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妻の死去時に55歳以下でも、夫が遺族年金を受け取れる場合がある

先日掲載の「『妻死去時に夫が55歳以上でないと遺族年金が貰えない』は本当か」では、衝撃的ともいえる遺族年金の男女差を紹介してくださった、無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者・hirokiさん。今回は、妻死亡時に55歳以下でも「ある条件」を満たしている夫に、遺族年金が支給されるケースについて解説しています。

妻死亡時の夫や子供への遺族年金のもう一つの形

『妻死去時に夫が55歳以上でないと遺族年金が貰えない』は本当か」では妻死亡時の夫への遺族厚生年金の給付について書きましたが、夫が年金を貰う場合はかなり制限が厳しい事を書きました。特に妻死亡時は夫が55歳以上でなければならないというのが大きいかなと。

ただし、国民年金からの給付である遺族基礎年金は平成26年4月から夫にも認められるようになり、男女差が少し解消しました。なお、この遺族基礎年金は夫が55歳以上じゃないといけないというのは無い。

さて今回は遺族基礎年金を交えて給付が行われる場合の事例です。本当はですね、「妻が先に死亡」のパターンっていうのはなんか書くの嫌なんですよね^^;。あまり考えたくはない。

1.昭和44年3月27日生まれの妻(今は49歳)

何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(参考記事)

平成30年7月に死亡とします。

20歳になる平成元年3月から平成8年7月までの89ヶ月は国民年金に加入だったが海外に在住していた(カラ期間)。平成8年8月から現在厚生年金加入の夫と婚姻し、平成20年5月までの142ヶ月は国民年金第三号被保険者になった。国民年金第三号被保険者になると個別に国民年金保険料(月額16,340円)は支払う必要は無いが、支払ったものとみなされて将来の老齢基礎年金に反映する。

平成20年6月から平成27年12月までの91ヶ月は厚生年金に加入する。この間の平均標準報酬額(簡単に言うと加入期間の給与を全て足して加入期間で割る)は30万円とします。平成28年1月から死亡の平成30年7月の前月までの30ヶ月の国民年金保険料は未納だった。

じゃあ、次は夫。

2.昭和38年6月9日生まれの夫(55歳)

現在は自営業で、妻とは同居していて前年の収入は850万円未満だった(つまり生計維持関係あり)。14歳と12歳の子あり。

さて、妻死亡により遺族給付が貰えるか? っていう話ですが、まず死亡した妻の年金加入記録を見ます。この死亡した妻の年金記録を見てみると、カラ期間89ヶ月+国民年金第三号被保険者期間142ヶ月+厚生年金期間91ヶ月≧300ヶ月25年以上あるので大丈夫。

なお、死亡した当時は国民年金未納状態だったが60歳になるまでは強制加入なので、未納にしていても国民年金の被保険者。18歳年度末未満の子も居るので、遺族厚生年金だけでなく国民年金から遺族基礎年金も支給される

注意

遺族厚生年金は死亡当時、生計維持していた配偶者父母祖父母の順で最優先順位者が請求して受給する(生計維持の有無では下の順位者になる事もある)。配偶者と子は同じ第一順位者ですが、配偶者が優先する。

遺族基礎年金は、「18歳年度末未満の子が居る配偶者」、または、「」のみに支給される。配偶者と子は同じ第一順位者ですが、子の居る配偶者が優先して受給する。

また、妻死亡時に夫が55歳以上でなければならないというのは遺族厚生年金のみの話であり、遺族基礎年金はその制限はない。

ではいくら支給されるのか?

まず遺族厚生年金

次に遺族基礎年金(これは定額

よって遺族年金合計は

ここであれ? って思った人もいるかもしれませんが、遺族厚生年金はよく300ヶ月で計算してますよね。しかしそれは、厚生年金加入中とかの死亡の場合なので、そうではない国民年金加入中の死亡とかの場合は本来の厚生年金実期間で計算します。

また、厚生年金加入中の死亡などではない場合は、年金記録は300ヶ月以上無いと遺族厚生年金は支給されない。この死亡した妻の場合は、カラ期間と第三号被保険者期間と厚生年金期間で322ヶ月ある。平成29年8月に全体の年金記録が10年以上あれば老齢の年金が貰えるようになったが、遺族年金の場合は25年以上必要というのは変わっていない。

さて、妻死亡時による遺族厚生年金は夫が55歳以上の場合にしか発生せず実際の給付は60歳からですよね。しかしこの夫の場合は、18歳年度末未満の子が居るために国民年金から遺族基礎年金が支給されるため、例外的に60歳に到達していなくても遺族基礎年金だけでなく遺族厚生年金も貰える

だから、この夫には1,340,123円が上の子が18歳年度末に達する時まで支給され(この時夫は59歳とする)、上の子の加算金224,300円が外れて1,115,823円(月額92,985円)となる。そして、下の子が18歳年度末に達すると(この時夫は61歳とします)、遺族基礎年金自体が消滅して遺族厚生年金112,223円(月額9,351円)のみとなる。

なお、この夫の生年月日から見ると、夫自身の老齢の年金の支給は完全に65歳から。例えば、65歳からは老齢厚生年金30万円と老齢基礎年金70万円とすれば、老齢厚生年金額が遺族厚生年金額を上回ってるので遺族厚生年金の支給は無い。

もう一つの遺族厚生年金の計算式である、「遺族厚生年金÷3×2+自分の老齢厚生年金÷2」を遺族厚生年金とする計算もありますが、それでも老齢厚生年金30万円には届かない。

もう一つの遺族厚生年金額

image by: Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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