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面接でTOEIC800点と申告。同レベルの仕事を振ったらパワハラ?

面接で「TOEICで800点とりました」と自己申告してきた社員候補。それだけ優秀ならばすぐに採用! と思ってしまいがちですが…、まず会社はそれが本当か確認すべきとするのは、特定社会保険労務士の小林一石さん。小林さんは自身の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』で、自分の能力を過大に申告した社員にそのレベルの仕事を振ったところ、「パワハラ」として訴えられたという事例も紹介しています。

「TOEIC800点」と自己申告の社員にそのレベルの仕事を強要するのはパワハラになるのか

パワハラの種類の1つに「過大な要求」というのがあります。出来もしないような過大な目標をノルマとして強制すること、です。

例えば、つい先日に芸人のジョイマンが「単独ライブのチケットが412枚売れなかったら解散する」と宣言して、チケットを完売したことが話題になりましたが、もしこれを事務所が「412枚売れ!」と強制したらパワハラになるということです。

ジョイマン、単独ライブチケット完売で解散回避 ファンに「ありがとう、オリゴ糖」

ただこれは、人にもよります。例えば、わずか数分で数万人規模のチケットが完売すると言われる嵐や関ジャニ∞であれば412枚は過大な目標とは言えないでしょう。つまり、人によってその過大さは違うということです。

では、これが仕事であればどうなるでしょう。それについて裁判があります。あるソフトウェア販売会社で「能力以上の過大な仕事を強要された」として、社員が会社をパワハラで訴えました。その社員が言うには、

などを受け、退職せざるを得なくなったというのです。さて、みなさんだったらどう感じるでしょうか。

これらが本当に行われていたのであれば「典型的なパワハラだ」と感じられる人も多いかも知れません。実は、実際にこれらの行為は「行われた」として裁判でも認められました。

では、その裁判の結果はどうなったか。

「パワハラとは認められない」として、会社が勝ちました。行為は行われたとして認められたにもかかわらずなぜパワハラとは認められなかったのか? それは、この社員の採用面接時の申告に問題があったからでした。この社員は採用面接の時に

などと申告していながらも実際はそのスキルに達していなかったのです。そこで裁判所は次のように判断をしました。

いかがでしょうか。ここで実務的に重要なポイントがあります。それは採用時の確認の徹底です。今回の裁判では結果として会社が勝ってはいますが、裁判に対する手間(お金や時間)は相当かかっているはずです。また、もしその社員に対する言い方や対応の仕方が少しでも違っていたら、「社員が会社の期待する役割をしていなかったとしてもその言い方(対応の仕方)には問題がある」と、会社が負けてしまっていた可能性もあります。

そうならないために「採用時の確認の徹底」は必ず必要です。例えば、「TOEIC800点」と履歴書にあった場合、実際にTOEICの書面などでその事実を確認している会社はどれくらいあるでしょうか。また、「〇〇(ソフトウェアなど)中級程度」で実際にそのスキルの確認をしているでしょうか(実際にそのソフトウェアを操作してもらうのは難しいにしても「本当にその程度のスキルがあるのか」という視点で質問するだけでも全く違います)。

正直、面接という限られた空間、時間でスキルを確認するのには限界はあります。ただ、面接では「虚偽ではないにしても過大にアピールする人は多い」という事実は、採用を経験している人であれば誰もが感じていることではないでしょうか。多少、面接時間が長くなったり、回数が多くなったとしてもスキルの確認は徹底したほうが良いでしょう。

みなさんの会社で「採用面接」について見直してみる点は無いでしょうか。

image by: Shutterstock.com

特定社会保険労務士 小林一石この著者の記事一覧

【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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