猶予は11月まで。金正恩に笑顔を向けるトランプが北に攻め込む日

 

訪朝した米国国務長官に北朝鮮は非核化スケジュールを示せないばかりか、米国側から「制裁解除は非核化の後」と改めて宣言されてしまいました。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で今後の北朝鮮問題の推移を予測。11月に行われる米国大統領中間選挙後に大きな動きがある可能性を示唆しています。

金正恩の本音が表れてきました

昔からの読者さんはご存知ですが、RPEでは金正恩の意図について、こんな風に説明してきました。

  • 金正恩は、父・金正日の成功例を繰り返している
  • つまり、彼の作戦は、「非核化を約束し、制裁を解除させ、経済支援を得て、体制保証も得て、しかし、完全非核化はしない」であると

そして、6月12日の米朝首脳会談については、全世界が「大失敗だ!」と合唱する中、一人だけ「大成功だ!」を主張してきました。なぜ「大成功」なのでしょうか?

金正恩は米朝首脳会談で何も得ていない」からです。彼が欲しいのは、まず第一に、制裁解除少なくとも制裁緩和でしょう。米朝首脳会談で、トランプは、制裁解除、制裁緩和を約束しましたか? していません。

金が次にほしいのは、経済支援です。トランプは、経済支援を約束しましたか? 彼は、「日本にいってくれ」といったのです。しかし、日本は、「拉致被害者を全員返すまで、制裁解除はしないし、経済支援もしない」という立場。だから、彼は経済支援も受けることができない。

もちろん、中ロが安保理決議に違反して支援を増やしている」というファクターはあります。しかし、中ロは、彼らの行為が「違法」であることを知っている。それで、北朝鮮経済が大復活するほど大々的な支援はできません

「いや! トランプは、『体制保証』を約束したぞ!」という反論はでるでしょう。しかし、トランプは、「完全非核化すれば体制を保証する」といったのです。つまり、「完全非核化がなければ、体制保証もなし」です。

世界中が、「金の勝ち!」「金の勝ち!」と騒ぎ、トランプさんを非難していました。しかし、何も得てない金が、なんで勝ち??????

もう一つ、なぜトランプ大勝利なのか? 既述のように、トランプは、何も約束していません。しかし、金は、はっきり約束しました。「完全な非核化を行う!」と。これ、「不可逆で検証可能という文字がないではないか!」と批判する人がたくさんいます。

しかし、金がだまそうと思えば、別に「完全な非核化」だろうが、「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」だろうが、あまり変わりません。大切なのは、「ウソとホントの基準が設定されたこと」です。

「金はうそつきだ!」といいます。しかし、彼が何も約束していなければ、どうして彼を「ウソつき」と非難することができるでしょうか? 今回、金は、「完全な非核化をする!」と全世界に約束した。これでやらなければ、全世界が「彼はウソつきだ!」と知ることになります。

結局、米朝首脳会談で、金は何も得ることができなかった。それどころか、「何も得ないまま完全非核化の約束をしてしまった」。困った金は、習近平のところに頻繁に通い、「助けてください!」と泣きついているのです。

print
いま読まれてます

  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け