり注意をしてくれる人がいなくなります。ついついこわさを忘れがちです。裸の王様になってはいけません。
では最後に、「人の育て方」に関する指導者の条件を5つ。
指導者の人の育て方
指導者は人をいつくしみ人びとの幸せを願う心が必要である
そうなんですね。企業においては、社員の幸せを願う心があってこそ、人が育ち、良い組織になっていくのです。政治でもスポーツでも同じことだと思います。
指導者は人を信頼し思い切って使うことが大事である
人は疑いの気持ちで接すればそのように反応し、信頼の気持ちで接すれば、そのように反応するものです。指導者は、信頼を裏切られても本望だというくらいの姿勢で人と接するべきなのでしょう。
指導者に徳があってこそ、はじめてもろもろの力が生きてくる
権力や金力、知力といったものだけに頼っていては人は動かせません。指導者は、徳を高めてこそ人がついてきます。そんな指導者に育てられた人は、幸せです。
指導者は人情の機微に則して事を行わなければならない
これは、なかなか難しいことです。実際に、多くの人と触れ合い、多くの体験を積む必要があります。素直な目で人間を見て、その心の動きを知る力が必要です。その中から、優れた人が育つのでしょう。
指導者は自分より優れた才能の人を使うことが大事である
本当に優れた指導者は、自分の力を知っています。そして、自分より優れた人を使うことができます。素直な心を持っているからです。往々にして、自信過剰な指導者はうまく人が使えません。
いかがでしょうか。以上「指導者の条件」から、選んでみました。ぜひ、この機会に全部読んでみて下さい。優れた指導者になるために必要なことが書いてあります。参考になるのではないでしょうか。この本には、まとめとしてこんなことが書いてあります。
指導者が正しい指導理念、正しい使命感、正しい信念を持っていれば指導者の思うままにその団体は動き、成果も生まれ、発展も生まれていく
そして、
素直な心なしには、どんな教えも生かせない
その通りです。
■今日のツボ■
- 指導者が優れていれば、組織は栄える。
- 「指導者の条件」(松下幸之助著)は、一読に値する。
- 優れた指導者の要諦は「素直な心」である。
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