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トランプの仕掛けた世界貿易戦争、漁夫の利で「日本優位」な理由

ナスダック指数が過去最高値となってバブル状態のアメリカ経済は、この後のG7、FOMC、ECBなど政治経済系会議を経た後も続くのでしょうか。メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは自身のメルマガで、トランプ大統領は自国だけ保護する貿易姿勢を崩さずに11月の中間選挙まで株価を上げて人気維持を目論んでいると指摘。今後の発言次第では株価が大荒れになる可能性があると厳しい見方を示す一方、最後に一番得をするのは日本だと結んでいます。

米国経済の今後

今週は、G7FOMCECB委員会など政治経済系の会議があり、株価の転換点になる可能性もある。主な議題は、トランプ大統領の保護貿易と経済政策が議論されることになる。それを検討しよう。

現状の米国経済

ナスダック指数は過去最高値になり、ダウ工業品指数も最高値に近づいている。米国市場はリスク・オン相場になっている。適温相場が続ているからである。金利が安くインフレが起きない状態で景気が好調な状態であるから、会社経営には非常に良いのである。

しかし、それでも徐々に米国の金利上昇でドル高になり、新興国から投資資金が逆流して、アルゼンチンはとうとう、IMFに救済を申し出ているし、トルコもエルドアン大統領は、中央銀行が金利を上げすぎで経済がおかしくしているから、当選したら中央銀行の独立性を制限するいというので、トルコ・リラが売り込まれている。

それでも、トルコリラ防衛のためにトルコ中央銀行は金利を1.25%上げて、金利を17.7%にして通貨安を止めている。次にブラジルが危ないと言われている。このように、新興国経済に黄色信号が灯ってきた。

米FOMCの6月の会議で、0.25%上げ金利を1.75ー2%にすることはほぼ確定しているが、セントルイス連銀のブラード総裁は、5月14日にこのまま、短期金利を上げたら逆イールドになると言い、利上げに反対とした。現実、2年物金利2.5%であり、10年国債2.94%とフラット化してきている。

ブラード氏の発言は、トランプ大統領の代弁と言われている。トランプ大統領は、法人税減税関税UPなどのインフレ政策を取っている。その結果である行き過ぎたインフレを止めるFRBの利上げも反対している。このため、バブルを醸成させることになる。株価はバブルが破裂するまで上昇する。どうしてかというと、11月の中間選挙までは、株価を上げたいようである。

景気が良いのにトランプ大統領の利上げ反対は、経済ロジック的にはおかしいが、中間選挙優先のトランプ氏には正論は通じない。
このため、保護貿易ドル高バブル経済と米国は当分、浮かれた状態が続くことになる。その上に金融機関への統制も緩めてバブル景気を一層高めている。

しかし、11月以降相場は大荒れになると読んで、ヘッジファンドの取引量が増えて、普通の投資家は様子見になっているが、ボラティリティは低下したままになっているようだ。

一番危ないバブル醸成状態に米国はなっているが、2008年と同じようになるかどうかはわかない。もっと大きいかもしれない。

1. 貿易戦争

しかし、米国庶民の生活は、諸外国の製品に関税を掛けてインフレにするために苦しくなるし、ホームレスの数が過去最高になっている。製造業がなくなり、サービス業中心経済になり、低賃金の就職先しかないことになっている。自殺者数も上昇し、年間4万人もいる。

このため、ドル高にして雑貨類の輸入品の価格を下げ、保護貿易にして機械類など米国産業保護分野は、輸入させないようにするようである。

保護貿易で、海外製品を米国市場から追い出すことで製造業の職を作るとしている。しかし、反対に米国製品も海外から締め出されることになる。これで職が少なくなる。その結果、世界的な貿易戦争になることが確実である。世界全体で製造の職が少なくなる方向に作用する。貿易戦争に勝者はいない。歴史の鉄則である。そのロジックもトランプ大統領は無視して感情論で保護貿易政策を推進するようである。

このため、鉄鋼アルミに関税を掛け、次に輸入自動車としているので、今後も米国の保護貿易は一層、激しくなるし、その反対に報復関税で米国製品は売れなくなる。その隙間を日本製品が埋め合わせることになるような気がする。米企業没落で、日本企業が隆盛になる。

米企業製品の品質向上や環境エコの努力がなく、日本製品はいろいろな使う人の要求を実現してきたことで、売れている。しかし、その努力がない米国製品には買い手がいなくなる。このため、自動車の排ガス規定を緩めて、他国では売れない自動車を作るようである。自国産業保護ということは、他国に輸出できないことになる。

シリコンバレーでもインド人技術者を追い出して、技術的なイノベーション力が落ちてきて、深センに負け始めている。このため、中国の先端技術開発を阻止するが、上手くいかないと思う。

しかし、単純に米国の関税UP非難はできない。カナダは、自国に入る農産物に270%の関税を掛けているし、日本も輸入農産物に高関税を掛けている。米国が二国間での不均衡を協議したいというのは、ある意味で正当な要求ではある。米国だけ率先して自由貿易にしたが、他国は保護貿易のままという不条理が存在していることが問題なのである。

2. 欧州経済

欧州ECBドラギ総裁は、12月に量的緩和を中止するとしている。イタリアとスペインで、ナショナリズム政党が政権に着き、移民政策などの見直しを行い、今は量的緩和で、自国国債をECBが買い続けているので、財政赤字が許されているが、ドイツ連銀のイェンス・ヴァイトマン総裁が次期ECBの総裁になると、引き締めになり、EU離脱になる可能性も出てくると見る。

ドラギ総裁が量的緩和を終了する理由は、次期総裁の引き締めと整合性を取るためであり、欧州の景気が良いわけではないのに12 月に量的緩和を中止するしかないようである。

米国とは反対に、景気が良くないのに金融緩和の出口に向かうことになる。このため、ユーロが強くなってきた。景気が弱いとナショナリズム政党には有利になるので、ここでもおかしなことになっている。

その上に、米国の保護貿易で益々、欧州製品が売れなくなり、景気が悪くなる。そして、米国製商品を制限するので、日本製品が売れることになる。米国は日本のために保護貿易をしているようなことになる。

3. G7サミット

安倍首相は、米国の保護貿易を擁護はできないが非難をせずに、トランプ大統領を支持するようである。安倍首相は、議論を中国・ロシアの国際貿易ルール順守を問うことや選挙干渉阻止に向けるようだ。

この準備会議を先週日米欧のOECD3極通商会議で話し合われている。G7財務相中央銀行総裁会議の米国非難一色にはしないようにしたいのであろう。

しかし、貿易制限の非難が多く出て、米国と欧州は2週間以内に貿易問題を協議する枠組みをつくることで合意した。やはり、結果的には6国と米国の対立という構図になってしまったようだ。

日本は輸入自動車関税で大きな損害を出すが、世界的には米国への報復関税で米国製品が日本製品に代替されるので、全体的には日本にとっては、トントンになるはずである。日本の自動車メーカーはすでに米国に工場を持っているので、生産移転をおこなうことになる。一番問題なのが、メキシコとカナダの工場であろう。メリットがなくなるからだ。

そして、一番貿易戦争で損をするのが、米国であることは確実である。この条件は、米国だけが保護貿易で、それ以外の国は自由貿易方向に向かう体制を守ることである。このためには、米国を孤立化にさせることで、一方、米国以外の国が保護貿易に追従しないことである。

保護貿易をやってみて、トランプ大統領に米国だけが大損になることを実感させることだ。今のトランプ大統領にロジックは通用しないので、議論ができない。とんでもない大統領を米国民は選んだものである。

米国貧困層、中間層没落の影響で、ルール・チェンジを訴える論理無視の感情論だけの大統領が出てきたようだ。

そして、一番得をするのが、まじめな努力をする日本になる。歴史の皮肉だ。

さあ、どうなりますか?

image by:  Joe Seer / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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