jショールームの中に1台も車を展示していない自動車ディーラー、量販店よりも値段が高いのに繁盛している小さなお店…。これらの企業の戦略が販促の大きなヒントになるとするのは、販促専門家として活躍中の前沢しんじさん。前沢さんは自身の無料メルマガ『販促アイデアと経営活性化』の中で、「モノよりヒト」を売る重要性を記しています。
モノよりヒトを売ること
高知市のトヨタ自動車系のディーラー、ネッツトヨタ南国ではショールームの中に1台も車を展示していないという。車はすべて駐車場に、約60台が「試乗車」としてお客様を待っている、とのこと。
この会社のもうひとつの特長は「車より人を売る」こと。全従業員が顧客と「いい関係」を作ることを最大の仕事とする。車を売ることを全面に出さず広告もしない。小中学校での交通安全出前授業など、地域に溶け込もうとする従業員の姿だけが目立つ。地域で頼りにされる存在となることが自然とビジネスにつながるという。
ここから学べることはふたつあると思う。
1.お客様に体験してもらうことが最大の販促のひとつ
試食販売は食品販促の王道ですが、お客様に「ためして」もらうことはどんな販売員の言葉より説得力があります。何しろ商品そのものがお客様に直接訴えかけるのですから何より雄弁です。まず「試してもらう」ことの大切さを再認識しましょう。
2.モノよりヒトを売ること
お客様は同じ商品を買うとき、かならず安い所で買うとは限りません。小さな電器店で繁盛している店を見ると、決して安くはないことが多い。大手電器店と比べると値段だけなら間違いなく高い。
お客様は「ヒト」につくのですね。「その人から買いたい」と思うからその店に行くわけで、決して安い所だけが客を引くわけではありません。
これは大手量販店でも同じこと。その売場の担当者を気に入ると、お客様は「あの人から買いたい」と思う。
商売とは結局はヒト対ヒトの商いなのです。まずヒトを売りこみましょう。そのためにはお客様のところへ飛び込んでいくことです。
名物商品を作って育てよう
「名物商品」とは、自店イチオシの商品で、主力商品で、かつ高利益商品であること。自社ブランドでもあり、他店差別化の有力な武器になるものです。全国的にも色々な名物商品がありますが、それらは1日にしてできたものでなく10年、20年と年を重ねて作り上げてきた銘品です。
流通業界で著名なのが、仙台の食品スーパー「さいち」の「おはぎ」です。1個105円で平日5,000個、休日は1万個が売れるらしい。30数年前のお盆、近所のお年寄りに「孫に食べさせたいのでおはぎを作って欲しい」と言われて作ったところ完売してそれ以来時を重ねて、作っては売り切れという看板商品に育ったという。
我が店でもそういう名物商品を作って育てたいものです。さて、それではどういう商品が「名物」にでき得るものでしょうか?
- 今ある品をレベルアップする
現在の主力商品で、自店が商圏内でシェアナンバーワンを狙える素質のあるもの。 - 現在の品揃えの延長線上にある新しい品を考える
自店の強い商品、または商品群の関連で、将来の有望商品をいち早く探し、どこよりも早く揃え、圧倒的な販促をかけて、○○ならウチというイメージを確立する。 - こだわりを加えた品を開発する
その品に「物語性」や、「希少性」、「地域性」、などを加えることで自店の独自性を確立する。 - 仕入先を新しく開発した「当地では当店だけが販売」の品
都会や遠隔地の他店を視察したり、業界紙や経済紙でのニュース、またその他さまざまな情報から、商圏内の他店にないものを発掘する。 - まったく新しく作った品
自店のノウハウで新商品として開発したもの。
ただし上の例は、単に「他店にないもの」にすぎません。これを「名物商品」にするには、それに対する徹底した勉強・研究、徹底したこだわり、販売テスト、お客様の反応のフィードバック、改良など、「トライ&エラー」の積み重ねが必須なことはいうまでもありません。
名物は一朝一夕に出来はしません。そのかわりそれが確立してくれば、他店にない独自商品として自店の大きな財産となり経営を大きく助けてくれることは間違いありません。
むろん、とびきりうまいわけでもないのに「名物コロッケ」とかありますから、名物といっても計算づくでできるものではありません。何らかの口コミが生まれ、それが伝播していくことで、ブランド化されることもあります。
いずれにせよ、名物商品化するには、「これを育てていきたい」という商品を決めて、その商品の「ウリ(こだわりや物語性など)」を考え企画して、その商品の「魅力的な説明」を考え、その「売り込み販促」を集中的に継続していくことがポイントです。
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