なぜ、金は日朝首脳会談に前向きになったのか?
これはやはり、「トランプが金にいったから」でしょう。というのも、金にとって、トランプとの関係は、「命がかかった」問題です。トランプとの関係がよければ、彼は北朝鮮を統治しつづけ、長生きし、安らかな死を迎えることができるかもしれない逆に、トランプとの関係が破壊されれば、彼は、フセイン、カダフィのように惨殺される可能性が高い。だから、トランプから、「拉致問題なんとかしてくれ」といわれたら、「わかりました」といわざるを得ない。
米朝首脳会談で、トランプ氏は「完全な非核化を実現すれば経済制裁は解くが、本格的な経済支援を受けたいならば日本と協議するしかない」との旨を金氏に説明。その上で「安倍首相は拉致問題を解決しない限り、支援には応じない」と述べたとされる。この説明を受け、金氏は、安倍首相との会談に前向きな姿勢を示したという。
(産経新聞6月14日)
面白いですね。アメリカは「制裁を解くことができる」。しかし、「経済支援は、日本から受けとってくれ」と。そのためには、「拉致問題を解決しなければならない」と。トランプさんらしいです。
日朝首脳会談の【罠】
これから書く部分、安倍総理には、よく自覚していただきたいと思います。日朝首脳会談には、【罠】があるのです。
まず、大人の私たちは、「無料で拉致被害者が返ってくる」とは思わないでしょう? 非常に理不尽ですが、「身代金」を払う必要がある。もちろん「身代金」とはいわずに、「経済支援」といいます。ところが、日本は現段階で、「経済支援」をすることができません。なぜでしょうか?
北が「対話路線」になったのは、「制裁が効いて苦しくなったからだ」といいます。北から「拉致被害者を返すから、経済支援してくれ」と提案され、日本が同意したとします。そして、日本は、実際に経済支援を実施した。すると、北朝鮮経済は潤って、どうなります?
「金が入ってくるようになったから、非核化や~~めた!」
となるでしょう。すると、「日本のせいで、核のディールはぶち壊しだ!」と
なってしまう(そして、北が核を保有しつづければ、日本も困ります)。
動けない日本
金正恩は、これまでの北朝鮮の「成功例」を繰り返している。つまり、「非核化を約束し、制裁を解除させ、経済支援をうけとり、核兵器は保有しつづける」。
安倍総理が、金と会った。金はいいます。
「調査した結果、生存している拉致被害者が見つかった。日本に帰国させる準備があるが、つきましては、金ください」
こういわれたときに、はたして安倍総理は「大局にたって」「まだ経済支援はできない、非核化が実現してから支援することは約束できる!」といえるでしょうか?
ここが最重要ポイントであり、この部分が北朝鮮の【罠】なのです。
拉致被害者の帰国が実現されること。これは、まさしく全国民の悲願でしょう。しかし、そのために、金に金(かね)を与えれば、彼は元気になり、トランプに、「せっかく作った核を放棄するか、老いぼれ!」などといい、「ディール」を破棄するかもしれない。
その時、キッシンジャーは、「ジャップは今も昔も裏切り者!」と絶叫し、トランプは、「シンゾーのせいでディールはぶち壊しだ!」と嘆くことでしょう。そして、北が核保有をつづけると、日本もとても困ります。