服などを見に入ったお店で、「いま流行ってるんですよ」と声掛けされたことがある方、多いのではないでしょうか。無料メルマガ『販売力向上講座メールマガジン』の著者で接客販売コンサルタント&トレーナーの坂本りゅういちさんは、そんな言葉を発する店員にかぎって「流行り」というものの本質を理解していないとして、「流行と地域性」について興味深い話を紹介しています。
流行りと情報と地域性
「今はこれが流行っているんですよ」
特にアパレルショップなどで、よく耳にする、接客中の会話のひとつです。流行というのは、その時代や時勢の中で、一時的に世間に広まるもの。商売においても、とても重要な要素で、今の流行を敏感に察知して、お店づくりや営業活動に活かしていくのは、必要なことですよね。
昔と比べて、情報の伝達スピードがめちゃくちゃ早くなったので、都会で流行していたり、世界のどこかで流行っているものが、どこにいても手に取るように知れるようになりました。ですから、ショップは流行に合わせて商品を仕入れたり、店づくりをしたりして、売上アップを図ります。
ただ、情報そのものの伝達と、実際の流行が同時に起こるかというと、これがそうでもありません。例えば、東京都心などの大都市では、暮らしている人も流行に対してとても敏感です。それこそ、原宿や表参道、青山辺りなどでは、驚くほどのスピードで流行が広まり、あっという間に人だかりができてしまうお店も少なくありません。こういう地域では、ネットや雑誌やテレビなどの情報源を通して得られる情報と、流行が同時に動いていると言えるでしょう。
しかし、ちょっと都心を離れると、一気に様子は変わります。私が暮らしているのは、練馬区というところなのですが、都心部と比べると、流行が流れてくるスピードは圧倒的に遅くなります。電車で20分ほどで行ける都心部で、あれだけ流行っているのに、練馬区では、だいぶ時間が経ってから流行りだすのです。なので、都心部で流行っているからと、お店づくりや仕入れをしても、案外売れなかったりします。
同じ東京でもこれだけ違うのに、これが、地方に行けばもっと変わってきます。流行を発信している場所から離れれば離れるほど、情報は先に届いていたとしても、流行そのものは届いていないことがあるんですね。
東京から地方都市へ行っても、「これ何ヶ月も前に流行っていたような…」と感じるものがたくさんあります。私の地元の佐賀県なんて、(怒られるかもしれませんけど)何ヶ月どころか、年単位で遅れて流行がやってくるなんてことだって過去に何度もありました。情報の伝達スピードと、実際の流行のスピードは、やっぱり地域によって変わってしまうのです。だからこそ、その地域性を、しっかりとキャッチしておくことが求められます。
どこかで流行っているからと言って、すぐに流行がやってくるわけでもありませんし、場合によっては、流行そのものが起こらない地域もあります。でも、逆に、その地域だけで流行するような場合もあります。同じ商品でも、少し違う見せ方や、勧め方をすることで、一気に火がつくことだってあるわけです。それは、その地域の人たちの昔からの生活スタイルだったり、感度の違いだったりするのかもしれません。
なので、商品を売る側は、ただどこかで得た情報だけで判断せずに、その地域性に合わせた見せ方や提案ができないといけません。これを考えずに、「今はこれが流行りなんですよ」とだけ伝えても、売れるものも売れなくなってしまいます。そうならないためには、その街そのものを歩き回ったり、その街での暮らしの中で得られる情報を吸収するしかありません。流行りの情報を得ただけで、満足してしまっていては、痛い目を見るかもしれませんね。
今日の質問です。
- あなたが販売をしている街は、日本や世界の大都市と比べて、どんな地域性の違いがありますか?
- その地域性に合わせて、流行の商品を提案するとしたら、どんなことができますか?
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