ソニーよ、正気か? 大赤字の「スマホ事業」にしがみつく裏事情

 

シャープにも抜かれたスマホ事業の致命的な問題点

スマホ事業の苦境は一時的なものではありません。15年3月期に1兆4,102億円あった売上高は、スマホの販売不振で18年3月期には7,237億円にまで減りました。わずか3年で半減した形です。営業損益に関しては、15年3月期に2,175億円の赤字、16年3月期に614億円の赤字を計上し、17年3月期こそ101億円の黒字となったものの、18年3月期には276億円の赤字を計上しています。

国内では米アップルのiPhoneが一人勝ち状態で、ソニーをはじめとした他の企業の多くが苦戦を強いられています。調査会社のMM総研によると、17年度のアップルのスマホ出荷台数シェアは49.9%で首位となっています。長らく5割程度のシェアを握り、業界に君臨し続けています。残りの5割の市場をソニーやシャープ、サムスン、富士通、京セラといったメーカーが食い合っている状況です。

そうした中でもソニーはアップルに次ぐシェア2位の座を16年度までは維持していました。しかし、17年度はシャープに抜かれてしまい3位に転落しました。シェアの順位においても、ソニーの苦境が浮き彫りとなっています。

これは、シャープの努力によるところも大きく、ソニーだけに責めを負うことができない面もあります。

シャープは17年に、キャリア別にバラバラだった商品名を、高性能なハイエンド機の「AQUOS R」と価格を抑えたミドルレンジ機の「AQUOS sense」の2つに絞り、ブランドを一新しました。これによりブランド認知を高めることに成功し、ソニーを抜き去る原動力となりました。

また、16年に鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入ってスマホの垂直統合を行うことで商品力を強化したほか、徹底したコスト削減を図るなどで競争力を高めてきたことも奏功しています。

ソニーが3位に転落したのはこうしたシャープの努力によるところが大きいのですが、とはいえ、ソニーが抱えている問題を無視することはできません。問題のひとつに「開発の遅さ」があります。

たとえば、他社がディスプレイサイズを拡大したり複眼カメラなどを取り入れた際に、それに対抗する商品を迅速に出すことができませんでした。これまで、開発が後手に回ってきた感が否めません。

ソニーがこのようにもたついている間にシャープに抜き去られてしまったわけですが、ソニーが生き残っていくためには、これ以上のシェア順位の低下を食い止めなければなりません。シェア下位の企業は生き残ることが難しいためです。

たとえば、17年度にシェア順位が5位だった富士通は携帯電話事業から撤退を余儀なくされています。富士通は今年1月に携帯電話事業を国内投資ファンドのポラリス・キャピタル・グループに譲渡することで合意し、3月に携帯子会社の富士通コネクテッドテクノロジーズの株式を、ポラリスが新たに設立した会社に譲渡しました。なお、富士通コネクテッドテクノロジーズは、「らくらく」ブランドや「arrows」ブランドを維持しています。

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