高齢者の割合が先進国の中でも突出している日本ですが、「このまま高齢化が進んだ場合の年金はどうなってしまうのか?」という将来に対する不安の声もよく聞かれます。無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者・hirokiさんは、「年金制度の破綻はありえない」と断言。そうキッパリと言い切れる理由はどこにあるのでしょうか。
今後の日本人口と年金のゆくえ
現在の日本総人口は1億2,600万人くらいですが、この数字を見るとそんなに居るんだーって思った人も多いかもしれませんね。総人口は平成20年前半あたりに1億2,800万くらいだったのが徐々に徐々に減少していっています。
今の合計特殊出生率は1.4あたりですが、今後これが1.4~1.6あたりでなかなか回復しないのであれば、2050年には9,700万人前後を見込み、2100年には5,000万人を切る見通しになっています(終戦の昭和20年ですら7,200万人はいた)。高齢化が進み続けはしますが、高齢者人口も同時に減っていくことになる為2060年頃の高齢化率40%を天井に推移する見通し。
この5,000万人の時の内訳は65歳以上の人口割合は40%で2,000万人。生産年齢人口は2,500万人。15歳未満の子供の数は450万人ほど。
なお、これからの20年間(2020年から2040年くらいの間)は生産年齢人口は急激に減っていくのに、その間は団塊の世代も高齢化していくから高齢者人口はほぼ変わらないか、微増を続ける。
さて、高齢化自体は昭和45年から7%台を突入して始まり、少子化は昭和50(1975)年から2.0を割り始めて本格化しました。高齢化率に関しては、ヨーロッパあたり(ドイツとかフランス、スウェーデン、イギリスあたり)は昭和45年時点で日本より高くて13%くらい既にありました。ところが日本は進行度がとても速くて、平成12年(高齢化率17%ちょい)にこれらのヨーロッパの国よりも高くなって世界一になりました。特にスウェーデンは高齢化率が一番高かったけど、この時に日本が1位になった。
今後も日本がトップ(今は28%くらいですが最終的に40%くらい)であり続け、2位はドイツ(最終的に33%くらい)、3位はフランスもしくはイギリス(最終的に25%くらい)あたりになるだろうと。でも1位の日本と2位以下はすごく差がありますよね。それだけ日本が深刻になるという事ですね。
また、昭和の時代は少子化という問題はタブー視されていたため、本格的に少子化問題に取り組み始めたのは2003(平成15)年になって少子化対策基本法が出来てから。
少子化の原因としては女性の社会進出の促進や高学歴化が進みだしていったのも背景にあります。とはいえ、人それぞれの人生の形がありますので、昔みたいに産めよ増やせよというのがこの時代に当てはめる事は適切ではない。
子供は欲しい人が産めばいい。まあ…こればかりは授かりものですからね。しかし世の中には困った人がいて、結婚や子を持つという価値観を押し付けるような人がいますがそれは大きなお世話でしかない。
高齢化率が40%になる2060年ごろは僕自身も生きていれば80歳あたりの高齢者の仲間入りを果たしているんですが、今現在ですら昔のように子供の遊ぶ声があまり聞こえなくなりました。そんな少子高齢化が進む中でこれからも介護の問題は非常に重大な問題になっていくでしょう。子供が少なくなり、介護に追われる家庭が増えるというのはやはり望ましいとは言えない。経済の発展を考えた時にはどうしても人口の減少というのは影響を受けてしまう。
また、平均寿命(0歳から死ぬまでの平均年齢)や平均余命(その年齢の人が今後どこまで生きるのかの平均年齢)が長くなり現在の平均寿命で言えば男は約81歳で女は約87歳。ともに平均寿命は80歳を超えていますが、健康寿命はそのマイナス10歳となっています。つまり、健康で活動的に暮らせる年齢が健康寿命。
単に寿命を延ばすのではなく、この健康寿命を延ばすことが非常に大切。アラフォーやアラフィフになっても暴飲暴食してる人は健康寿命に気を付けましょうね(笑)。
さて、こんなに人口が少なくなるし高齢者の割合もすごい事になるしもう年金制度は無くなってるんじゃないか? と心配になる人は多いでしょう。さすがに今の制度的に制度が無くなるというのは考えづらいですが、公的年金だけで豊かな暮らしというのは現実的じゃない。そもそも公的年金は生活資金の有力なものの一つではありますが、この公的年金だけで生活資金すべてが賄われるというようには元々できていない。
年金制度は平成16年法改正のマクロ経済スライドが導入されるまでは、夫婦の年金が現役男子の平均賃金の概ね60%台になるように、法改正のたびに将来の見通しを立て(高齢化の状況とか少子化の状況とか)、徴収すべき保険料や年金額を決めていました。
つまり、年金支払いに必要な給付を行うためには現役世代からいくらの保険料を徴収すればいいのか? どの程度の年金額が必要か? を再計算していました。しかし、その再計算も平成12年を最後にするはずが、やっぱり今後の社会の見通しが悪化するのでまた法改正をせざるを得なくなったわけです。
とはいえ、現役世代も保険料負担の限度があるので、今まで年金世代の給付の負担を現役時代の60%台は維持するという考え方から、全く逆の考え方になりました。つまり、毎回入ってくる収入(保険料の事)の中で年金給付を支払うという事です。毎回入ってくる収入の中で年金支払えばいいから破綻というのは無いという事です。破綻だー破綻だー! 騒いでる人たちは単に不安を煽りたいだけに過ぎない。その保険料収入は民間の厚生年金保険料で言えば平成29年9月で上限の18.3%(実際は労使折半だから半分ずつを従業員と会社で支払う)に達しました。
ただし、今後も少子高齢化が進む中でその収入の上限の中で給付をしなければいけませんよね。だから、今後の年金給付の増加を抑えるために先ほどのマクロ経済スライドというのが導入されたわけです。
● マクロ経済スライド(厚生労働省)
マクロ経済というのはザックリ言うと、日本経済全体や世界経済全体がどのように動くのか? というのがマクロ経済。反対にミクロ経済というのがありますが、これは個人や企業がどのような経済活動をするのか? というのを分析するもの。
少子化や高齢化が進むと日本経済全体に影響を及ぼしますよね。全体だからマクロ経済。年金で言えば、高齢者が増えれば年金の負担増えるし、少子化で現役世代が減ってしまうと保険料収入が減って年金受給者を支える力が減ってしまう。こういうマクロ経済的な負担要因を数値化して、年金額を引き上げたりする物価や賃金の伸びから、そういうマクロ経済的な負担要因を差し引くというのがマクロ経済スライド。
年金額から差し引くというと年金を引き下げる感じがしますが、年金額そのものは引き下げない。価値を下げる。年金は物価や賃金の伸びに影響しますが、その伸びからマクロ的な要因を差し引く。ちょっとこの辺の説明は長くなりすぎるので有料メルマガにその辺の説明は任せます^^;
● 年金額改定についての主な内容(今年2月分の有料メルマガバックナンバー購入は下記から)
以前、「年金カット法案だ!」いやいや、「年金額を確保するものだ!」っていう議論が国会でありましたよね。なんとなくカットのように見えるかもしれませんが、長期的に見ると確保。
例えば、もう毎回決まった月100万円のお金を10人に分けられるものとしますよね。となると1人当たり10万円を与える事が出来る。しかし、高齢化が進んで月100万円のお金を20人に分けるとなると、1人当たり5万円になっちゃいますよね。分配される年金が減るわけです。
だから高齢化という年金にとっては負担増の要因を、物価や賃金の伸びから差し引いて年金の増加を抑制するわけです。現在の収入と年金給付が均衡するまで。つまり収入の中で給付が収まるように持っていこうとしているわけです。均衡するまでは年金積立金も取り崩しながら、年金給付に支障が無いようになされる。
マクロ経済スライドを遅らせれば遅らせるほど、将来の年金は水準が低くなってしまう。だから、早く均衡する所まで持っていって将来の年金水準を確保しなければならないわけです。均衡するのは早ければ早いほど良い。
今後も進む少子高齢化の中を耐えるにはしばらくはマクロ経済スライドはなくてはならないものなんですね。しかし今もなお、物価も賃金もそう簡単に上がらないからマクロ経済スライドによる年金額の調整がうまくいっていないのが現状です。
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