「人類最後の30年」に日本の自衛隊がどのような形でAIを導入していけばよいのか、それがこの本のテーマになる。現状の自衛隊は、米軍や中共軍の後ろ姿すら霞んで見えなくなっている。いかに日本の自衛隊のAI装備が世界から遅れに遅れているかを、じつに詳細に描いているから悲しいったらない。
自衛隊は日本最大のサイバーエンジニア雇用者となれ、という提言が素晴らしい。未来の戦争が需要している人材は「電子特技隊員」である。陸海空それぞれに、ソフトウエアをその場でなんとかできる、広義のシステムエンジニアが必要だ。ドローンのプログラム仕様をカスタマイズする、敵のサイバー攻撃を見破って臨機の対策を講ずるとか、戦場の要求に応える人材である。
「電子特技隊員」だけの特別な採用枠を用意する。潔く「戦闘要員」としての資質を一切求めない。陸自の基地通信隊、海自のレーダー担当、空自の早期警戒管制機要員などは全員が「電子特技隊員」でいい。世界中の軍隊で、広義のコンピュータ保守、ソフトウエア開発、情報処理と管理、デジタル通信運用、サイバー戦対策のために、人がいくらいても足りない状態である。
2018年1月、キッシンジャーは連邦議会上院の軍事委員会に招致され「今はAI開発競争が、従来の国家間競争の様相を一変させようとしている」と警鐘を鳴らした。2017年9月、プーチンは全ロシアの理工系学生に向けて「AI分野で先にブレークスルーを成し遂げた者が、次の世界を支配する」と煽った。内外の反日勢力がAIをどう悪用してくるのか、読むほどに怖い本だ。
編集長 柴田忠男
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