米朝会談中止へ。トランプが態度を変えた理由に「中国」の影

 

根本理由は、相互不信

根本理由ですが、RPEで大昔から書いている「相互不信」ですね。

1994年6月、北朝鮮は、NPTからの脱退を宣言した。同年10月、米朝合意。アメリカは、北に軽水炉、食料、重油を提供。北は、NPTに復帰し、「核開発凍結を約束しました。ところが、北はウソをついて、核開発をつづけた。2003年、北朝鮮は、NPTを脱退。6か国協議がはじまりました。05年2月、北朝鮮、「核保有宣言」。同年9月、北「すべての核兵器を廃棄する」宣言。

現状を見れば、北がウソをつきつづけてきたことは明白。金正恩は、「お父さんのように上手にウソをつこう!」と考えているように見える。つまり、制裁を解除させ、経済支援をゲットし、核兵器は保有しつづける。

ところが、日米もバカではありません。安倍総理やボルトンさんが、「非核化が実現するまで、制裁解除はなりませぬぞ!」と繰り返す。それでトランプさんも、「俺はだまされない!と決意している。

一方、金正恩の気持ちもわかります。03年にはじまったイラク戦争は、全世界に衝撃を与えました。まず、国連安保理で拒否権をもつ常任理事国5か国のうち、フランス、ロシア、中国が戦争に反対した。しかし、アメリカは、国連安保理を無視して戦争をはじめました

しかも、開戦理由、すなわち「イラクには大量破壊兵器がある」「フセインはアルカイダを支援している」は、二つとも大うそ」だった。

イラクの悲劇を見たカダフィは、考えました。「反米の独裁者は殺される。素直にいうことを聞こう!」そして、03年12月、彼は「核開発放棄」に同意したのです。しかし、11年、アメリカが支援する反体制派に殺されました

シリアのアサドは、フセインとカダフィの死から教訓を得た。彼は、11年からはじまった内戦で、ロシア、イランの支援を受け、欧米、サウジ、トルコなどから支援を受ける「反アサド派」と徹底的に戦っています。彼は、「アメリカに妥協すると殺される」と知っている。

金は、どんな教訓を得たのでしょうか? フセインの死からは、「核をもたない反米独裁者は殺される」という教訓。カダフィの死からは、「アメリカを信じて核開発をやめると殺される」という教訓。

私は、金にまったく同情しませんが、重要問題でウソをつきつづけるアメリカが状況を複雑にしていることは否定できません。もしカダフィが今も健在であれば、金の態度も違っていたことでしょう。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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